残り香
- カテゴリ:小説/詩
- 2013/03/09 05:35:08
あなたの部屋の
鍵をあけると
香ったことのない
甘い香り
私は香水は付けない
彼も香水は付けない
この香りは何
誰かの残り香だろうか
今日が初めてじゃない
何回かあったこの香り
通り越せない
何かがある
「来てたんだ」
笑顔で入って来るあなた
甘い香りも気づかず
「いつ来たんだい?」
暖かな冬の日
窓を開け放つ
空気が流れ
甘い香りを消していく
「今日は暖かいね」
気付かなかったように
私は言う
「今夜は何がいい?」
信じたいけど
信じたいけど
香りのもとは
誰のものなの
信じたいけど
信じたいけど
あなたの笑顔は
誰に向けるの
信じたいけど
信じたいけど
ポケットの中で
鍵を握りしめる