Nicotto Town


ぺんぎんうどん


となとな

サンタクロースの休日

パートナーのトナカイをご紹介♪
  • 名前:aki

    性別:おとこのこ

    称号:スターの
    トナカイくん

    レベル:17

    配達数:7,833個

  • 名前:megu

    性別:おんなのこ

    称号:世界一の
    おてんば

    レベル:25

    配達数:16,682個

  • 名前:haji

    性別:おとこのこ

    称号:トナカイ界の
    秀才

    レベル:19

    配達数:9,680個

続き


★☆



まだ夕暮れというには早い時間、
haji は先輩と歩きながら、見慣れたはずの町並みを、
眺めながら歩きます。

暗くなってゆくその道には、
いつもの haji には知らない世界がありました。

いつもは優しいお姉さんも、おじさんも、
せかせかとコートの襟を立てて、足早に過ぎ去ります。
まったく、トナカイの姿なんて見えていないようです。

「トナカイなんぞにかまってられる余裕なんて、ないってことさ。
 皆家に帰るのに一生懸命で、何かあっても、見知らぬふりをしてくれる時間さ。
 誰も居なくなって静まり返る真夜中より、
 このくらいざわめきが有る方が、やりやすいのさ」

先輩トナカイは言いました。

パン屋のドアの隅っこで、紙袋を広げて立っている女の子が居ます。
その店でパンを買った人が、切れ端を千切って袋に入れます。
女の子はぺこりと頭を下げて、少しだけ微笑みました。

「あの子は何をしているの?」

haji は聞きましたが、先輩は返事をくれません。
もくもくと、ただ通りを歩いてすぎます。
女の子の姿がどんどん遠くなります。

そして小さな公園の片隅に辿り着きました。

「haji 、お前はここで待っていろ」

先輩が言いました。

「ここなら四方が見渡しやすい。
 ドーベルマンの声が聞こえたり、姿が視えたらこれを落として知らせるんだ」

そう言って手渡されたのは、小さな魚の缶詰でした。

「途中で腹が減ったら食ってもいいぜ。
 でも俺はその缶が落ちる音を聞いたら、ここから居なくなるから
 お前もその後は家に帰るんだ。
 いいな?」

haji には先輩の言っている意味がわからなかったけれど、
自分が何をすればいいのかはわかります。

「うん」と目を大きく見開いて頷くと、
先輩は暗くなった公園のプロムナードを走って行きました。

しばらくすると、甲高い悲鳴が公園の奥から聞こえてきました。
だけど haji は動けません。
先輩がここで見張っていろと言ったからです。
それが仕事なのなら、動くわけにはいきません。

何があったのか確かめに行きたい。
けれど、ここで見張っているのが自分の仕事なのなら、それをやり遂げなくてはいけないのです。

更にしばらく経つと、公園の入り口から激しいうなり声と一緒に、
たくさんのドーベルマンが駆け込んできました。

haji は怖くて、手が震えます。
握りしめた魚の缶が、力強く握りしめたせいで、
ぺこんと音を立ててへこみます。
その音に一頭のドーベルマンが気づきました。

ドーペルマンが睨みつける、白い目の中に浮かんだ赤い筋が怖くて、
haji は思わず、先輩が「帰れ」と言ったにもかかわらす
彼が行った方向に駆け出してしまいました。

公園の中に建てられた小さな東屋。
そこに横たわる一人の女性。
先輩の姿はありません。
けれど、女性の胸元からあふれ出る赤い液体。

『先輩!』

haji は心の中で、叫びました。

「財布が抜かれているので
 通りすがりの窃盗でしょうか」

ドーベルマンを連れていた人間が、女性の荷物を確かめながら言います。

「だからって、刺す事はないだろう
 怨恨の線もあるからな。
 遺留品を持って帰って、ちゃんと調べよう」

そう言って、女性を調べていた数人の人間は
ドーベルマンを引き連れて帰って行きました。

haji は、よろめく四肢をどうにか動かしながら元の場所に戻ろうとします。
けれど上手に歩けなくて、公園の反対側の出口で、とうとう転んでしまいました。

あぁ、倒れる

そう思った瞬間に、体がふわりと軽くなって、haji はびっくり驚きました。

慌てて前脚をばたつかせていると、

「おい、オレだ。
 落ち着けよ」

聞きなれた声が聞こえます。

「先輩!」

けれど先輩は haji の心配をよそに、
立て続けに言いました。

「いいか?
 これからドーベルマンどもが探しにくる。
 俺はこっちに逃げるから。
 でもオマエは嘘をつかないで、何かを聞かれたら
 こっちに走って逃げたヤツが居るって言うんだ。
 なぁに、大丈夫さ。この先は川だからな。
 水で足跡も匂いも消せるさ」

「でも……」

haji が何かを言いかけましたが、
先輩はそれを睨みつけて止めました。

「こんなことはよくあることだ。
 まぁ、刺すつもりはなかったんだけどな。
 いいか? haji 俺たちの仕事は、これだ。
 持っているヤツから奪うんだ。
 そりゃ、時々は傷つけたり殺っちまったりもするさ。
 でもな、こうしないと、俺たちは欲しいものなんて
 ひとつも手に入れないまま死んでいくんだ」

