Nicotto Town


小説日記。


女王様と飼い犬。【アリスサークル小説】

#-"女の子"として可愛がって、愛して欲しい、あなただけに


――――

あなたは愛してくれますか

中途半端な偽りを。


綺麗に着飾った"男の子"を"女の子"として

もし愛してくださるのなら、

くれぐれも名前を間違えないで下さい。

"リシュ"か"マーガロウ"とお呼びしていただけたら嬉しい限りです―――。


…え?

リシディア?…残念です女王様。
そんな子は"居ません"。

__サよなラ、




…"リシディア"はもう、"死にました"、

――――


「今日も可愛いわ」 
                 
 主にそう言ってもらえるだけで、飼い犬の心は弾んだ。
 鏡の前で、主にまた買ってもらった新しいドレスで着飾った少年は、
 フリルとパニエで大きく膨らんだスカートの裾をふわりと舞わせて意気揚々と一回転する。 
 絵の具に少量の水を混ぜたようなわざとらしい赤の瞳は喜色だけに、
 精緻な陶器人形を思わせる、少女のように愛らしく整った顔には高揚感から来る満面の笑みに彩られていた。

「やっぱり何を着ても似合うわね、マーガロウは」

 主がそう言って笑えば、少年は少女のように愛らしい声で鳴いて主に抱きつく。

「カランチータ、だぁいすき!」

 少年は、可愛らしい"少女"の格好をしていた。
 少年はそれを恥ずかしいなんて思わないし、寧ろ楽しんでいた。

「マーガロウ、どこに行きたい?」

 大好きな主に手を引かれながら、問われ呼ばれた少年はいつものように答える。

「いつもの場所が良い!」

 自分を愛してくれる主の為に、少年は常に可愛くあろうとした。
 主の愛が自分"だけ"に注がれるどうしようもない喜びを抱えて。

「今日は甘えん坊さんなのね、マーガロウ」

 お気に入りの、城からたったの3分程度で着く、
 不思議な花々が咲き乱れ海を真下に迎える岬に着くなり少年は再び主に抱きついては、
 「駄目なの?」と文字通り甘えるように上目遣いで主に尋ねた。

「いいえ、本当にそっくりなものだったから」

 少年の主/カランチータは、赤の女王だった。
 だが、少年にはどこの国を彼女が治めようと関係ない。
 少年は「騎士」なのだから。
 そう、"とても可愛い"。

「誰に?」

 子犬のように小首を傾げて尋ねる少年に、主は苦笑して答えた。


「あなたの双子の妹に」


―――― 

 双子はカランチータ女王陛下のご好意で拾われた捨て犬でした

 雄のほうには"マーガロウ"と、雌の方には"リシディア"と名付けられました

 カランチータ様は二人を我が子同然に愛し、二人もカランチータ様を実の母親と信じて疑いませんでした


 しかしカランチータ様はお気づきになりませんでした


 双子がそれぞれを嫌い、注がれる愛情がどちらかに少しでも"傾く事"が「大嫌い」だった事に

――――
 ぴしり、と音がした気がした。
 硝子に罅が入るような、脆い音。

「…」

 無言で見上げてくる少年に、主は何の気なしに、容赦なく告げた。

「マーガロウは可愛いけど、"男の子"だものね。
  "女の子"のリシディアと同じに扱っちゃったら、

  ―――"可哀想"よね、」


 かしゃん、と音がしたような気がした。
 罅の入った硝子が砕けるような、儚い音。


 少年は主から手を離し、蒼白になった小さな唇から呪詛を紡ぐ。


「―――リシディアはもう、」


 とん、と軽く両手で押した主の身体が、
 呆けたように少年を見つめたまま背後に傾いでいく。

「 死 ん だ よ 、 ? 」

――――

 別々に扱われるのを嫌うだろうと、カランチータ様は双子を平等に愛してきたおつもりでした

 しかし現実はそう上手く行かないもの

 時には、どちらか片方ばかりを構ってしまい、片方を放ってしまう事がありました


 それには仕方が無いと、双子は認め合っていました
 
 カランチータ様はお一人しかいらっしゃらないのですから


 ならば、と互いを憎みあう双子は考えました


 "双子が一人になれば良い"、と

――――


「…っえ、」

 当然のように疑問の声を間抜けに零しながら、主は呆気なく少年の視界から消えていった。
 がらがらと一緒になって崩れる瓦礫と一緒に
 虚しく蒼い海面へ飛沫を巻き上げる主を見る事も無く、少年は岬に背を向ける。

