式飼い。【2】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/05/26 17:56:55
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物語の主人公は、大人しくて聡明で、適度に勇気があるリーダーみたいなカリスマ性を持っているべきなのかもしれない。
でも残念ながら私はそういうタイプじゃない。
嫌なことからは逃げたいし、臆病だし、面倒くさがりなうえにちっとも賢くなんて無い。カリスマ性なんて皆無だ。持ちたいとも、別に思わない。
だからといって嫌われたり、勝手に呪われたり、独りになるのは嫌いだ。一人は好きだけど。
「あんたを許さない。一生かけて呪ってやる。殺してやる」
たとえそんな言葉を、どんなに激しい憎悪とともにぶつけられても。
私は揺らがない。
そうでもしないと生きていける気がしない。
鏡を見るのが怖いんだ。
退魔を行い、白と黒だけで創られた裏の世界のようなものに行くたびに、日に日に身体中に刻まれていく幾何学模様に犯されていくのが。
それが全身を覆い尽くした時、私たちは死ぬ。
けれど例外も居る。
「鬼子」と呼ばれる、成長しない人々のことだ。
祖父、または祖母から、正しく一族に伝わる「式」と武器を継承できなかった子供は「鬼子」となり不死という名の欠陥を抱えていきていかねばならない。
それは拷問だ。永遠に続く罰だ。
死ねないことほど恐ろしいことなど無い。
私は正しく継承した。
父と母も、祖父と祖母も元気だからだ。
それは幸せなこと。噛み締めなければならない、大切なこと。
……そうだ、私は恵まれている。幸せ者なのだ。
たとえ誰かに、死ぬほど恨まれていても。
*
死ぬのは怖いと人並みに思い、馬鹿の一つ覚えのように連呼してきた。
「――刀(かたな)」
それが少女の名前。
永遠に歳を追わない罪を負った異端者。
――鬼子。
「殺してやる」
私には永遠に生きなければならない苦しみなんて理解できない。
それこそ1000年かかったって到底理解できないだろう。
彼女の祖父と祖母を亡き者にしたのは私じゃないけれど、彼女にとっては私の一族、引いては「影」の式を継承した者たち全員が憎しみの対象なのだ。
果てない恨み、つらみ、憎しみは、たとえ今ここで私が死のうと永遠に消えることも癒えることも無い。
「影」の式そのものが、この世から永遠になくならない限り。
けれども彼女は続けなくてはならない。
老いることも死ぬことも、何もせず廃人になるのも嫌ならば。
「断る」
一生他人を呪って生きていく、目の前の少女は、10年前にそう私に誓ったのだ。
*
「影」と「光」は対を為すモノだ。
光があれば影が出来る、単純にそういうことだ。
「光」の式を使いし者は、死者に対し敬意を払い魂を浄化する。
「払魔(ふつま)」と呼ばれ、死者に対し何の敬意も払わずに強引に払おうとする「影」の式の使い手とは対極にある存在だ。
こちらは「退魔(たいま)」と呼ばれ、「光」の式を使う一族の者たちはこれを毛嫌いしている。
逆に「影」の式を使う一族の者たちは「払魔」を毛嫌いしている。死者に敬意など必要ないという考えだ。
どちらの考えも元を辿れば同じだが、いつ頃から闘争を始めたのか定かではない。噂よりも多少信頼できる言い伝えによれば、ひょんなことから「影」の式を使う一族の者が「光」の式を使う一族の者を殺めてしまったらしいことから闘争の火ぶたは切られたようだ。
憎しみや恨みは堆積する。
それが幾世代にもわたって積み重ねられ、今がある。
私は、私の知る限りの身内を殺められた経験がないから闘争自体に興味など無いが、巻き込まれるのだけはご免だと思っていた。
今思えば身も蓋もない。不幸を知らない平和ボケした馬鹿の考えだ。
幸せ。それを浴びるほど飲んできた私は、目の前の少女の感情に対する対処法を、今になっても単純に見出せていなかった。
「あたしは〝光〟の式使い、2代目【刀】。お前を殺す」
本来すべきことの仕事の前に立ち塞がった年上の少女は、出し抜けそう告げた。
私は混乱した。
別の式使いに初めて遭ったことへの驚きと、2代目という言葉と、7年間にわたる人生で初めて向けられた生身の刃に頭が真っ白になった。
あからさまな死語に、酔いそうなほどの殺気。