だけど。

haji には解りません。

当然です。

haji は、あんなふうに人間に手をかけてまで、
手に入れた物の味を知らないのですから。

戸惑う haji に先輩が言いました。

「怖いか?」

haji はうなづくこともできません。

「いいさ。
 少しでも怖いと思ったら、もう二度とオレのところには来るな。
 そして今日はこのまま家に帰るんだ。
 オマエはまだ、手を汚していないからな。
 オレは右に逃げる。
 オマエは聞かれたら、そう答えるんだ。
 大丈夫だ。逃げられる自信があるから、言うんだ。
 いいか? haji
 オマエならもう、解るはずだ……」

一度美味しいものを食べたら、また食べたくなる。
一度楽しいゲームを持ったら、もっともっと遊びたくなる。
だけどすべての生き物が、繰り返し食べられる生活をできるわけではない。
そう。すべての子供達が、ゲームを楽しみ続けられるわけではない。
美味しいものを食べるには、ディナーの料金の他にレストランに行くための服が必要で、
ゲームをずっと楽しみたかったら、替えの電池を買い続けなければいけない。

美味しい思い、楽しい思いを、続けて味わいたいのなら、

「公務職になって稼ぐか、
 盗み続けるしかないんだ」

自分には永遠に就くことのできない、貴族たちの為の職業か、
罪もない人を傷つけて、その荷物を奪うのか。

haji は公園で先輩に傷つけられた女性を思い出しました。
流れ出る血。
痛いと泣き叫ぶ声。
血が流れ出た場所と、同じ場所が疼んで痛むようで、haji は思わず腹を抱えてうずくまってしまいました。


ぼくには、できない


だけど、お金は必要でした。
自分が新しいランドセルを買ってもらったのに、
弟はお古のランドセルを背負うのです。

そんな仔トナカイが、上流の仔トナカイたちからどういう扱いを受けて、
毎日どんな思いをしてきているのか。

「僕はたまたま長男だったから、新しい服とランドセルで目立たなかったけど、
 弟は……」


だけど aki は、自分の服やランドセルより、
たった一回かぎりのごちそうが良いと言います。

そして、母トナカイは、aki の為に新しい道具を買うより、
haji と aki 、二匹の為のセーターを編むのだという。

欲しいのは、寒さをしのぐためのセーターより、
aki が学校で上流のやつらからさげすまされないための、
服やランドセルなのに…………

「だから、僕が稼いでやるしかないんだよ」

だけど、紹介された仕事は、
人間から物を奪うことでした。

もしも僕があの女性を刺していたなら

もしも僕があの女性から奪った何かを持っていたなら

『おまえはまだ手を汚していない。
 汚しても美味い物を食いたいと思う気持ちがないのなら、逃げろ」

先輩が最後に言った言葉が、haji の頭でぐるぐると蘇ります。




だけど、それでも、
ぼくは、aki に、
お古を着てるからって、
辛い思いはさせたくないんだ……




続く?

アバター
2012/12/13 23:05
海外(西洋のどこか)とかは、中高生が、実際に罪を犯した当人から話を聞くとか
かなり、突っ込んだ教育をしてたのを見た様な・・・

個人的には、個人が個々に善悪を判断するこういう手法は大いにアリだと思います。
アバター
2012/12/13 05:31
(@w@;
なかなかビックリな展開になってきましたねー!
私ならhajiくんの頭をバカーンと殴ってやりたいですね。
目ぇさませー!
アバター
2012/12/12 02:33
こめんとくださったみなさまへ

あまり良心的ではない展開になるので、
無理にお読みくだされなくてもいいんですよ^^
でもコメント拒否は独りよがりな否定になるので、
いたしませんね。
とりあえず書き終わったらまた「酒話」から
楽しく続けますね^^
アバター
2012/12/11 22:50
うおお…
なんかドキドキしてきた!
こないだの終わりの部分からしてやばそうなお仕事だろうとは思ったけど
どうなっちゃうんだこのあと!!(´;ω;`)

…って、あれ?
トナカイってレベル20以上になるんですか!
知らなかった~!!
アバター
2012/12/11 21:02
童話→社会階層問題→殺人事件とめまぐるしく変わる物語の運命はいかにw
アバター
2012/12/11 18:40
流血シーン有とは・・・(T T)
トナカイのかわいい画像が見られません~;
アバター
2012/12/11 18:14
人生のある意味縮図なのかもしれないですね・・・

ただ、(他人から)奪うということは

いつの日か、自分も(大切なものを)奪われる・・・
そう、命あるもの、いつか必ず死がやってくることのように。

必要なのは「覚悟」なのかもしれませんね?
アバター
2012/12/11 15:35
・・・・・思いがけない展開。

ううう・・・・(;_:)
アバター
2012/12/11 12:15
なるほどぉ~・・・・haji君ショックだよねぇ~・・・・・持ってる人から取るって・・・・
うん。><
アバター
2012/12/11 07:54
なんだか、絵本というよりは
刑事もののノリにみえてきました
トナカイデカ… 



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