小説★ニコ衛門の竜退治
- カテゴリ:自作小説
- 2012/06/24 08:55:38
タウンのおしゃべり広場にあるチワワの石像。
その横にある碑文には、
「ニコ衛門は、むかしニコッとタウンを破壊しにきた竜に、
たった一匹で立ち向かい
このタウンを守った伝説のチワワです。」
と書かれています。
これはタウンに伝わるその伝説のひとつです。
時は江戸時代、現在のニコッとタウンのある場所には、
人間達だけが住んでいて、仁湖国という小さな国が栄えており、
お城には江見姫という美しい姫が住んでいました。
ある日のこと、姫が海岸を散歩していると、
浜辺に大きな目と耳が印象的な小さな犬が倒れており、
そばによると、びしょ濡れで溺れた様子だったので、
抱き上げて城に連れ帰り、看病することにしました。
その犬は、ほどなく元気になり、
姫はニコ衛門という名を付けて、
侍のような羽織を手作りして着せたりして、かわいがり、
ニコ衛門も姫になついて、ついてまわるようになりました。
しばらくして、港に異国の難破船がたどりついたとの知らせがあり、
姫もニコ衛門をつれて、様子を見にいくことにしました。
港には、破損した大きな難破船を囲む人だかりができており、
ちょうど城の侍たちが、船内を調べに入っているようでした。
ところが突然、船の天井を突き破り巨大な異国の竜が飛び出したと思うと、
姫のいる方に、炎の息を吐き出しました。
「水晶陣(クリスタル・シェル)!」どこからか声がして、
姫のまわりは、土から飛び出したガラスの壁に頭上まで囲まれ、
炎の息はガラスの壁にせき止められ、周囲を赤く染めました。
ふと見ると足元にいたニコ衛門が、後ろ足で立ち上がり、
姫に話しかけてきました。
「じつは僕は、海を越えた彼方にあるシリウス国の王子で、
僕の国を滅ぼした竜から、あの船に乗り、逃れてきたのですが、
竜の襲撃を防ぎきれず、海に落ちて、あなたに助けられたのです。」
「僕は国一番の魔法と剣の使い手でしたが、
あの竜はわが国の魔法も剣も防ぐ鱗を持ち、
僕には竜の攻撃を防ぎつつ逃げるしかできませんでした。
やつの狙いは僕だから、僕が戦っているあいだに姫は皆と避難してください。
この陣は中からは自由に出られます。」
姫はふところから、小さな刀を取り出して、ニコ衛門に手渡し、
「わが国の刀は異国の剣をもしのぐと聞きます。
これは護身用に持たされていたものですが、
あなたにも使える大きさでしょう。試してみてください。」
「ありがたく、使わせていただきます、姫。」
そう言ってニコ衛門は、刀を受け取り腰にかまえ、
竜に向かって、振り返り指差すと、
「竜よ、望みどおり僕が相手をしてやる。」と叫びました。
「気流翼(エア・ウイング)。」呪文を唱えると、
疾風のように、竜の元へ飛び立ちました。
翼を羽ばたかせて海上に飛び上がり、様子をうかがっていた
竜が再び炎の息を吐きまくると、
ニコ衛門は宙を舞うようにかいくぐり、竜に迫っていきます。
竜の近くまできたニコ衛門に、
今度は、鋭い右爪の一撃が繰り出されました。
ニコ衛門が避けきれずに剣を振るうと、
なんと、竜の爪の一本が切り飛ばされていました。
「この国は魔法は発達していないものの、
素晴らしい刀作りの技を持っているのだな。
これなら、勝算はある。」
ニコ衛門はそう感じつつ、竜のふところに飛び込みました。
そして竜の急所と言われる逆鱗に突き立てました。
しかし、竜はびくともせず、左爪で払い落とし、
ニコ衛門は海に叩き落されました。
「貴様の使う小さな刀では傷が浅すぎたようだな。」
という竜の声が空に響いていました。
「雷撃雲(サンダー・クラウド)。」
ニコ衛門の唱える声とともに、雲から一筋の雷が、
竜に突き刺さった刀に落ちると、
竜はほえるように叫んで海面に落下していきました。
「刀が刺されば、それを通して雷撃を内部に浸透させられるのさ。」
ニコ衛門は海上に漂いながら、竜に言い放ちました。
「たしかに貴様は強いな、だが致命傷はお互い様だ。
共にこの海に沈んでもらうぞ。」
「それに我はシリウス国の民が使った魔力の残りかすを元に、
自分のことしか考えない者達の悪意を吸収して形作られたものだ。
この国とて、悪意を持つ者は尽きまい。
不死身の我は、いずれ復活し、今度はこの国を滅ぼしてやろう。」
ニコ衛門の元に落下しつつある竜の声が響きます。
「いくらおまえが復活できるとしても、
僕の意思を継ぐ者たち達が現れ、
お前の野望を阻止するだろう。」
