Nicotto Town



囚われないために

終末のラフター
 田辺イエロウ
  小学館


舞台は中世のような世界。
ある日、突然、101の口を持つ「白い悪魔」(というより異形の怪物)が現れ、世界のほとんどを喰らい尽くす。
密かに備え続けた者達が白い悪魔に戦いを挑み、7日間の死闘の末、白い悪魔は体を切り刻まれ滅んだ。
・・・かに思われた。

バラバラになった「白い悪魔」の破片は人に取り憑いたのだ。
そして、取り憑かれた者は不死者となり、周囲の人々から「悪魔」と忌み嫌われた・・・。

「白い悪魔」との戦いから25年後。
とある街に頬に「悪魔の口」(「白い悪魔」に取り憑かれた者に現れる烙印)を持つ少年(主人公:ルカ)と、その妹(ハル)がやってくる。

その街は、すでに別の「悪魔の口」を持つ男(ゴドー)に脅されていたため、住民はざわめく。
「なぜ、この街に2人の”悪魔”が・・・」

だが、街に現れた2人目の「悪魔」であるルカは、町長にこう語る。
「取引をしよう。
自分は同族狩りが専門の”悪魔喰い”
街を脅す”悪魔”を葬る代わりに報酬をもらうが、その後、街を去る。
悪くない話だろう?」


町長をはじめとする街の人々は、その申し出に戸惑いながらも「契約」を交わし、ルカと街を脅す「悪魔」との戦いが始まる・・・。

ゴドーとの戦いは、いきなり始まるわけではなく、最初はゴドーの情報を得るため、聞き込みから始まる。(地味な感じではあるが・・・)
「敵を知るため」であると同時に「武器」を手に入れるため。
ルカ曰く「悪魔が本当に突かれて痛い所は、心にあんのさ」

相手は不死者であるため、実のところ、ナイフなどの武器は、あまり役に立たないのだ。

冒頭の町長との話や「聞き込み」の過程であきらかになるが、街の人々も一方的な被害者ではない。
むしろ、原因を作ったのは街の住民の方。

「悪魔の口」を持つ者を怖れるあまり、街の住民が先にゴドーを刺して殺してしまうのだ。
が、ゴドーは不死者。
生き返り、また街に戻ってくるが、恐怖に囚われた住民は、またゴドーを殺す。
その後、再びゴドーを殺すが、また生き返り、戻ってくる。
そして、殺されるたびにゴドーは街の住民への憎しみをつのらせてゆく。

ゴドーは最初は「不死者」(というより「死ねない者」という表現の方が正しい感じがする)でしかなく、ひっそりと暮らす事を望んでいたが、そんなゴドーを「悪魔」にしたのは、街の住民自身だったのだ。
何度も街に戻ってきたのは、憎しみからではなく、その街がゴドーの故郷だったから。

恐怖に囚われ、冷静な思考ができなくなった街の住民。
街の住民への憎しみに囚われ「悪魔」となったゴドー。

ルカがゴドーに言い放ったセリフ
「(一線を越えて)戻れねェ奴が最後にすがるのが、”思い出”たァ、笑えるね」
が印象に残る。

街の関係者の中では、唯一、教会の神父ラゲルだけが、「悪魔の口」を持つ者であっても「不死者」であるうちは、脅威となり得ない事を認識していた。

教団の教えでは「人(「不死者」を含めて)を愛せ」と説くが、その教団の非公式な報告の中では、「不死者」は互いに喰い合い、一つになり、「白い悪魔」を復活させる怖れがある、と言っている。
「白い悪魔」を直接、見た事があり、その後、何年も口がきけなくなるほどの恐怖を覚えたラゲルは、教団の教えと、脅威となる可能性を持つ(かもしれない)「不死者」への態度をどうすべきかで揺れ動く。

街で「不死者」「悪魔」の違いを説くが、自身「迷い」に囚われているため、その言葉は街の住民には届かない。

ところで、ルカが”悪魔喰い”を生業としたのは「囚われないため」
迫害を受け、引き籠っても「憎しみ」に囚われるだけ。
「悪魔の口」の謎に近付くには、自ら動いて「悪魔」に近付くしかないから。

全体として暗いトーンで、登場人物のうち心からの笑顔を見せるのは、ルカと妹のハルの2人だけ。
(ルカは最後の最後で笑顔を見せるだけだが)

囚われず自由である(少なくともそれを目指す)からこそ大口をあけて笑う事ができるのだろう。
タイトルの「ラフター(Laughter)」(大声で笑う)の意味が最後になって分かった。

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2013/03/24 16:25
「ダークファンタジー」という点では、「ダレンシャン」と同じですね。
(「ダレンシャン」はマンガ化された方しか読んでませんが・・・)
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2013/03/23 05:39
面白そうな内容ですね。。。。
マンガですか。。モシカシタラ小説のように
字で書いてあったほうが世界観が想像できて良いのかもしれませんね♥

すこーしダレンシャンを思い出しながら読ませていただきました^^
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2013/03/21 20:59
>ミツマタ(化猫)さん
興味があったら、本(マンガですが)の方も読んでみてください。

>カトリーヌさん
書き忘れてましたが、今回はマンガの感想です。
短期集中連載、という事だったので、「白い悪魔」そのものをはじめとして、謎のまま、という点も多かったりします。

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2013/03/21 01:28
不思議な世界観のお話なんですね~。
図書館で探して読んでみます~。
不死者の扱いが、鍵となるような感じも。。。。

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2013/03/20 22:10
お気に入りに入れさせて頂いていた者です。

最後にいいのを読ませていただきました♪
有難うございます^^



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