「青い月の夜」
- カテゴリ:30代以上
- 2012/10/23 11:56:22
青い月の夜。
半分だけのお月様に照らされた鉄塔に、一羽のうさぎが腰掛けていました。
「うさぎさん、何を見ているの?」
いつの間にか、うさぎの隣に腰掛けていた少女が問いかけます。
「舟を待っているのさ」
うさぎが答えます。
「ふね?」
「そうさ。こんな夜は、お月様の半分が舟になって、迎えに来るんだよ。うさぎの故郷はあのお月様だからね」
「うさぎさんには、故郷があるんだね」
「いいな・・・」
ぽつりと少女がつぶやきます。
「君にはないのかい?」
「うん・・・」
幼いころから、両親の都合で引っ越しばかりしていた少女には、故郷と呼べるものは思いつかないのです。
「でも、家はあるんだろ。だったら、こんなところにいないで早くお帰りよ」
「でも、あそこは・・・」
わたしの場所じゃないから・・・
そう続けようとした少女でしたが、それではあまりにも哀しいので、途中で言葉を飲み込みました。
「ふ~ん」
うさぎはそのことに気付いたのか気付かなかったのか、興味なさげに言います。
「だったらさ、僕と一緒に月に来るかい?」
「でも・・・そこはうさぎさんの場所でしょ。きっと、ここと変わらないよ」
「そうでもないぜ。知ってるかい?月の裏側には、影達の世界があるんだ」
「影?の・・・世界?」
「ああ」
うさぎは続けます。
「月の裏側には、誰にも顧みられること事のない影達が暮らす世界があるんだ。もちろん、そこに住むのは人間の影ばかりじゃないが・・・影だからきっと何奴も変わらないさ。君と、同じだよ」
「そこに行けば、もう寂しくない?」
少女が聞きます。
「そこまでは分からないな。僕は影じゃないからね」
「・・・・・・」
「まあ、ゆっくり考えなよ。・・・とは言っても、それほど時間はないけどね。もうじき舟が来る・・・」
うさぎが言いかけた時
「ぴろろ・・・ぴろろ」
どこかで携帯電話の着信音がしました。
見ると、少女の手には、赤い携帯電話が握られていました。
「なんだい、携帯なんて持ってきたのかい?こういうときは置いてくるか、電源を切っておくのがマナーだぜ」
「ごめんなさい」
少女は、慌てて電源を切ろうとしましたが、表示された名前を見て、ふと手を止めました。
「いいぜ。出なよ。だけど、くどいようだけど、時間はあまりないからね。舟に乗ったら、もう圏外だから・・・」
うさぎはそう言うと、少女のそばを離れました。
「ありがとう・・・」
少女は誰に向かってか、そうつぶやき、通話ボタンを押しました。
「もしもし」
それから少し後、半分のお月様をかたどった舟が、もう半分のお月様へと帰っていきます。
その舟に少女が乗っているのかどうか・・・
ここからでは、見分けることが出来ません。
おわり
いっつも素敵なおはなしありがとうございます^^
。。。きょうはもの凄く寒いです。。家にいよ -_-;;
乗ったとしたら切なすぎます。
このお話は、可愛くて^^面白かったけど…問題提起されてて…悩むなぁ~w
今晩は、眠れそうに無いです~w
秋の夜長には、最高の~お話ですねっ^^
携帯電話は誰からかかったのか?大切な人だよね~^^
お母さんか…?恋人か…?お父さんか…おじいさんかもw
私もふるさとが、あって無い様な物なので…月へ行くのも良いですね^^
あっ…旦那が帰って来たので~この辺で…口に腫瘍が、出来たとかで
「このままなら顎が腐る」と医者に脅かされたそうです~
「腫瘍は、良性?悪性?」と聞いたら…「良性」だとか…
冗談で「ちぇっ」と言ったら…「おまえな…」と絶句して2階へ
行きました~ニコタ反対の人なんで~上手に追い払えてよかった~w
悩んだ末、この形にしました。
でも、答えは明白ですよね。
細かい情景については、あまり気にせずに、好きなように楽しんでいただけたら幸いです(#^.^#)