残像と墓標。【アリスサークル短編】
- カテゴリ:自作小説
- 2012/07/16 23:13:32
#-死んだ少女の幻想は
顔を斬られた、と気づいたのは既に自分が吹っ飛んでいると気づいた時だった。
「――ッ?!!」
どごしゃああっ、と瓦礫と化した城壁に、艶やかな黒髪をした少女が叩きつけられた。
べしゃっと顔から硬い石畳に突っ込んで、痙攣するようにびくんと不気味に全身を引き攣らせてから、
ようやく止めていた息を吐き出した。
「――ッはぁ!はぁッ、はぁッ、はぁッ」
荒い呼気が苦しげに震える。
馬鹿のように眩い夕焼けが、少女の瞳を焼いた。
どろりと左の視界に入り込んでくる赤い液体に、
ぼんやりと霞んだ右の視界は瞬きをする度に鮮明さを失っていって、
目尻といわず瞳全体から、堪えるという意思すら圧し折るほどの大量の熱い液体が溢れ出ていた。
苦しい。
無様にうつ伏せに倒れたままでは満足に息を吸うことさえ出来なかった。
痛くて痛くて、気を失うほどの激痛が毒で痺れるように全身に回って行って。
でも、頭だけはやけにはっきりしていて。
…早く、立たなきゃ、いけない、けど、
「どうしたんだよアリヒェン、それでオワリなの?」
"命"と言い換えても、この真っ赤な液体に語弊は無いんじゃないかと思った。
もうどこを刺されたかも忘れてしまいそうなほどのたくさんの傷口から、
肺を圧迫する勢いで激しく脈打つ心臓の鼓動と一緒に溢れ出して行く熱い、熱い液体が。
ひれ伏す少女の身体の下に真っ赤な水溜りを作っていく。
嘲るような笑い声が頭の上から降り注いでも、少女には目線さえ上げる事が出来なくて。
きんっ、と訊いただけで思考が麻痺して言う事を訊かなくなってしまいそうな、
刃が風を裂く音が少女の鼓膜をくすぐった。
自分の血で赤く汚れた刃がぎらりと反射する眩しい夕焼けが、霞んだ視界を何度も焼いて。
立つ事さえ出来ないこの激痛に、このまま甘んじてしまったって誰も責めやしなかったのに。
負けられなかった。
負けたくなかった。
"あいつ"にだけは、
…でも、"痛い"よ、
「…ッう、ぐ……ふ、う……ぅ…ッはぁ、ぐう、ううう…ッッ!!」
もはや口を利く事さえ出来なくて。
アリヒェンの口から零れ落ちるのは、意味を成さない喘ぎ声だけ。
無理やり力を入れた全身の筋肉が一斉に悲鳴を上げた。
身体が軋んで、もっと苦しくなって。
杖のように石畳に突き立てた相棒(愛剣)が、面白いように震える手から伝わる振動でがりがり音を立てても。
"あいつ"はずっと待っていて。
「あっはは、良かった、もう立てないのかと思っちゃったよ」
――好きだった、はずだったのに。
やっぱり幻想だったのかな。
やっぱり夢だったのかな。
やっぱり、やっぱり。
「……ッだ、よ…ッはぁ、ッはぁ、もぅ――や、だ…ッ」
過呼吸気味の呼気の隙間に紡がれる音が、きちんと言葉を成していたか、少女には自分でも良く解らなかった。
もはや言葉の意味なんてどうでも良かった。
ぼたぼたと瞳から腹から溢れ零れ落ちる、赤の混じった熱い水とどす黒い赤が白い石畳を汚していく。
「…あのさぁ。決めてたじゃんよ、俺らはさ、別々の女王様に仕える召使なんだよ?いざとなったら"殺しあう"って――」
「――いやだああああああッ!!!!」
嗚呼、なんて良くある安っぽい物語なんだろうと。
少女は嘆いた。
どこか遠くで。
実際に自分の口から、喉から迸り出た血を吐くような絶叫が生臭く濁ってしまった空気を貫いていっても。
―――ねえ、
解ってた。
解ってた。
痛いくらい。
絶対に叶わない事だって事も。
でも。
でも。
―――でも、この気持ちは、嘘じゃない、
少女が杖代わりに使っていた剣を放った音がやたらと響いた。
がしゃああんっ、と重い金属音が石畳を叩く。
少女は思い切り抱きついた。
自分の好きだった少年に。
少年は思い切り締め上げた。
自分の好きだった少女の首を。
「―――ッよ、ね、?」
消えかかった少女の声は、ほとんど空気音だった。
少年は答えなかった。
でも、
「……―――ッ…」
少女の右の瞳から零れた最後の一滴が少年の血塗れの手を濡らした。
「……そ…だよ……ッ」
やっと答えた、少年の声は。
か細く震えて、濡れていて。
少女の首からようやく離された両手で思い切り少女を抱きしめた少年は、
「――…ぅ、……ぅぁぁあぁ…ッぁああああああああ!!」
泣いていた。
少年の腕の中で少女は、薄れ行く意識の中に確かに見た。
怖いくらいの安堵と、逃げられない恐怖に温かく包まれて、少年の眉間から真紅の大輪の華が咲いたのを。
*
「………アリヒェン=ティガーナ=ラルベッタは死にました」
