Nicotto Town



黒猫目日記番外9

暮れに里より幾ばくかの仕送りがあった。
姫に使えるこの身を憂いて苦しい中、兄者も無理をして都合して下されたのであろうと感涙にむせた。

正月に里に戻って見れば屋敷の普請が進んでおった。なんでも秋口の嵐で屋根が酷く傷んだので金に成りそうな物を売って修繕をすることになったそうな。
はて、山里の田舎家故にさほど金目の物もないはず、まさか家宝を手放したのではあるまいかと心配して聞いたががそうではないと兄者は笑って答えられた。
獲りためた毛皮や冬の間の手遊びに作った細工物や織物などを売ったのだとか。

ちょっと目を泳がしながら
『実は、お前の集めていた石も少し譲ってもらったのだが、いや、全部ではないぞほんの少しだけ綺麗な物を二つ三ついや五つぐらいかな。うん、実際毛皮よりも高値で売れたぞ。紫水晶とか翡翠とかいってな。屋根の修理代は余裕で出来た。』

て、え?
売ったの?あれを?其れがしが山で拾って集めていた綺麗な石を?

『お爺様の庵もちょっと手を入れさせてもらってな。お爺様もクロは大義者じゃと喜んで居られたぞ、うん それでお前にも仕送りをしておけと言われてな』

う、そ、そうかお爺様は喜んでおられたか・・・・・・そうか・・・・・ならば仕方がない。
しかし兄者、出来れば今度其れがしの物に手を付けるときは予め断ってからにして下され。

結構大事にしてたのでござるよ(しくしく)





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