すっきりんクロニクル第一章「すっきりんの自由」
- カテゴリ:自作小説
- 2012/11/26 22:05:48
秋が過ぎて冬が来た。
「少しでも、世界の果てに近づこう!」
すっきりんは旅に出た。
いつもの赤いコートを羽織り、電車に乗った。
向かう先は決まっていなかったが、雪の舞う日本海が見たかった。
特急しらさぎを降りると古風な金沢の街を歩いた。
狭い路地を入ると古民家が借家に出されている。
「ここにしよう。」
彼女の第二の人生が始まった。
ローン会社を渡り歩き資金を準備した。
古民家を小料理屋に改装。
「すっきり屋」の看板を軒下に出し店を開けた。
明るい彼女の接客態度は評判になりすぐに客は集まるようになった。
しかし客単価は上がらない。ローンだけがかさんでいく。
問題は客が彼女の料理には手を付けないことだ。
それまで彼女は料理をした事が無かった。
だから客は酒と「乾きもの」ばかりを頼み、彼女と楽しく話をして帰っていく。
ある日「賢」という料理人が訪ねてきた。
「ここで働かせてもらえませんか。」
漢字が惜しい!
「健」だったら健さんなのに。
でも、彼の静かな物腰は魅力的だし、自分の料理の腕を考えて採用を決めた。
彼の腕は確かだった。料理屋「すっきり家」の客単価は上がり繁盛した。
「賢さん。いつもありがとう。」
着物の帯を締めながら感謝とねぎらいの言葉をかけた。
「いえ、女将さんの明るさのおかげです。」
大根の皮をささっと剥きながらほほを赤くして賢は答えた。
「ところで、私、アフリカのある国の通貨でFXしようと思うのだけど。」
「自分。不器用な男ですから。そういうの知らないです。
でも。。。女将さんがいいって言うんだったら。。」
「よし。このお店と賢さんのためにも頑張る!」
「女将さん。。あっしのために。。。ありがとうございます。
自分もいつかお礼を。。」
次の月、円が暴落し1$=378円になった。
FXで儲けたが、さらにデリパティブにつなげ
リバレッジを効かせ、一晩で30億円ほどかせいだ。
ローンは全て返済した。
料理屋「すっきり家」はチェーン店化し全国展開した。
翌年「すっきりグループ」には美容学校・美容医院
が加わり年商74億円を記録し名古屋に自社ビルを造った。
彼女は企業、国債、債券、そして国にも投資した。
「賢さん。わたし、本当は冒険が好きで、世界の果てが見たかっただけなの。」
彼女は言った。
「そうですか。」
賢は肉じゃがのフタを開けながら応えた。
ある日、すっきりん社長のもとにメールが届いた。それはアフリカの小国からの感謝状と招待状だった。彼女が投資した、その小国はささやかな繁栄を謳歌していた。彼女の投資による貢献が特別国民栄誉賞に選ばれたのだ。
「経営なんてどうでもいいの。私行こうかしら。」
「私も行きたいです。人生は旅です。その先に世界の果てがあります。人生という行先が分からない船でも乗っておいた方がいい。」
賢は静かに応えた。
彼女はアフリカに旅立った。エリミネーツ航空のファーストクラスは座り心地もサービスも最高だった。
彼女は特別国民栄誉賞の表彰を受けた後も、しばらく、その国のリゾートを楽しんだ。その小国は温暖で過ごしやすい気候だった。
新たにレアメタル鉱山発掘開発への投資を決めた。
新たに購入したプライベートジェットですっきりグループ 名古屋本社に帰った。
賢さんは相変わらず金沢での小料理屋のカウンターに立っている。
彼女は経営者の激務をこなしながら、その店を1月に一度訪れ、賢さんと話をするのが楽しみだった。
「私ね。いつか、あの国で暮らしたい。」
「そうですか。いつか国ごと買えたらいいですね。」
レアメタル鉱山からダイヤモンドが出たとの連絡が届いた。
彼女はその小国を買った。
「すっきり国」が生まれた。
「すっきり女王」は「すっきり国」にアミューズメント施設「すっきりランド」をつくることにした。
「世界の果て一周コース」と呼ばれる様々な世界の果て気分が味わえる岬が32カ所。
「F1壮絶人生ジェットコースター」と名付けられた最新バーチャル体験型シミュレーターが取り付けられた時速300km/hのジェットコースター、上空6000mからのコンドルバンジージャンプなどが設置された。
