Nicotto Town


私様のブログ


喪失(R18) 後篇

※今から約15年前の私様の作品です。
 古いです。
 そして快楽殺人者のお話です。
 R18ひゃっほい。
 えっちぃの見たいって人は、閲覧を止めておきましょう
 絶対、詐欺だって怒ります
 当時、友人でさえ『ない」と断言した、私様の問題作です。
 今は当時より理解があるのではと思いUPしてみましたが、読む読まないは自己責任でお願い致します。
ぶっちゃけ、前篇より品がなくて、人によっては嫌悪感しか抱けないと思います。
 当時20代前半ピチピチです。
 そのままの原文をあげているのでつたいな部分もあるかと思いますがご了承ください。




―――なんて意地の悪い男。

わたしの中で絶望が広がった。

何故あの時、去っていくままに彼を見送ってしまったのか?自分自身の事なのに理解出来なかった。

どうして手放してしまったのか解らなかった。

彼が欲しいと思った。

彼への愛で満たされたいと欲した。

―――どこにいるの?

どうしても彼に会いたかった。

彼の全てを手に入れて、自分の全てを奪って欲しかった。

彼への思いさえあれば、もう永遠だと信じていた。

袖の中に隠したあの時のナイフが冷たく肌を撫ぜる。

彼が彼女に残した唯一の約束(モノ)だ。

―――他に代わりなどいらない・・・

彼への永遠を手に入れて、自分は全てに満たされる。

―――あなたへの思いだけで、わたしはきっと何もいらない

 

あの時手放したばかりに、彼女は彷徨っていた。

気が狂いそうなほどの愛しさを抱いて、彷徨い続けていた。

彼を手に入れられないかも知れない恐怖が、断続的に彼女を蝕み絶望が突き上げる。

こんなにも愛しているのに、どうしていなくなってしまったのだと彼を罵り、名前も知らなかったその男を思い、叫び、探し続けた。

これほど恋焦がれた事など今までなかった。

―――こんなにあなたが欲しいのに、どうしてあなたはわたしのモノになってくれないの?

毎日、男を探して回った。

目についた賞金首を誘っても、どんな男を殺しても満たされない。

癒されない。

胸を焦がす慕情だけが、日増しに濃くなってゆくばかりだった。

他の男達の死に顔に、彼の面差しが何度も重なっては消えていく。

―――殺したいのは、あなただけ・・・

引き出した内臓の甘い温もりも、彼のあの一筋の温もりには遠く及ばない。

―――あなたの首を切り落として、この胸の中で永遠に抱き締めたい。

彼をこの手で殺した瞬間に訪れる快楽を夢見て、その腐り果ててゆくキレイな顔を胸に描いて、彼女は毎晩股座を濡らしながら彼を探し続けた。

『なのに―――見つからない』

 

街のありとあらゆる場所を探して、彼を訪ね歩いて―――それでも見つからなかった。

彼のいない絶望感に幾度となく苛まれ、生きる気力までもが殺ぎ落とされていった。

―――あなたが欲しいだけなのに・・・

このままでは、恋焦がれて死んでしまう。

―――あなたをわたしのモノに出来ないまま、わたしが死んでしまう

 

「久しぶりだね、逢いたかった?」

 

探し尽して、もう探す場所さえ見つからなくなった時、ゴミ箱の底まで漁って探った男の姿が突然、何の前触れもなく彼女の前に現れた。

暗い路地に埋もれそうな真っ黒な喪服のようなコートを纏い、裾を蝶のようにひらめかせて立っている。

 

「あぁ・・・」

涙が零れそうだった。

あんなにも恋焦がれていた恋人が目の前(そこ)にいる。

真っ黒な羽を広げた美しい鳳蝶(アゲハ)は、あの時の美しい頬笑みのままに、彼女に向ってゆったりと微笑みかけていた。

輝かんばかりの笑顔で、美しく、ただ美しく微笑む愛しい男(ヒト)

