連環
- カテゴリ:日記
- 2013/06/30 15:49:36
レギュレイターズ
リチャード・バックマン
新潮社
オハイオ州の静かな住宅街。
平凡で退屈な一日が、突然の銃声に破られる。
襲撃者は、なんとSFアニメや西部劇の登場人物。
実在しないはずのモノが殺戮を始め、町には、子供の落書きのような生き物が跋扈する、砂漠の町が侵食してくる。
一体、何が起きているのか。
カギを握っているのは、自閉症の少年だった・・・。
「デスペレーション」の分身とも言える作品。
一方が他方の続編、という訳ではなく、登場人物の一部と設定を共有している。
が、登場人物の役回りは、全く異なる。
中には、夫婦だったものが、幼い姉弟という関係になっていたりもする。
手塚治虫のマンガでは、ひとつのキャラクターが、いろいろな役に扮してマンガを演じている(スターシステム)が、小説は文字だけなので、夫婦を幼い姉弟と変えることもできるのが、面白い。
どちらもB級ホラーで「正体不明のモンスターとそれに立ち向かう人々」という点では共通している。
ただ「デスペレーション」を「静」とするなら、本作品は「動」
アクション(特に銃撃)シーン満載である。
どうしても、残酷なシーンの描写はあるが、「デスペレーション」は残酷な場面が終わった「結果」の描写がほとんどなのに対して、本作品の方は生々しい。
かなりマンガ的になっているのは、そのためだろうか。
だが、ラストは救いがあり、爽やかな印象を受けるものとなっている。
あとがきにあるが、「正体不明のモンスター」の最後の捨てゼリフ
「おまえたちをみんな知っている。いずれ、おまえたちをみんなみつけてやる。いずれ、おまえたちを狩りたててやる。」
と叫ぶが、これは「デスペレーション」に返される球らしい。
「デスペレーション」を読んでいれば、ここで「あのことか!」と思い当たる事がある。
(あとがきで、こう書かれていて、初めて気が付いた)
当然、「デスペレーション」も「レギュレイターズ」も、それぞれ独立した作品として楽しめるが、両方を読み比べる楽しみもある。
こういう「仕掛け」を仕込むのもキングらしい、という感じがする。
ところで、本作品の著者はリチャード・バックマン。
本書が発行される前の1985年に病気で死亡している。(本書が刊行されたのは、1996年)
病名は「偽名癌」
・・・キングファンなら、すぐに分かるが、「リチャード・バックマン」はスティーヴン・キングのペンネームである。
キングが小説家デビューした当時、アメリカの出版業界では一人の作家は、年に一冊だけ出版する、という風潮があり、多作の作家は複数のペンネームを持っていたらしい。
キングも多作の作家なので、この「慣例」に従ったそうだ。
なお、「リチャード・バックマン」を殺してしまった後悔からだろうか、その後、1989年に、とある純文学作家が捨てたペンネームが実体を持ち、お互いの存在を賭けて戦う「ダーク・ハーフ」という作品を発表している。
(タイトルがどうしても思い出せませんが・・・)
キングは、こういう「自作を読者に届ける方法」に実験的な事をするのが好きみたいですね。
「グリーンマイル」(小説版)の時は、6ヶ月連続で、月1回発刊する形をとってましたし・・・。
そのような面白さがあるのですね^^
以前読んだ少女小説を思い出しました。
それは、四姉妹に起こった出来事を
それぞれの視点で描いた四冊の本で、
作者名などは今思い出せませんが。。。
フランシス、ジュリア。。。。と、四姉妹の名が冠された題名だったはずです。
面白い試みと思って読んだ事を思い出しました^^