Nicotto Town


TAKEのつぶやき


☆千両みかん

一部の骨董品のように古くなるほど値打ちの出てくるものもありますが、その価値が分からない人も大勢居ます。また、お金の価値と品物の価値ってちょっと違うことがあります。この落語はそんなところをうまくネタにしています。ただ、残念なことに、現代のように食べ物の季節感が失われてくるとこの落語の面白さも半減しそうな気がします。

【スジ】
大阪のある大店の若旦那が病気になってしまう。両親は右往左往しながらも医者に診てもらうと、なにか思い煩っているのだろうという。しかし、両親がわけを尋ねても、恥ずかしがって一向に言おうとしない。

困った両親は若旦那が心安くしている番頭に理由を聞き出させると、若旦那はみかんが食べたいことが分かった。

さっそく、みかんを買いにいこうということになるが、季節は夏の盛りである。それでも番頭はみかんを求めてあちこちの果物屋、八百屋、はては魚屋にまで出かけるのであるが、夏にみかんがあるわけはない。

その姿を見るに見かねた魚屋が、天満の青物市場にみかん問屋があるのでそこに行ってみるようにと教える。急いで駆けつけたところ、みかん問屋の旦那は真の商人で、みかんがないと商人の恥なので、いつでもみかんは蔵に置いてあると言う。大喜びの番頭は蔵に行ってみるが、そこにあるのは腐ったみかんばかりであった。番頭はガッカリするのであるが、一つだけ腐っていないみかんが見つかる。

みかん問屋はわざわざ訪ねてきてくれたことに対して、もっていってくれというのであるが、番頭は嬉しさのあまり、みかん問屋の旦那は真の商人であることを忘れてお金を払うという。すると、みかん問屋はこれは商いだからということで、夏のみかん一つの値段は千両と告げる。腰を抜かした番頭は前言を撤回するが、聞き入れられない(この辺り大阪の商人ですね)。

番頭は店に戻って旦那に相談したところ、千両で息子の命が助かるのなら安いものだと、あっさりと千両を出す。これでまた、番頭は腰を抜かす。

そして、番頭は一つ千両のみかんを買って戻ってくると、さっそく若旦那に差し出す。若旦那はおいしそうにみかんを食べて元気を取り戻すと、番頭と両親の苦労に感謝して、残りの三房を一つずつ食べてくれと、番頭に渡す。

番頭はそのみかんを持って考えた。

「みかんにはちょうど十房あったんやから、この三房で三百両の値打ちがあるわけや・・・」

そして、番頭はみかんを抱えて、ドロンした。

※この噺は上方落語の笑福亭の祖といわれる松富久亭松竹の作だそうです。この方は他にも色々と名作を作っています。




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