待ち人
- カテゴリ:自作小説
- 2012/12/06 00:03:28
がりっ。
「・・・・・・まだこない」
儀式のよう規則ただしく木の板に並んだ傷。
その傷はすでに五十以上ある。
そしてそれを意味するのは、会えない想い人との日数。
前の来訪からずっとつけ続けている、いわば日記代わり。
自分はこの国の要、片や国の重鎮。
どちらがまだ動きやすいかは考えれば明白ともいえる。
約束も向うが取り付けてきた。
だが、この二カ月近く便りの一つも来ない。
目を閉じれば簡単に思い描ける、元気で純情な犬っころのような姿。
それに笑いがこみあげてくる。
「?」
外からの音に目線を向けると、地面が少しずつ変わり始めていた。
「雨か・・・・。」
小雨が徐々に地面を濡らしてく。
「・・・・・・」
ただその様子を見てから顔を伏せた。
「・・・・・・犬が、濡れ鼠になるなよ」
雨音が耳に心地よくなるころには、完全に夢の住人になっていた。
あなたはまだ来ない。
・・・・えー。
恋人を待つ人の心情をなんとはなしに書いてみました。
お粗末!