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アルジェリア政府が急速に軍事行動を行った理由1

アルジェリア人質事件の顛末

1月16日、アルジェリアの南部イナメナスで、英国企業ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)の石油関連施設で日本人はじめ41名の外国人を含む600名以上が、「イスラーム・マグレブのアル・カイダ(AQIM)」元司令官モフタール・ベルモフタール率いる「覆面旅団」("Masked Brigade")メンバーによって人質になる事件が発生しました。実行犯らはアルジェリアの隣国、マリで11日から実施されているフランス軍の軍事行動を非難し、その即時停止を求めました。

日本時間の17日深夜、アルジェリア軍は実行犯らとの交渉が決裂したとして、突入による救出作戦に踏み切りました。この現段階で確定的なことは言えませんが、この戦闘によってロイターは人質のうち日本人2名を含む30名が死亡したと伝えています。

日本政府は、やはり人質のなかに自国民をもつ英国政府などと協議し、アルジェリア政府を通じた働きかけが適切という判断に至っていました。また、安倍首相は人命尊重を優先すべきという立場を堅持し、アルジェリア政府に対しても、慎重な対応を求めていました。実際にアルジェリア軍の攻撃が開始された後は、アルジェリアのセラル首相に対して軍事行動の停止を求めましたが、「危険なテロ集団であり、これが最善の方法だ」と断られたと伝えられています。
「テロリストには問答無用で対処する」のが一般的か

一般的に、米国をはじめ、「テロリストとは交渉しない」というスタンスをとる国が多いことは確かです。無関係の市民を巻き込むなど、暴力で要求を通そうとする相手と交渉してしまえば、それだけで相手を対等の存在と位置付けることになります。それは、相手の不当性を容認することにも繋がります。まして、それによって国民の代表たる政府の決定が覆されれば、国家、民主主義、憲法の存在意義が損なわれることにもなります。ゆえに、特に当該国政府はテロリストとの交渉に否定的になりがちで、被害者が自国民だけでない場合でも、ほぼ同様です。1996年12月に発生した、ペルーの日本大使公邸占拠事件のときも、日本政府が慎重な対応を求めたこともあり、さらに同様の建築物を使った突入訓練を行うなど入念に準備したため、ペルー警察の部隊による実際の突入は1997年4月で、約4ヶ月後になりましたが、ペルー政府は早い段階から武力行使による解決を図っていました(このときも、ペルー政府から日本政府への事前通告はなかった)。

とはいえ、諸外国でも「何がなんでも突入」という選択が優先されているわけではありません。歴史に名高い、1979年11月にイランで発生した「米国大使館占拠事件」の際、米国は当初軍事解決を模索しましたが、それが不調に終わったこともあり、最終的には第三国の仲介のもとでの交渉により、444日後に人質は解放されました。この場合、大使館占拠の実行犯らが容認していた、イスラーム革命で亡命した国王の引き渡しが、1980年7月に当の国王が亡命先のエジプトで病死したことによって、現実的に不可能になったことが、交渉を促すという効果を生んだことは確かです。しかし、少なくとも、米国が軍事的解決の一本槍でなかったこともまた、確かでしょう。

また、今日ではテロ対策とはいえ、犠牲者を出さないようにすることが求められます。2002年10月にモスクワで発生した、チェチェン武装勢力による劇場占拠事件では、事件発生から3日後に特殊部隊スペツナズが神経ガスを使用したうえで実行犯らと銃撃戦を展開し、結果的に窒息により129名の人質が死亡するなど多くの犠牲者を出したことには、人命の軽視であるとして欧米諸国から強く非難されました。

つまり、多くの国では人質事件への対応として軍事力の行使が一般的であるとしても、水面下での交渉を併用することも珍しくなく、さらに人質の生命や安全を確保することが大前提と捉えられていることもまた確かです。

以上の観点からすれば、今回の突入の決定は、事件発生から丸2日を待たずに行われたもので、交渉にさして時間をかけたとも思えません。また、アルジェリア軍が人質の乗った車輌を攻撃したという報道もあり、その真偽は定かでないものの、実際に人質からも多くの犠牲者を出したことは確かなようです。さらに、慎重な対応を求めていた関係国に事前通告がなかったことからも、アルジェリア政府が事件解決を優先した印象は拭えません。やはり自国民から犠牲者を出した英国政府は、アルジェリア政府を強く非難しています。
アルジェリア社会の亀裂

アルジェリア政府を、ここまで性急に実力行使に向かわせた要因は、何だったのか。現段階では推測の域を出ませんし、後知恵になることは確かですが、今後発生し得る同様の事態に備えるためにも、考えておく必要があるでしょう。


http://bylines.news.yahoo.co.jp/mutsujishoji/20130119-00023139/


 

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