ぼくの名前
- カテゴリ:自作小説
- 2013/06/29 00:21:57
「にゃー」
ぼくの名前は「じゆうでいいなぁ」だ。
なぜなら、道行く人、みんなぼくのことを見てそういうからだ。
たぶんこれがぼくの名前なんだろうな。
なんだか、羨ましがっているみたいだけど、こっちは大変なんだ。
いつも食べるものを探していろんなところを探検している。
たまに全身黒づくめの奴が飛んできてぼくの食べ物を奪っていくんだ。
お前らは名前なんかないだろう、ぼくなんか「じゆうでいいなぁ」って
立派な名前を持ってるんだぞ。
とか言いつつあいつが来たら隠れちゃうんだけどね。
あの黒い奴きらいだなー。
空からお水が降ってきたある日、寒くてガタガタ震えてたら
おばあさんがぼくを抱きかかえて、おばあさんのお家に
連れて行かれたんだ。
おばあさんはぼくのことを「タマ」って呼ぶんだ。
きっとこれが新しい名前なんだな。
「タマ」これは覚えやすいし、気に入った。
いつも遊んでくれるし、おなかがすいたらご飯も食べさせてくれるし、
あったかいお布団も用意してくれる。
いいとことだなぁ、おばあさん大好き。
・・・
でもさ、いつからかぼくの名前がまた変わったんだ。
こんどは「ありがとう」って名前。
おばあさんは最近になっていつもこう呼びかけるんだ。
「ありがとう」って意味は分からないけど、前の「タマ」のほうが良かったなー。
でもいいや。
・・・
最近のおばあさんは遊んでくれないし、時々ご飯もくれなくなっちゃった。
ぼくがわがままだったから嫌われちゃったかな?
いつの間にかおばあさんはいなくなっちゃった。
ぼくを置いてどこかに出かけちゃったのかな、まあいいや。
しばらくしたらその代わりに黒い人がいっぱいきたんだけど
ぼくは黒い奴がきらいだから、ここを出ていくことにするよ。
さよーなら。
「にゃー」
「にゃー」君(あえてこう呼ぶ)はこれからもいろいろな名前で呼ばれて大きくなるんです。
人間だって一生のうちにいろんな名前で呼ばれて大きくなってるからね。
いつか 猫君の名前が
「大好きなあなた」や「お父さん」になったらいいな