幕末ガンダム伝
- カテゴリ:日記
- 2013/03/09 20:20:04
ガンダム・センチネル ALICEの懺悔
高橋昌也
大日本絵画
地球連邦とジオン公国の戦争を描いたのが「ガンダム」(ファーストガンダム、と呼ばれる)
そして、その後、ジオン公国の残党狩りを目的に結成されたティターンズ、そのティターンズと対立するエゥーゴとの紛争を描いたのが「Zガンダム」
本書は、その「Zガンダム」の最後の戦いの時期から始まった反乱事件を描いたもの。
ティターンズ寄りの地球至上主義の青年将校達が「ニューディサイズ」を名乗り、反乱を起こし、小惑星基地ペズンに立て篭もる。
その反乱部隊を討伐するために派遣されたのがα任務部隊。
両者の戦いが描かれるのだが、α任務部隊の増援として派遣された艦隊がまるごと「ニューディサイズ」側に寝返り、また月面都市エアーズも街ぐるみで「ニューディサイズ」に加担。
また、ジオン公国の残党「ネオ・ジオン」の暗躍もあり、状況は混迷を深めていく。
ガンダムの舞台設定を使ってはいるが、戊辰戦争が下敷き、となっている。
「ニューディサイズ」は新撰組にあたり、その主要メンバーも新撰組の隊士の名前が由来となっている。
近藤勇 →ブレイブ・コッド
土方歳三→トッシュ・クレイ
沖田総司→ジョッシュ・オフショー
斉藤一 →ファスト・サイド
「ニューディサイズ」に寝返る艦隊の司令官ブライアン・エイノーは”榎本武揚”がその名の元になっている。
さらに月面都市エアーズは「会津」。
この辺りの事は、巻末にある著者とメカデザイナーの「対談」で言及されている。
またネットで検索しても、その情報は、すぐに出てくる。
ちなみに、ジョッシュ・オフショーだけ最後まで、どのように「変換」したのか分からなかったので、「カンニング」でようやく解決した。
元々の企画は「ガンダム」のスポンサー、バンダイから模型雑誌モデルグラフィックスへ発注されたもの。
そのため登場するモビルスーツ(MS)のデザインは文句なしに素晴らしいが、小説パートは少々、貧弱(だったらしい)
貧弱だった小説パートを増補・改訂したのが本書だが、それでも(小説内の)事実を追いかけるのが主で、登場人物で共感できる人はあまりいない。
主人公からして主役MSに乗っている、という以外、あまり存在感がない。
むしろ「ニューディサイズ」側のトップ3の方が詳しく描かれている。
そのため、個人的には本当の主人公は、トッシュ・クレイとジョッシュ・オフショーだと思っている。
ちなみにジョッシュ・オフショーは、数少ない共感できた登場人物だった。
(それもクライマックスになってから、ようやく)
元々、模型を魅せる企画なので、魅力的な登場人物があまりいない、のは仕方ないのかもしれない。
(巻末の対談で、著者もそのことは認めてもいる)
ガンダム、というと反射的に「ニュータイプ」という言葉が連想される世代だが、本書では「ニュータイプ」という存在は登場しない。
その代わり登場するのが「ALICE」
「ALICE」は主役MSのSガンダムに搭載されているコンピュータ。
「人工知能」というレベルではなく、「人工知性」もしくは「ある意味、人間」を目指したもの。
物語当初は「ALICE」は、基礎学習が完了しただけの状態。
軍の技術部は実戦を通して「人間」(の矛盾)を学ばせようとしていたのだ。
ただ、その学びの過程があまり繋がっていない、というか飛躍があるような印象も受けた。
コンピュータだから、凡人の思考速度が追いつかなかっただけだろうか。
「未来の二つの顔」でもそうでしたが、本書でもALICEは最後、人間より理性的なものになってました。
(著者曰わく、菩薩。個人的にはゴッド・マザーという感じ)
人間には、コンピューター(というか人工知能)に対しては実は共通認識があるのかもしれませんね。
それだけ、根強い固定ファンが世界中にいるのでしょうね。
人工知能(知性?)を実践の場で、体験学習させようとするといえば、
SF作家ホーガンの作品「未来の二つの顔」を思い出しますわ。
あの作品に出て来る人工知能は、人間というモノを理解したようだけど。