Nicotto Town


てらもっちの あれもっち、これもっち


すっきりんクロニクル第2章BARプッチーニ(1)

「すっきりんクロニクル第2章 BARプッチーニ&ヴェルディにて」

 

え。なぜ今日は片づけしているかって?

今日でこの店を閉めるのさ。これで全部終わり。

 

イタリアの最近の不景気のせいかって?

違う。違うよ。

 

私も歳をとってマスター業もつらくなってね。

これから楽しい年金暮らしに入るっていうわけさ。

 

この店での今日までの一番の思い出が教えて欲しいって?

いや、そんなことを言われてもねぇ。

 

政治も経済も変化の時代だったからな。

ご覧の通り、このBAR"プッチーニ&ヴェルディ"は人通りの多い通り沿いだし、夜な夜なローマの男も女も集まって来たさ。ワインを飲みタパスからつまみをつまんで、それぞれの夜を楽しんだんだ。

いろんなシーンを見たね。時には泣いたり怒ったり、男の頭からワインをかけるような女もいたけれど、それを見ている自分にとっては、まぁ慣れていることもあって、いつも楽しんでたってところかな。

 

店を閉める今になってみれば全部いい思い出さ。

 

そうだな。それじゃ、あいつらの話っていうか一番心に残っている事について話そうか。

あんまり人には話してないんだけどね。

 

いや、違うよ。カペストリーニ首相とうちの従業員のステーファノが酔っ払ってけんかして、売春婦の服にげろ吐いて、高いクリーニング代を払わせたって話じゃないよ。

 

ほら。

あの長い世界大戦が始まって7年くらいたった頃にさ。貧民街っていうか難民キャンプができたろ?アフリカとか西アジアから逃げてきた連中の。

 

そう、ローマの西地区の公務員アパートが鉄条網で区切られて。鉄条網の向こうの子供たちにボール投げてやったりしてさ。

 

あそこの若い連中が、夕方くらいから警備員の目を盗んで抜け出してきてね。鉄条網に穴を開けちゃって。ローマの夜は楽しいからね。このローマのセントラルにある店まで飲みに来てくれてさ。

 

もちろん通報なんてしないよ。

ま、やっぱり言葉とか肌の色が違うからすぐ分かるんだけど。気のいい奴らだったからね。

 

その中にあいつらがいたんだ。若い男と女。男は凛々しい。女は明るくて可愛い感じ。すぐに東洋系だって分かったよ。背も低かったし。

男は。。。確かKENJI

女は。。。何だっけな。KIR。。。。KIREJI。。。違うな。そりゃ。あの馬鹿で酔っ払いの日本人キーパーTerramo。あいつのあだ名だ。

あ、たしか「SUKKI RI YAKI」だ。私たちは「KIRI」って呼んでいたっけ。

 

そう、そのKENJIJIとKIRIがうす汚れた格好でこの店に現れたときにはちょっと驚いたんだけど。

 

二人は店に入ると、うちのお勧めだったシラスとほうれん草のピザとSpaghetti al pomodoro を頼んでがつがつ旨そうに食べてた。

 その後、ワインに口をつけながら、つたない英語で話しだした。チェニジアからスペインに渡る船が無くて、チェニス経由でパレルモに渡って、ローマに入り、そこでEU警察につかまって難民キャンプに入れられた。って言ってた。

ああ、あの服についた黒い汚れは。。うん。血のあとだ。喧嘩じゃない。もっと激しいやつだ。喧嘩の血の量だったら、たくさん見てきたからすぐ分かる。

でも何があったかは知らん。知らんし、聞くつもりもないよ。店の連中が聞き出してたみたいだけど、いろいろと辛い想いをしてここまでたどり着いたらしい。

 

「このあとどうするんだい?」って聞くと、急に強い口調になって大西洋を横断したいと言ってた。「世界の果て」に行くとかなんとか。

 

 そりゃ、今だったらイタリアからアメリカへの飛行機の直行便があるけどさ。まったく、最近、若い者はね。平和ってものの便利さに慣れすぎだよ。

 あの時は戦時中だよ。飛行機なんて全部焼かれちゃって無くなって、新大陸に渡るにはアイルランドからカナダに続く大西洋横断トンネルを渡るしかなかったのさ。

 

 それでね。その二人は何度もうちの店に通ってくれて。そのうち言葉もしゃべれるようになって、店の常連とも仲良くなってね。KIRIも、なんか可愛いし、よくしゃべるからすぐに人気者になったのさ。

 でもKIRIはたまに、暗い顔をすることがあって。。え。歳?聞かなかったな。そういえば、話すことはなかなか含みがあって深いんだけど、見た目はなかなか若かったんだよな。

 

 二人は付き合っていた感じはしたんだけど。。でも、なんかKENJIのほうが遠慮している感じもあって。。。仲は良かったけど、ありゃ、まだ寝てなかったんじゃないかな。

 

 それで、そのKENJIっていうやつが難民キャンプのサッカークラブに入ったんだ。才能があったんだろうね。めきめき上手くなって、西地区トーナメントで難民クラブがトップになって、彼がMVPに選ばれた。

 

そっからはまっしぐらだった。

 

 全イタリア アマチュアサッカー選手権で外国人チームで初優勝。セリエAASローマにスカウトされ、その年のMVP。彼はセリエAで活躍した。

 

 契約金?覚えてないけど全額、日本の親父とお袋に送ったっとか言ってたな。

 

 あいつらは有名になっても、ずっと、うちの店に通ってくれてた。さすがに汚れてはいないけれど質素な服のままでね。KIRIはKENJIに買ってもらった新しい赤いコートを喜んで着てた。

とにかく常連が喜んでいたよ。

その頃、KENJIはうちの店の誇りだったんだ。

ほら、セリエAで活躍した伝説の女性ストライカーKUUYAも一緒に来てたりしたよ。

 あ、そう。あの写真。みんな気持ちよさそうに飲んでいるだろ。中央が彼だ。

 

 それが一番の思い出かって?

 

 

 

 違うんだ。そうじゃないんだ。

 

ーーーーー続くーーーーーー

 

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2012/12/04 20:12
燐音さん

なかなか工夫されたコメントありがとうございます。

続きコメントは分かっていましたが、一つ一つ独立にマジコメするのも面白いかなと。^^;

何にしろ、このような稚拙な文章への気合いと工夫のはいったコメント。
大変嬉しいです。
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2012/12/04 09:23
いえ、文章ではなく、物語の先がという意味です。

私のコメントも、実は、1~3と繋がったコメだったのです(わかるかって、思いますよね(笑

でも、そう考えると面白いでしょ?
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2012/12/02 19:55
くーやさん。

うふ??勝手ながらKUYAさん登場させちゃいました。
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2012/12/02 18:29
お??ww
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2012/12/01 19:13
やっぱりわかりづらいですよね。
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2012/12/01 02:32
最初はわからなかった・・・




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