黒猫目日記番外 (お題 家庭)
- カテゴリ:家庭
- 2013/06/22 17:14:08
随分前にも日記に書いたが、それがしには兄上がいる。
黒猫目家は武術を重んじる家系であるが兄上はどちらかと云うとあまり武術が得意ではない。
学問や書、算術などをよくなされる。どちらかと云うと、それがしの方が武術の才はある様で子供の頃から打ち合いでは負けたことがない。
兄上は学者になりたかったそうだが早くに父上が身罷られたので諦めて家督を継がれた。
おじじ様も
「お前がもう少し大きかったならお前に家督を継がせてあれには好きな道にゆかせてやれたのじゃが・・」
とおっしゃって居られたが、それがしとしては兄上に家を継いで頂いてホッとしている。
良くしたモノで兄上は武術はてんでダメだが兄上の嫁様は達人であられる。
黒猫目家の遠縁にあたる方で(確か、おじじ様の従兄弟の孫だったかと)兄上の幼なじみでもある。それがしの兄弟子にもあたられる。
師匠の下で何度か手合わせをして頂いたが一度も勝てたことがない。
おじじ様は過分な嫁を頂いたと大いに喜んでおられる。
義姉上は家事はいささか苦手なようだが(実はここだけの話、嫁してきて家で初めて作った料理を食べておじじ様は三日寝込んだそうな)、家業の地領の実務を采配しておられる。
実際、黒猫谷の実権は義姉上が握っていると言っても過言はない。
兄上は
「料理するのは好きだし本当に美味しそうに食べてくれて嬉しいよ」
と毎日いそいそと三食ご馳走を拵え家事にいそしんでおられる。
「家内が黒猫目家の仕事を片付けてくれるので好きな学問に没頭出来て私は幸せ者だよ」
「あ、っと今日は天気がいいから冬物の虫干ししなくっちゃね。クロ手伝っておくれ」
それでいいのか兄上・・・まあ適材適所なのかもしれない。
やはり、女が異様に強い家系は健在だ。
均衡とは左様なものでございましょう。