能面の不思議
- カテゴリ:日記
- 2012/12/16 00:04:02
Podcast「ヴォイニッチの科学書」 2012/12/15 配信分で、このような話がありました。
(配信資料から抜粋・要約)
無表情の代名詞として「能面のような」という言葉があります。
が、実際に上演される能の舞台では、形状が変化しないはずの能面が様々な表情をしているように見えるそうです。
それを利用した、能面を使った表情認知メカニズムの研究の話。
能の世界では、「喜び」を表現する時は能面をわずかに上に傾かせ、「悲しみ」の場合は能面をわずかに下に傾ける動作をします。
ところが、上向き・下向きの能面だけを見せて、どんな表情に見えるか聞くと、上向きは「悲しみ」、下向きは「喜び」の表情に見えるという回答が多いそうです。
演じる側とは逆。
が、能では、喜び・悲しみの表現は正しく観客に伝わっています。
一体、それはなぜか?
研究者は、さらに2つの実験を行いました。
ひとつめは、コンピュータ上で能面の顔のパーツを自由に変形させられるソフトを用いて、実験協力者に自分が考える喜び・悲しみの表情を作成してもらい、一方で、上向き・下向きの能面を見せて、それと同じような表情を模倣してもらい、それらを比較しました。
実験協力者が考える「喜び」「悲しみ」の表情と、能のルールにのっとった実験協力者流の「喜び」「悲しみ」の表情の比較を行ったわけです。
すると、面白い事が判明。
上向き能面では、眉・口の特徴は悲しみの表情と共通し、目は喜びの表情と共通していました。
そして、下向き能面では、きれいに逆転。
つまり、上向き・下向きの能面は眉・目・口がそれぞれ異なる表情を現しているそうです。
もう一つは上向き・下向きの能面の眉・目・口をそれぞれモンタージュ写真のように組み合わせた能面の写真を見せて、「喜び」「悲しみ」のどちらに見えるか分類してもらう実験。
その結果は、上向き・下向きの能面の口を持つ顔をそれぞれ「喜び」「悲しみ」とする傾向が見られました。
すなわち、眉・目・口がそれぞれ異なる表情を現している場合、口が表情認知に最も重要な部分である、ということになります。
ところで、能面が下を向くと口角があがります。
口角があがった顔というのは一般的には笑顔のように見えます。
が、能の世界では、下を向いた能面は「悲しみ」を現しています。
矛盾!?
ただ、これは能が単に視覚・聴覚などに訴えかけているというだけでなく、その中に心理学的な「仕掛け」「揺さぶり」を込めることで、より微妙な感情表現を施しているのではないか、とも考えられます。
実際、演劇の世界では、悲しいときに笑う、という演出をする方が効果的な場合もあるそうです。
能面がミステリアスに見えるのも、この辺りに理由があるのかもしれません。
能面を完成させた世阿弥が、ここまで計算していたのでしょうか。
それとも、長い年月の間、経験則を積み上げた結果だったのでしょうか。
興味は尽きません。
それは「凝り固まっている」わけではなく、無駄な動作を省いた効果的な体の動かし方を追求した結果、そうなっていると聞いた事があります。
それより遥かに長い歴史を持つ伝統芸能は、どんな知恵が詰まっているか計り知れないですね。
長い年月をかけて、様々な仕掛けが作り込んでありますものね。
そのソフトウェアを解明すると、
人間について、多くの洞察が得られるかも・・。
世阿弥、天才の名にふさわしい人です~。
感じさせるものだとばかり思ってましたので、ちょっと
新鮮でした。
以前 文化センターに 能面が飾られて
説明がついていました・・・