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薄熙来事件が暴く中国の腐敗度

 来るべき薄熙来氏の裁判は、共産党が一握りの腐ったリンゴを一掃できることを示す証拠になる――。中国共産党は、世界がこう考えることを望んでいる。

■支配層は腐敗とは無縁という「神話」

 ところが実際には、中国の最高幹部の1人だった政治家の失脚と、殺人、セックス、カネ、権力にまみれたスキャンダルの生々しい詳細は、逆の効果をもたらした。

 腐敗の露見から薄氏の妻・谷開来氏による英国人実業家ニール・ヘイウッド氏の殺害に至るまで、この浅ましい事件は中国国民と世界に、腐敗が頂点まで及んでいることを知らしめた。

 共産党は過去30年間にわたり、下位の役人の間では腐敗や不正行為があるかもしれないが、体制を支配するのは大衆に仕える潔癖で無私無欲のエリートだという認識を注意深く育んできた。

 何億人もの国民を赤貧から救った中国の目覚ましい発展と、政府高官を取り巻く秘密主義が相まって、公正で慈愛に満ちた皇帝が北京から采配を振るうとするこの見方を大勢が受け入れた。

 今から1年前、中国・烏坎村の住民が地元の腐敗した役人に対して反乱を起こし、機動隊を相手に長期戦を繰り広げた時も、住民は国の指導者への永遠の忠誠を強調し続けた。

 中国各地で次々沸き起こる小規模な反乱では、デモ参加者は必ずと言っていいほど、中国の賢明な指導者が地方の腐敗を知りさえすれば、「機械仕掛けの神」のように舞い降りて裁いてくれると信じている。

 今は引退しているが、30年近く中国が専門だった西側の上級外交官はフィナンシャル・タイムズに対し、薄氏の事件を機に高級官僚も下っ端の役人と同じくらい汚れていることに自分もようやく気づいたと打ち明ける。

■薄氏は例外ではない

 薄氏のスキャンダルに続き、世界のメディアはほかの指導者が築いた財産を相次ぎ暴露して薄氏は例外ではないとの見方を強めた。

 過去にも政府高官や幹部が司法の怒りを買ったことはあるが、現代の法廷で薄氏ほどの実力者が裁判にかけられたことはない。薄氏は25人の委員から成る共産党中央政治局の一員だったし、父親は共産党の創設メンバーで、かつて毛沢東政権で財務相を務めた薄一波氏だ。

 薄氏はヘイウッド氏殺害の隠蔽に手を貸したほかにも、商務相および大連市、重慶市のトップとして過去20年間に犯したとされる様々な罪を問われている。権力を乱用して「巨額の賄賂」で財産を築き、適格でない取り巻きを昇進させる一方、「何人もの女性と不適切な性交渉」を持ったとされる。

■ほかの指導者にも疑いの目

 厳しく統制された国営メディアはいささかもの悲しげに、今回の訴追は共産党の「法の支配へのコミットメント」、「先見性」そして「複雑な状況に対処する見事な能力」の証拠として歓迎した。

 共産党はまた、薄氏の事件は、どれほどの権力者だろうが、どれほど有力なコネがあろうが、中国では誰も法の適用を免れないことを示したと主張する。

 しかし、いずれ歴史家が振り返った時には、薄熙来氏のスキャンダルを、舞台裏で繰り広げられる中国の激しい政治闘争が明るみに出て、善き皇帝の神話が打ち砕かれた瞬間と間違いなく見なすだろう。

 薄熙来氏の物語は、権威主義的な中国の実力主義と自己を修正する能力を示すどころか、中国の指導者は自分たちは法を超えていると見なし、実際には説明責任がほとんどないことを浮き彫りにした。

 共産党が秩序立った権力移譲を成し遂げようとする中、なぜ薄氏はこれほど長い間、犯したとされる罪をやりおおせたのか、多くの人が疑問に思っている。彼らはまた、選挙を経ずに中国を統治するほかの指導者たちは、薄氏と実際どれほど違うのかを問い始めている。


http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0502P_V01C12A0000000/



 

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