世界中の「なまこ」が集められたカリコリ水族館やきりんだけが300匹暮らす動物園、砂漠やジャングルなどの世界のいろいろな場所が再現された迷路「わたしの世界」もあった。
裏通りには世界の小料理屋が173軒並び、お医者さんカフェも大人気、200人の坊主が横一列で踊るナイトクラブも有名になり、毎晩、電飾をつけたかぶとをつけたオモテナし隊500人が街を練り歩いた。
なかでも「すっきりん女王の落語研究所」という「すっきりん女王」自らが真打ちとして登場するナイトショーは大評判となり2万人規模の人員が入れるドーム設備で開催された。
「すっきりランド」は世界中の観光客を引きつけ、すっきり国はさらに繁栄し、その通貨は値上がりした。
彼女は世界の富豪の一人となった。
ある日、彼女はプライベートの787ジェットで帰国し金沢の「すっきり屋」に寄った。
「そろそろ、賢さんも一緒に来ない?」
小皿の大根のなますをつまみ、ビールを傾けながら彼女は聞いた。
「私にはここが一番です。」
のれんの後ろから背の高いロシア人女性が姿を現した。
「今の私には彼女がいますので。。。。。」
その夜、すっきりん女王はジェットで自分の国に戻った。
赤いポルシェが320台置かれた宮殿に戻ると、ナイトガウンを羽織りベッドに入って少し泣いた。
しばらくしてから、金沢の二人は結婚し子供が出来たと聞いた。
彼女はやけくそになり、DNA研究所を買い取り世界中の優秀な医師を集め世界で最高技術をもつ美容整形医院を作った。
でも空しかった。
彼女は自分の求める自由とはなにか思い出し始めていた。今の自分はその状態からはほど遠かった。
彼女は賢さんに短い手紙を書いた。
「かわいい子には旅をさせろ。世界の果てより」と書いた。
ペンを置き、手紙を出すと、若返りの美容整形をした。
そして冷凍睡眠についた。
すっきりん国は優秀な統治者を失い荒廃した。
ジャングルではDNA異変を起した3本頭のトラや陸生となった巨大なナマコが人を襲い、高さ40m、胴まわりが10mくらいあるキリンが迷路の中を闊歩していた。すっきり国は世界で一番危険な場所と呼ばれるようになった。
27年後、すっきりんは冷凍睡眠から目覚めた。
若い容姿の彼女の前に、「賢さん」そっくりの青い目をした青年が剣を手にして立っていた。
彼女は彼のキスで目覚めたのだ。
「父に言われここに来ました。」
「なんて言われたの。」
「冒険しろ。世界の果てを見てこい。って。」
南米にある「世界の果て」アルゼンチンのウシュアイアを目指し、二人はジャングルの中を怪物達と戦いながら歩き始めた。
恋と本当の冒険が始まる。
ーーーー他のSNSから転載。かなり加筆変更ーーーー
髪が柔らかいので、さわさわ感がいいらしいです。
でも、柔らかいという事は。。。。。
自分の前頭葉付近の密度に関する話題を避けたくなる今日この頃です。
ラブストーリー楽しみ♪
今度頭を触らせてください❤
「好きだよ」
なんて
「惚れてまうやろーーー。」
と萌えてしまう40になったばかりの坊主のおっさんです。
次の次はラブストーリーを予定。
女は度胸。
という言葉が、最近身にしみる事が沢山身の回りに起きる今日この頃です。
女は度胸だよな。本当に。
くーやさんの人生は「冒険」ばかりだったと想像しています。
そして、今もある意味「冒険」なのでは。
だって、気付く事が多過ぎじゃないですか。。。
大丈夫。高倉健は再登場しますよ。
もう、ばっちしです。
話はもっととんでもない方向に行っちゃいますけどね。
彼女が手に入れたもの。
これから手に入れるもの。
すべてが詰まってる気がした。
人は、最初の目的にかえるものなのかもしれない。
とてもイメージしやすく、すっと入ってきた。
最初は自分の為の旅だったのかもしれない。
でも、いつのまにか・・・
ちょっと切なくも感じたよ。
私は好きだよ。
人って常にわくわくしてないと、生きてる意味、実感・・・得られないものかもね?
私は最近ないな~・・・わくわく・・・
冒険したいけど、臆病だしな。。。
この話、僕の脳内では監督=山田洋次の「遙かなる山の呼び声」のタッチで、
賢さん=高倉健、すっきりん=倍賞千恵子が演じ始め、話がとんでもない方へ行った後も、
最後まで、この2人が演じきってくれました。(注・高倉健=父子2役)