韓国大統領選 対北政策、争点化へ過熱
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- 2012/10/28 20:28:47
■盧前大統領、南北会談で「NLL放棄」疑惑
【ソウル=黒田勝弘】韓国大統領選は12月19日の投票まで2カ月を切った。テレビ討論など候補者直接対決の場面はまだなく盛り上がりを欠いている。本格的な政策討論もこれからだが、そんな中で盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領が金正日(キム・ジョンイル)総書記との南北首脳会談の際、海の境界線・北方限界線(NLL)問題でひそかに北朝鮮に譲歩していたとする疑惑が持ち上がり、大きな争点になっている。
◆文氏に打撃
この疑惑は朴槿恵(パク・クネ)・セヌリ党候補の陣営が提起している。盧前大統領の秘書室長だった野党・民主統合党の文在寅(ムン・ジェイン)候補にとっては大きな打撃になり、NLL問題は各候補の対北姿勢を問う機会にもなっている。
疑惑は、2007年10月の盧武鉉・金正日会談は「西海平和協力地帯」や「共同漁労区域」の設置で合意したが、その裏には盧前大統領が北の主張を受け入れNLLを領海線とはしないという“NLL放棄発言”があったというもの。朴陣営は未公開会談録に記録されているとし、文陣営に会談録公開に応じるよう要求している。
文陣営は事実無根といい会談録公開にも反対している。法的に会談録公開には国会議員3分の2以上の賛成が必要だ。
有力3候補の中で朴候補についてはこれまで、文陣営やマスコミから朴正煕(パクチョンヒ)大統領時代の野党弾圧など“父の罪”を取り上げた非難、批判が多かった。これに対し今回、朴陣営が巻き返しとして文候補の“父”にあたる盧前大統領の疑惑追及に乗りだしたというわけだ。
NLLはソウル西方の黄海上の「西海5島」を韓国領に取り込んでいる重要な防衛ライン。朝鮮戦争(1950~53年)休戦の際は韓国・国連軍側の支配下にあったが、北朝鮮側は同意していないとしてその存在を否定してきた。
◆海の火薬庫
このため付近は“海の火薬庫”といわれ、一昨年の北による韓国哨戒艦撃沈や延坪島砲撃など軍事衝突が繰り返されてきた。現状変更を狙う北朝鮮は、この地域での軍事的緊張や衝突を内外に印象付け、韓国を“NLL交渉”に引き出す作戦を取ってきた。
南北関係をめぐっては無所属の安哲秀(アン・チョルス)候補を含め野党陣営は北との早期対話や支援・協力再開など盧前政権の路線に近い。これに対し保守派の朴陣営は対北安保重視の観点から“NLL固守”論だ。
選挙に際して北朝鮮問題は“北風”といわれてきた。しかし南北緊張や軍事衝突といった“北風”は近年、「平和と対話」の必要性を強調する野党陣営に逆に有利になる場合があるため、朴陣営内には慎重論もある。
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