諦めるにも諦めきれなかった思いが再び溢れ出してくる。

もう―――一瞬さえ長い

今すぐ――。

夢にまで恋焦がれた男が彼女にその腕を伸ばした。

駆け寄る彼女の指先には、約束のナイフが絡んでいる。

―――もうすぐ、あなたの首にわたしが届く

 

「あっ・・・」

男の手が意地悪く彼女の腕を掴んで引き寄せる。

まるで焦らすかのように、彼の喉元に引き寄せられたナイフが、薄暗い路地裏で鈍く光りを放った。

 

「私もね、君に凄く逢いたかったんだ」

薄い唇から零れる甘いヴァニラの香りが、彼女の頬を撫で上げる。

そのあまりにも甘美な囁きに、彼女は聞き惚れるように瞼を閉ざした。

 

―――あぁ・・・そうだったのか・・・

彼のポケットの中に真実があった。

引き寄せられた時に押しつけられた硬い鉛の感触に間違いはないだろう。

賞金稼ぎでありながら、逆に自分の首に賞金が賭けられる事は、そう珍しい事でもない。

彼は、何もかも自分と同類だったのだ。

何もかも同じだからこそ、彼は待っていたのだ。

自分が恋狂い、賞金首(自分の恋人)になる時を・・・。

そして、自分もまた始めから気付いていたのかもしれない。

本能が、彼も同類なのだと悟っていたのかもしれない。

だから殺さなかった。

この時に―――選ぶために。

 

―――わたしは愛されていた・・・今までにない予感は『これ』だったんだ・・・

そして、彼女は『縛られる事』よりも『縛る事』を選んだ。

それが、どれだけ深い愛なのか理解していたから―――。

硬く冷たい塊が額の辺りで「カチリッ」と小さな音を跳ね上げる。

 

「君に私を捧げよう」

耳元で囁かれた甘い言葉に、空袋を叩いたような軽い音が重なった。

「これで私は、アナタのモノだ」

そう、彼女は言ったのだ。

出会ったときに、彼が欲しいと―――

薄暗くなっていく視界の中で、男と女の頬笑みが交わる。

「永遠に愛しているよ―――」

男の囁きに彼女の愛が、彼の深い愛を全てで包んだ。

『喪失』する事でしか齎されない、深い深い愛を―――。

  

『腕に抱いた愛だけが愛じゃない・・・

               もっと深くアナタが欲しい・・・』


とある方の小説を読んで、過去の黒歴史を引っ張り出してきました。
前置きにもありますが、問題のある作品ですので不快感を抱かれた方もいるかも知れませんが、私様サイショに注意を呼び掛けてますからね?
怒っちゃイヤですよ?(T_T)

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2013/01/09 16:29
ピエロさん、コメントありがとうがとうございました。

実を言うとちゃんと形にした事のあるのは2本のみで、これは、その2本目となります。
書けと言われたから書いたのに、周囲にドン引きされ「これはないわ」と言われて凹んだ記憶があったので、感想大変嬉しかったです。

ちなみにピエロさんなら、もう気付いていると思いますが、冒頭の詩は男性です。
女性と男性の名前を考えるのが面倒くさくて、それぞれ相手の呼び方が漢字だったり、カタカナだったり、ひらがなだったりと違っているのです。

柑橘系はさわやかで、リフレッシュしたい時に良いですよね♪
最後のリボルバー・・・・気になりますね!
知らない曲なのでチェックしてみよう!
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2013/01/09 15:44
上手い・・・・・というか巧い(°▽°;ノ)ノ
結末は前編から予想出来ましたが、相変わらず字の表現が巧みですっ♪

ちょっと主人公の趣旨がちがいますが、「最後のリボルバー」という曲に似てます^^
殺し屋が恋してしまったのは、殺すターゲットだった、という悲しい話の歌なのですが雰囲気が似ていて思い出しました。

では、僕も次は「狂った」お話を書かせていただきます★ww


私はちなみに香水は柑橘系が好きですww
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2013/01/09 05:23
補足
男からヴァニラの香りがするのは、甘味大魔王と言う裏設定があったからです。
ちなみにヴァニラ系の香水は、私様キライです。
香水は爽やかグリーン、シトラス、ムスク系だろう!




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