 当然のように。


――――

 双子は双方に、早速"殺し"を決行しようと、
 カランチータ様に気づかれないよう、そう決めたその晩、真夜中ぴったりに動き出しました

 やはり手っ取り早いのは、お互い同室なので寝ているところを首でも絞めてやれば良いでしょうか

 しかし不意打ちを双子は好みませんでした


 ならば、と刃による真っ向勝負を双子は敢行しました

 そうですね、場所は屋根にしましょうか

 屋根は足場も悪いし、足を踏み外して滑り落ちればわざわざ殺さなくても勝手に相手は死んでくれます

 
 星がとても綺麗で――まあ結果はおかげさまで無惨でした


 剣術をろくに習った事も無い、"女の子"のリシディアに、当然勝ち目はありません

 "男の子"のマーガロウはしてやったりと、足場の悪い屋上で危なっかしく、
 初めて握った剣を振り回すリシディアを、まさに雷光のように慣れた足場を駆け、
 リシディアの剣を弾きその胸に自らの刃を突き立てました

 呆気なくバランスを崩し、10階の屋根から胸に剣を戴いたまま
 転げ落ちていくリシディアを、マーガロウは残酷な笑みと共に見送りました


 返り血のついた服を自分たちの部屋に戻って――ああ、そういえばもう一人でしたね

 脱ぎ捨てたマーガロウは、とりあえず動きやすい服に着替えて、それを持って外へ出ました

 カランチータ様はぐっすりお休みのようで、マーガロウが出て行ったのにもお気づきになりません


 リシディアは、庭の花壇の中に落ちていました

 白い子犬の姿に戻ったリシディアを無造作に拾い上げ、
 まだ刺さったままの剣を抜いて、マーガロウはお気に入りの岬へ向かいました

 勿論、そこから邪魔なリシディアを海に飲み込んでもらうためです

 冷たい銀色の月明かりに照らされて白い飛沫を上げる海面に、マーガロウは持っていたものを全部、放り込みました

 狂喜に染まった笑顔で


 さあ、邪魔者は消えました

 カランチータ様からの愛情を受けるのは、マーガロウただ一人だけです

――――

「…男の子が、女の子に憧れちゃ駄目なのかな」

 少年は、ぽつりと呟いた。
 誰も居なくなった岬に背を向けたまま。

「……男の子が、女の子みたいに可愛がってもらっちゃ、駄目なのかな」

 少年の声は僅かに震えていた。
 ぽたぽたと、赤い瞳から熱い雫が零れていく。

「………っく、ずるい、よ、リシディア、だけ、」

 それ以上は言葉にならないで、溢れるのは雫だけ。

アバター
2012/07/11 18:56
宣伝を聞いて飛んできちゃいましたw

文章力とかがハイレベル、ハイクオリティ過ぎて・・・!
分けてください、少しでいいんで((

リシュくん・・・私が愛してあげr(ry
なんか凄くよしよししてあげたいですな・・・
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2012/07/11 18:51
サークルから見に来ました
とっても凄いです!!
今、私の心がいっぱいな気持ちですよ!!
良ければなにか他のものも書いて欲しいです
アバター
2012/07/11 16:27
くぎゃああああ飧糾さんの小説待ってました!w

またまた神な小説かいてくれましたね(
その文章力わけてもらたいです。はい、スイマセン。土下座(
アバター
2012/07/10 22:40
ネグリジェ+かぼちゃパンツhshs!!

一回書き直したよ!!
べ、べつにリシュくんにかぼちゃパンツはかせてなんかいないんだからね!!
男の子の設定忘れてたなんてことないんだからね!!
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2012/07/10 21:53
あぁあああああああ?!どっかのエロ抱き枕みたいになってきたぁぁぁぁぁ?!!!
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2012/07/10 21:40
いや、リシュの服描きにくいなぁ~→あ、服変えよう→アリアに別の服着て!って着せかえられた設定・・・・・
→あれ?これってお着替えシーンできるじゃん
→あ、リシュくん半脱ぎにするのちょ―楽しいww
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2012/07/10 21:29
ごめん糾、絵がR15方面に行きそうなんだけど?w
アバター
2012/07/10 21:19
あ、糾にちょっとおねがいww
アリア引きこもりだから登場させたいからつれてきてほしいww

稟との絡みが終わったらお願いしまっすww
アバター
2012/07/10 20:16
感・動!(

双子ーw
すばらしい過去((ぇ
だからリシディアって呼ばれるの嫌うんだねー

さぁて、リシディアって呼ぼうかしら(
アバター
2012/07/10 19:36
よぉし、マーガロウってアリアちゃんに呼ばせるか
アリアはリシュのことはお姉ちゃん扱いだからなww半分は、4分の一はペット扱い、残りはもっと深い
関係の何か


くぅっ・・・・・マーガロウは愛してほしかっただけなんだな・・・・・
ちょ、画面の中入ってなでたいんだけど液晶が邪魔する場合はどうすればいいの?