憎らしいほど晴れ渡る、紅蓮の空。
全てが燃えているような錯覚に包まれて、少女は誰も居ない廃墟でぽつりと呟いた。
少女の左の瞳を焼く眩しい夕焼け。
少女の右の瞳を覆う十字架の眼帯。
右目に焼きついて離れない光景が、剣を抜くたび少女の記憶をあの日に遡らせる。
あれは誰の罪だったんだろう。
あれは誰の罰だったんだろう。
一緒に死なせてくれれば良かったのに、なんて安っぽい事を少女は考えなかった。
なぜなら少女はあの日、死んでしまったから。
ずっとずっと、あの日に自分の記憶と感情を閉じ込めたまま。
誰を憎めば良いのかいいのか解らない。
誰を憎んでも結果は変らないのを解っている。
迷宮を走る少女は。
きっと泣いている。
***
対立する女王同士の元に仕える番犬たちの
ありがちな物語を、私流に鮮烈に描いてみましたw
ダルアンとサムではあんまり感じられなかった「痛み」とか「悲観」とか、
そんなものを描いたつもりです。
二人の恋愛も、違った「葛藤」があって楽しかったけどw
良かったら感想下さい。
ちょ、大丈夫ですか?!w
おぼろろろ\(^Q^)/
自分なりに、自分の感性、連想して自分がどうなった、だとかを書くと、
情景が描写しやすいんじゃないでしょうか?*
あくまで個人的な意見ですけど。
に、人間です!ww
持ち上げても何も出ませんよ//、(爆
ありがとうございますw
次にしないといけない仕事なんか忘れて・・・・(ry
どうしよう、急な展開になぜか全身の血が逆流しそうで((((
血が出てるシーンがめっさ連想できることに驚く(
説明文・文章力・台詞が全て神なあなたは人間ですかってほどですうううううううう!
尊敬しますすすす!
あと次の小説も期待している私がここにいるうううう!(ty
でもお互い駄目だって分かっていたから微妙な関係に・・・
もうちぐはぐなのは目に見えてます(白目
メルメルよ・・・君の過去を頑張って暗くするよ!w
おkです!
今からメール送りつけますね(
きっと昔のメルメルは女王のためだけに働いてそうです。
女王様大好き・・・みたいなw
頑張って書きますよー!
クオリティは底辺の底辺ですがwwww
アドレスメモしました!
これは・・・携帯からとパソコンから・・・どっちで送ったら良いですかね?
どっちもアドレスがあるという私(
きゃ、止めて//(爆
あの二人はお互いに少し余裕があったからね、
こう、アリヒェンと某少年みたいに切羽詰まった状況じゃなかったからこそのあの感動のラストは
今でもくっきりはっきり、(以下略
有難う御座います//*
稚拙な文章にお付き合いいただいて幸いな限りで
www根はいい子なんですよ、無愛想なだけで(
サムに代わって俺が土下座する。
前回に続きとても凄い小説で感動ですbb
なんかアリヒェンさんのこと好きになっちゃいましたwww
きゃwてれm(ry
でも、アリヒェンにはそれが出来なくて
好きな子に殺されるのを選んだのに、
その子は誰かに…多分、その子の女王様かな、に殺されちゃって。
メルメルー!!!(
まあ、そもそも出会うことが希ですけどねw、あるかもしれないですねー…
おお、なにやら気になりますなw
え、ちょ、私のなんか眼中に置かないで下さい、待ってますから!(
…と。
なんだか椿さんと楽しくやたら会話してて、
どれを返事しようか迷った挙句結局これっていう←
じゃあ、あとで椿さんのところに私のメアド貼り付けておきますね!
きゃw照れますw(ty
そうね…
どうせ「そうなる」って解ってても、好きなものは好きで――
…うーん、甘苦い。(爆
ふふーwwどうぞ可愛がってやってくださ、(ry
いやいやいやwまだまだ精進しなきゃならんよ
ありがとwがんばる!w
馬路で!?超楽しみにしてていいよね!ね!(
悲しいですよね、好きでも殺さなくちゃいけない・・・
アリヒェンちゃんを頑張って慰められるようにメルメルは頑張りますw
メルメルも元は番犬だったってことはこんなこともあったのだろうか・・・
キャラ・・・メルツ君あんな感じですw
最初はメルだけの予定でした・・・でも訳あってメルツに。
文章なんて・・・これを見た後に果たして書けるのだろうか・・・が、頑張りますよ一応www
少年と少女の戦い。
何かとっても切ないね…。
好きだった者同士、別の女王に仕えてしまったせいで殺し合う運命。
でも、本当に健気で悲しかった。
もぉー、アリヒェンの事抱きしめたくなってきちゃったよww
やっぱり糾の小説は最高だねbb
次回作も楽しみにしてるz!!((
あたしも、気が向いたら小説書くつもりだからその時はよろしくねbwww