「宇宙人と扇風機」
- カテゴリ:自作小説
- 2009/07/30 15:47:12
これは、あたしが宇宙人と遭遇した時のお話。
よく小さな子供ってさ、夏に暑さ対策として扇風機が姿を現わすようになると、
それに向かって「ああああ」なんて、適当に声を出して「宇宙人みたーい」って笑い合うよね。
八年前の夏のその日も、私は弟の竜弥(りゅうや)とそうやって、ふざけてたの。注意する母が外出中なのを良い事に。
おばあちゃんの家の、縁側に面した広々とした居間でだった。風鈴が、チリン、と涼しげな音を立てていたのを覚えてる。
「あああああ~~」
って竜弥が言って、
「ワレワレは、宇宙人だ~」
なんてあたしがのって。意味もなく二人でげらげら大笑いしてた。一体、何が楽しかったんだろうね。今ならはっきりと思うよ。
そうしたらね、後ろで、
「助ケを呼ンだのハ、お前たチ? 」
それこそ、SF映画なんかで耳にする宇宙人みたいな声で。ていうか、「みたいな」じゃない。正真正銘本物の宇宙人が、あたしたちの後ろに少しの間を取って居た。
背は、ちょうど小一の竜弥と同じくらい。姿は、漫画とかに出てくる結構ベタな頭でっかちで目が異様に大きくて体は銀色、ってパターン。
すぐに宇宙人と認識した竜弥は、恐れる事無く
「本物っ!? 」
と、駆け寄った。
あたしはと言うと、怖くて近づけない。だって、宇宙人は地球人を攫って何か色々な実験をする野蛮な生物だと思っていたから。
夏なのに、首筋にひやっとした汗が伝う。
「おかしいナ。仲間の助ケ声が、聞コえたンだガ……」
ペタペタと体中を触る竜弥を無視して、宇宙人はフム、と考え込む(ように見えた)
視線を右、左、とゆっくり動かし辺りを観察する。そして、私の後ろに視線を止めた。
「あァ、もシかして、これガ原因? 」
タタタタタター、なんて小走りでこちらに向かってくる宇宙人に、あたしは「ヒッ! 」と声を漏らした。愉快な対象物が離れた事を名残惜しそうに、竜弥がこちらを見る。その視線に、必死にあたしは「助けてくれ! 」という視線を送り返した。が、その私の救助要請サインに、竜弥はただ首を傾げるだけで、あの時ほど弟に怒りが湧いた事は無い。
その間に、宇宙人はあたしの後ろにある扇風機を興味深そうに眺める。
「ほゥ。どウやらこの機械に向ケて声を発信させルと、吾々に近イ周波数の声ガ出るのだナ。星へ帰ったラ、こノ問題の解決ヲ次の課題にシよウ」
遠慮無く扇風機に手を触れる宇宙人。その手が触れたところが、テラテラと気持ち悪く光る。
「ヨシ。今スぐ星に連絡しヨう」
そう言うや否や、宇宙人は姿を消した。いきなり青い発行体に包まれたと思ったら、本当にそれっきり。光の粒子の眩しさに、思わず手を顔の前に翳す。その時、上げた腕がちょうど隣の扇風機に当たった。
倒れた扇風機以外、宇宙人が来る前と何ら変わりのない風景と落ち着きさに戻った頃、母の「ただいまー」という、至極安心する声が聞こえた。
「お帰り! 」
とにかくこの空間から離れたかったあたしは、素っ飛んで母のお出迎えに向かった。
竜弥も、それに続いた。
……。
これが、八年前あたしが体験した奇妙な出来事。
これを聴いた貴方は、夏の暑さでやられた二人が見た幻、と言うかもしれない。
勿論、あたしだって最初はそう思った。子供心ながらにも。
でも、あの日あたしが倒してしまい、壊れたっきり物置で眠っている動かない扇風機を思い出す度、あたしは本物の宇宙人が目の前に現れたんだ、って信じてる。
本当ですかっ!?
ありがとうございます♪
また話書くんですか?
そやったらまた読みに来まっす!!!
コメありがとうございます^^
扇風機でこうやるのは、もう子どもの恒例行事だと思います。
というか夏の風物詩ではないのかと。
アホな事ばかり考える自分が作れた爆弾です。
うちもやってた笑
わたしもやってました。
たぶん日本全国の子供たちが やったとおもいます(笑。
懐かしいですねー
でも まさかほんものの宇宙人がくるとは・・・
すごい発想力です!