ニコ衛門が言い返します。
港で待つ姫のもとにも、
戦いの様子とこれらの会話は届いていました。
「姫、助けていただいて、ありがとう。姫との暮らしは幸せでした。
けれど、僕はこの国に災いをもたらした疫病神です。」
ニコ衛門の声が伝わってきます。
「いいえニコ衛門、あなたはそれでも皆を守り、
命がけで戦ってくれた、私達の英雄です。」
姫が語りかけます。
まもなく、はるか沖合いで巨大な水柱があがり、
海底に沈みゆく竜と、その爪に握られたニコ衛門を見つめながら、
江見姫は静かに泣いていました。
それから沖合いに捜索の船を出したものの、ニコ衛門も竜も姿はなく。
その後、姫と仁湖国の人々は、岸壁にニコ衛門の石像を建て、
その雄姿を語り伝えました。
それからしばらくすると、どこからともなく、
言葉を話し後ろ足で立ち歩く動物たちが、仁湖国に集まりだし、
人々に相手を思いやる礼節の大切さを説くようになりました。
その後、時代が代わって仁湖国の人々が本土に移住したあとも、
動物たちは、この島を守りつづけ、
現代になってニコッとタウンがオープンしてからも、
新たに訪れる人々を導き続けているそうです。
あとがき
ふと気が向いて、初の短編小説投稿ですが、
ニコッとタウン初期に、ニコ衛門の碑文の内容について、
ブログを書いたら意外と好評で、
そのときに小説の原案はいろいろ思いついてたけど、
小説というのも書きなれないので、そのままでした。
仮想生活広場のアルバム広場は次々流れて消えるブログ広場と違い、
作品ごとのステキ評価とステキ順に表示する機能、
月ごとに保存されたり、作者の他の画像を表示などの仕組みがあり、
もしかして、小説投稿にも向いてるかもと自ら試してみたくなり、
書き出したら一気に、まとめられたので先に和風テーマに投稿してみました。
http://www.nicotto.jp/albumsquare/detail?user_id=135290&id=1628
それから、自作小説に関心ある人は自作小説カテゴリを見てるだろうし、
マイページで表示されないのもあり、ほぼ同内容でこちらにも投稿します。
画像は今まで作った中で、海上の花火を再現した部屋が、
舞台となる仁湖国のイメージとこれからの季節によいかなと選択。
小説メインだから、お庭にいる作者など適当でもよかったけど、
できるなら小説にちなんだ創作部屋もということで。
なお、こちらはキャラも表示できるけど、わらべ服はいまいちかと思ったら、
長靴下なんか長足袋みたいで意外と時代劇で見かけるような。
ブログ広場の自作小説にも書き手が多数いますし、
ニコタの知り合いでも小説を書く人を、何人か見かけるので、
どちらでの投稿も一長一短な面があるし、
この企画を参考にどうぞ。
ニコタのシンボルにふさわしい話をというのも。
こんな歴史があるから、ニコタの住人は良い方ばっかりなんですね。
納得ですww
なりゆき上、人の小説にコメントするのに自作もあった方がというのもあり、
僕は若草さんと対照的で、詩的な表現力より、話の組み立てに強いかな。
マイティラビット ニコタ限定の部屋より、世にあふれる小説は見劣りしないよう慎重になってた。
今度は写真に合わせた話を書いてみてるけど。
書かれたお話し実に面白いですね
なんども読み返しました
ニコの龍伝説ロマンいっぱいですね
話にあったお部屋もみせていただき想像力すごくかきたてられましたよ
面白いお話しまた読ませてくださいね
楽しみにしております
そう言えば、自作小説アップしてる人結構いますよね。
写真を挿絵的に使ってるのも、なかなか面白いですよね。
気負いすぎなだけで、わりと書けるかもとは思ったけど、気が向いたら。
マナ 公式設定を元に推測して、なるべく合わせてる。話のおもしろさ優先だけど。
かつての海上の戦いを偲んでの花火大会という案も。
るう 物語の基本はできてると思うけど、優れた書き手のるうさんから見て良いなら幸いです。
アルバム広場とブログの比較というのもあるけど、両方でもいいかも。
一気に書き上げたんですか?すごいですね。アイディアと文章があふれ出たんですね。
なるほど~あの石像にはこんな秘話があったんですね^^
ニコッとタウンの今昔物語、ぜひシリーズで!楽しみにしてます^^v
アルバム広場とマイページでの投稿なら多くの方に見てもらえますね。
ブログ広場はすぐに流れてしまうけどアルバム広場はずっと残りますし・・・
水明さんの小説とても良いです(*^_^*)