「秋」
- カテゴリ:30代以上
- 2012/08/08 15:34:33
三年三組の教室は大賑わいです。
「見てえ、この銀杏の葉っぱ、綺麗でしょ」
「ええっ、わたしの紅葉の方が綺麗だよ、ほらあ」
「見ろよ、このドングリ。でかいだろう」
「へへへ。そんなよりも、ほらっ、これ」
そう言って、けんちゃんが取り出したのは、一匹の赤とんぼでした。
赤とんぼは、虫かごの中をぶんぶんと飛び回っています。
「わあ、赤とんぼだ。大きいねえ」
「すげえ、よく捕まえられたな」
「どこにいたの。わたしにもとってよ」
みんなにワイワイ言われて、けんちゃんは得意顔です。
「よしなさいよっ」
そう叫んだのは、みっちゃんでした。
「その赤とんぼ、逃がしてあげて」
そう言って、虫かごを取り上げようとします。
「何するんだよっ」
「かわいそうじゃない」
「何言ってんだよ、お前」
二人がもみ合っているうちに、虫かごの蓋が開いて、赤とんぼは、逃げてしまいました。
「あっ」
「俺の赤とんぼが・・・うわーん」
けんちゃんは、泣き出してしまいました。
そこへ、先生が入ってきました。
「ほらほら、みんな、いつまで騒いでいるの。早くお席に着きなさい」
「あら、ケンちゃん、どうしたの」
「みっちゃんが・・・俺の赤とんぼ逃がしちゃったんだ・・・」
「まあ、どうしてそんなことするの、みっちゃん」
「だって・・・」
・・・・・・・・・・・・
「はい、皆さん。もう、すっかり秋らしくなってきましたね。そこで、今日の宿題は、皆さん『秋』を見つけてきてもらいます」
「はあい、先生。わたしのお姉さんの名前は『秋』でーす」
「あはははははは」
「あら、そうなの?でもね、探してきて欲しいのは、季節の『秋』ですよ」
「でも先生、良く分かりませーん」
「そうねえ・・・たとえばほら、あの木を見て」
先生は、窓から見える街路樹を指さしました。
色づき始めた葉っぱが午後の日差しに照らされて、金色に光っています。
「わあ、綺麗」
「皆さん、分かりましたか。ああいうのを、探してきて下さい。みんながどんな『秋』を見つけてくるのか、先生、楽しみにしてますよ」
「はあ~い」
みっちゃんは、家に帰ると、早速弟のあっちゃんを連れて、『秋』を探しに出かけました。
街に出ると、秋はいろいろなところにありました。
「ねえ、お姉ちゃん。『秋』ってどこにあるの」
「ほら、あっちゃん、あれ見て」
みっちゃんは、池の畔の木を指さします。
赤く色づいた葉っぱが一枚、池の中で、波に揺れています。
みっちゃんはそれを手にとって、お日様に空かして言いました。
「ね、綺麗でしょ。こんなのが『秋』なんだよ」
「すご~い、『秋』って綺麗なんだね」
先生の受け売りだというのに、みっちゃんは得意そうです。
その時
二人の頭の上で、セミの声がしました。
「あ、セミだ」
「本当、まだいたんだ。もう、秋なのにね」
みっちゃんたちは、しばらく、セミの声を聞いていました。
「やっぱりうるさい声だね~」
「そうだね・・・(でも、なんだろう。少し悲しげに聞こえる)」
すると、突然、セミの声が変わったと思うと、ぽとり、と二人の前に落ちて、そのまま動かなくなりました。
「死んじゃったの?」
「うん・・・」
「『秋』、だから?」
「うん・・・」
・・・・・・
「帰ろう。あっちゃん」
おわり
ちょっと成長した「みっちゃん」の気持ちが、こめられてますね…
残念ながら…こちらは、まだ夏真っ盛り~立秋過ぎて少し~
気温が下がったのが、救いですが…このまま下がってくれるといいな~。
(お盆過ぎると~ぶり返したりするから~恐い~)
赤とんぼも紅葉もまだまだだけど…セミがガンガン鳴いてるけど…w
でも~少しづつ…秋に向かってるのですね…
オフコースのあの曲「夏は、冬にあこがれて~」を、思い出しました。
この歌を聞くと、「パンとマーガリン」が思い浮かびます。
小学校の給食の時間によく流れていましたから。
まあ、パブロフの犬みたいなものですね。(笑)
その世界が、本当はたくさんの悲しみと、優しさに満ちている。
ある日、突然、そのことに気付く。
それは、特別な日じゃなくて、ごく普通のありふれた日。
どこにでもある、日常の中の時間。
皆さんも、きっと、そのような経験がおありだと思います。
そんな女の子の成長を一つの物語に託してみましたが・・・
どうでしょう。
本当はラストに気の利いた言葉を入れようと思ったのですけど、思いつかなかったので、ばっさりと、切ってしまいました(#^.^#)