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印、暴動頻発で外資逃避


 インド政府が労働争議の激化に頭を悩ませている。急速なインフレの進行に伴い、工場従業員による賃上げ要求のストライキや暴動が頻発。一部では死傷者も出るなど深刻な事態を招いているためだ。有効な対策を取れなければ海外企業が資金を引き揚げ、ただでさえ失速気味の経済成長率に致命的な打撃を与えかねない。外資規制の大幅な緩和に踏み切ったシン政権にとっては正念場といえそうだ。

 ◆賃上げ凍結に反発

 ニティン・カーレ受刑者(25)は今年8月まで、マハラシュトラ州にある印建設サービス大手、エベレスト・インダストリーズの工場で1日12時間、石綿板の加工に従事していた。貯金を増やして結婚することを夢見ていたが、同月行われた賃上げをめぐる会社側との交渉の席で経営陣3人をナイフで次々に刺した罪に問われ、現在服役中だ。

 エベレストは昨年11月、賃金体系についてあくまで従業員の規律や工場の生産性に基づいて決定すると発表。インフレによる物価の上昇は考慮せず、当面賃上げを凍結する意向を表明していた。

 インド準備銀行(中央銀行)のデータによると1991年以降の20年間でインドの国内総生産(GDP)は年平均6.6%拡大。国内工場の年間の利益は平均100万ルピー(約149万円)から2100万ルピーに膨れ上がり、企業幹部の報酬も3倍に増えたという。これに対し工場従業員の賃金はわずか0.6%上昇しただけだった。昨年1年間でのインドのインフレ率は平均8%前後で推移した。

 同じく91年からの20年間で年平均10.4%の経済成長を遂げた中国では、91年から2010年にかけ、都市部の工場従業員の賃金も平均9.6%上昇している。中国政府が公表したデータからブルームバーグニュースが算出した。少なくとも賃金に関する限り、インドでの工場従業員の待遇は、格差問題の深刻化が叫ばれる中国よりもはるかに劣悪であることが示された。

 ムンバイにあるタタ社会科学研究所(TISS)の労働研究センター室長を務めるシャリト・バウミック教授は電話インタビューに答え「工場従業員たちは正当なパイの分配を得られていないと感じており、経営サイドへの反発を強めている。労働争議が暴力に発展するケースは増えるばかりだ」と警鐘を鳴らした。

 7月には日本の自動車メーカー、スズキの印子会社マルチ・スズキの工場で従業員による1000人規模の暴動が発生。インド人の人事担当責任者1人が死亡し、日本人幹部を含む多数の負傷者が出た。同社マネサール工場の従業員らは過去1年間にわたり賃上げ、労働条件の改善、自由に労働組合を組織する権利などを求めて経営陣と対立していた。

 ◆法律を顧みぬ経営者

 このほか今年に入り、フィンランドの携帯電話メーカー、ノキアや独エンジニアリング大手のシーメンスの工場でもストによって操業停止を余儀なくされる事態が発生している。政権浮揚の足がかりとして過去10年で最大規模の経済開放を進めるシン首相は先月、小売りや航空セクター、保険・年金業界への外資参入を認める方針を発表したが、労使対立が頻発する現状が続けば海外企業はインドへの進出に二の足を踏むことになる。

 カルゲ労働・雇用相は、地方政府の労働問題担当者らに向けて行った先月の演説で、労働者の権利を守るための法律が十分に顧みられていない状況が労使関係の悪化を招いていると指摘。最低賃金、労働環境、契約法に関わる法律の存在に対し「経営者は見て見ぬふりをしてはならない」と主張した。

 印労働組合センター(CITU)のマハラシュトラ州担当責任者としてエベレストでの事件を調査するR・S・パンデー氏は「エベレスト経営陣は賃金の支払いを遅らせ続けており、解決の見通しはまったく立っていなかった。昨年の11月から従業員への賃金不払いが続いていた」と説明した。またカーレ受刑者については「模範的な従業員だった。努力が報われないことへのいらだちと失望から、経営陣への凶行に走ったのだろう」と述べた。


http://www.sankeibiz.jp/macro/news/121027/mcb1210270503010-n1.htm


 

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