吐き気が込み上げ、カタナを握る手が、脚が勝手に震えだしたのをよく覚えている。
飛び出しそうなほどに高鳴る心臓を鎮める術を持たず、
「じ、10代目【剣】、其方に対為す者」
とにかく名乗ってきた相手に名乗りを返さなければならないと必死に唾を呑み込みながら言葉を吐き出した。
だが刀と名乗った少女は、いきなり私に飛びかかってきた。
抜き身の刃は肉厚で、乾いた血で汚れていた。
殺意にぎらつく蒼い目が、私の心の奥深くにまで焼き付いた。
色の抜けた白い髪は前髪が眉の上で切り揃えられ、後ろ髪は2つに三つ編みにし顔の横で輪にしてあった。
シンプルな緋袴に草履を吐き、その身体は幾何学模様に侵されてはいなかった。
ただ年上だということだけが心に残った。
明らかに腕力や脚力で刀に劣る私は大上段から振り下ろされた初撃で武器を吹き飛ばされ追いつめられた。
勝負にすらならなかった。
「よく覚えておいて。あんたがあたしと同い年になったとき、必ずもう一回殺しに行くから」
腰を抜かした私を見下ろして、刀はドスの利いた声でそう告げた。
わけがわからなかった。
けれど10年後、本当に少女は私を襲いにきた。
あの日と、全く変わらぬ姿で。
*****
頑張った。頑張ったよ。この長さ。
夢飼いでは普通に書いた長さだけど久しぶりだときつかった。
3回くらい投げ出そうかと思った。途中で何回も実況見てた。
さて、色々な解説を交えつつ新キャラです。
まだまだハジマリですネ。
良かったら感想ください。短くても良いので。
大喜びでお返事します。
では、ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
次回もまた、ゆっくりしていってね。
そういうのを楽しんでもらえるととっても嬉しいです!
他にも色々やっていきたいな〜
次か、その次辺りに出せたら理想なんだけど、おにょこも2人登場しちゃうよ!
おじいちゃんとおばあちゃんからしか引き継げないのは単純に好みなんだけどネ(
はっはっはぁ!これから毎日燃やしていこうぜ?(
楽しんでいただけて幸いです*
うひぃ
コメントありがとう!!
好きとか言ってもらえると本当に励みになります、ありがとうございます。
頑張っちゃいます。うひぃ
設定は結構今回凝りましたw 色々考えてます他にも
恨みとか憎しみとか、そういうのを重点的に描きたいお年頃……
あくまで剣視点です!歳を取らないのも刀だけだから単純に模様が怖いだけなんですネ
説明不足、っていうかわかりにくい文章ですみませぬ……
それは後々明かされてきます!今はまだ心の中にそっとしまっておいてもらえれば
フラグ回収をしていきたい予定←
そう言う設定あるの大好きだよ!! 見ていて楽しいよね!!
呼んでて見つけた時「ほほぉっ」って満足のため息が出るよね((
いまちょっと疑問に思ったんだけど、剣や刀はおんにゃのこしか受けつげないの?
萌えるどころか燃えるぜ!
私が好きな感じの・・・!!(((
待ってました、糾蝶さんが書く私の好きな感じのを!!!(何
最後の文がなんか響きました。
なんというか、かるーく読んで最後見てみたら「ふーん・・・ほぇ?」的な感じだったんですけど、
読み返してみてよくよく考えてみると、「あ、年取らないから剣と同い年の時にryなのか!」的な((
なにこれ超面白いです!!!
見てて楽しいです!!!
始めにあった文の「鏡を見るのが怖いんだ」も分からなかったんですが、
年取らないからか・・・!!?みたいな、こう、推理が(((
でも、”死ねない”って老死できないってことですか?
誰かにぶっ刺されたら死ぬってことですか?
なんだか疑問に思いました
あ、なんかすいません・・・格下の分際で・・・ちらっと気になりました|д゚)チラッ
ネタバレ関係のあれならスルーしてくださいm(_ _)m
きゃああコメントありがとうーー!!めっさ嬉しかったにやけた←
えへへ、年齢については後々明かすんだけどね、そんな感じでどんぴしゃです^q^
実は漢字の画数が代の数字におっと誰か来たようだ
ピュア系な主人公じゃなくて、無気力っぽい女子にしてみました!そうだろう萌えるだろう!(氏
何で2代目と10代目と差が開きまくっているんだと思ったら
刀ちゃんは鬼子って言う存在なのか、年齢は180前後くらいだろうか?
主人公が影がわっているのもまた萌えますね!