―――――――
「さぁ・・・・アリア、君のペットを選ぼう、君は今日から女王になった
病気も治った祝いだ、好きなペットを選ぶといい」


女王様は自分に一匹、番犬を持っているもの
今日から私は女王の位を授けられた
パパの開いたパーティーでは番犬は大人の男の人ばかり、”怖い””つまらない”そう小さな女王様は思いました

まだ少し動かすのがだるい体に鞭を打ってお屋敷から外へ抜け出す。

小さな女王、アリアはパパが嫌いです

パーティーなんかも大嫌い。だって怖い人がたくさんいるのですから
夢の中に戻ればどんなに楽か・・・それでも彼女は約束をしたからそれをしませんでした



ふとした時、空を見上げるとアリアの頬を雨が濡らしました、いつの間にか雨は大雨に

慣れない体で走って見慣れない自分の町の路地で雨宿り
そんな時自分と同じ、雨に打たれてびしょ濡れの小さな子犬を見つけます。


空を見上げた子犬は悲しくも、狂っているようにも、笑っているようにも見えました。


でも、不思議と・・・・惹かれる何かがありました


「パパは・・・・ウソはつかないわよね・・・・好きなペット・・・選んでいいって言ったわよね・・・・?」
小さくしゃがんだその場から立ち上がると”子犬”のところまで静かに歩みより・・・


「ねぇ・・・子犬、あなたは野良犬なの?
・・・私のペットになりなさい」



人との話し方を知らない少女は頬を赤くしてぶっきらぼうにいました

お話はここまで、だけど


―――手をつないで雨の中に歩く小さな二人―――


雨は二人の絆を溶かして繋いでくれたのでしょうか?




―――――――




なーんて、人見知りちゃんがわんこにプロポーズ(笑)
即席でかいたからクオリティがあれなかんじだけど糾のハイクオリティに合わせようと頑張ったよ!
アバター
2012/07/10 19:00
――――

 翌朝リシディアが居ないのを、カランチータ様はマーガロウに尋ねました

 マーガロウは、「居なくなっちゃった」と、腹の底で大笑いしながら、とても悲しそうに答えました


 カランチータ様は、マーガロウにそれ以上何も尋ねませんでした


 結局の所、平等と言いつつ、カランチータ様は目測を誤っていらっしゃったようです

 "女の子"であるリシディアをその歳相応に愛し"可愛がる"のは当然ですが、
 "男の子"であるマーガロウをその歳相応に愛し、"愛でる"だけでは、満足していなかったのです

 マーガロウは、愛情を欲していました

 "カタチ"を持つ愛情を


 頭を撫でられ抱きしめられ、ときには一緒にカランチータ様と寝たり身の回りの世話をしてもらったりする"女の子"が、

 マーガロウには羨ましかったのです

 リシディアという存在が消えることで、リシディアのために裂いていた"可愛がる"時間をマーガロウにも与えました

 内心戸惑いながらも、異常なまでに甘えてくるマーガロウを受け入れ、
 言われるままに"女の子"だけが着るような可愛らしい服を買ってやったり、マーガロウは、欲していたもの全てを手に入れた、

 そのはずでした。


「…っんで、"男の子"と"女の子"…、を、区別、する、の」

 少年は、双子を区別するその二つの言葉が大嫌いでした。

 嗚呼、リシディアさえ最初から居なかったら。

 リシディアが、"自分だったなら"。


「……っ、…あ、」

 そうか、と少年は嗚咽の中に良い事を思いつきました。

 ――"リシディア"として、"別の女王様"から"可愛がって"貰えば良いのです。


 これから逢うはずの女王様はきっと、少年を、"男の子"だと一目見ただけでは判断できないはずです。

 さあ、そうと決まれば新しい"飼い主"を探しに行かないと。

「――…ふ、ふく、く、はは、あははははは、」

 リシディア=マーガロウと名乗り、憎い憎いリシディアの名前の部分を"リシュ"と呼んでもらえば良い。
 そして出来れば、"マーガロウ"と呼んでほしい。

 …まあ、名前なんてどちらでも構いません。

 "リシディア"とさえ、呼ばれなければ。




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