Nicotto Town



黒猫目日記番外 (お題 夏を感じるとき)

蝉時雨が染み入るように聞こえている。

梅雨が明けると共に待ちわびた様に一斉に鳴き出した。
それがしの里は山里故に夏場になると降るように蝉の声が聞こえて来た。
街中の虫の声は何やら悲壮感があるように思える。
限られた土の中よりいでて僅かな木々に安寧を求めてしがみつくせいであろうか。
ともあれ暑い夏の訪れを告げる声である。

この時期になると兄者は畑で採れた胡瓜や西瓜を井戸水で冷やしてくれた。
真っ黒になって遊び疲れて帰ってきたら縁側に桶を持ち出し冷えた西瓜にかぶりついたものだ。
山間の風は木々の間を渡り涼しくお日様で火照った体を冷やしてくれた。
夜になると小川の周りを小さな明かりがふわふわと飛びかい出す。蛍だ。
うちわを手に蛍狩りを楽しみ小さな花壺に狩った蛍を止まらせてしばしの明かりを楽しんだ。

しかし、なんといっても夏の楽しみは祭りである。
鎮守の森のお宮の前に並んだ屋台の数々にどれほど心踊ったことか。
輪投げに射的、くじ引き、金魚掬いにヨーヨー釣り。
お気に入りのお面をかぶったら、まずは焼きとうもろこし。醤油の香ばしい香りに思わず腹が鳴る。
口の周りを真っ赤にしながら食べるりんご飴、くじ引きで枚数の決まる煎餅や、串揚げ、焼き鳥、たこ焼き、綿飴、甘酒、かき氷。
ああ、思い出しただけでつばが沸く。

祭りのあとはいつも食い過ぎで腹を壊しておじじ様に叱られたものじゃ。

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2013/07/18 05:42
幼子とはそ~でなければなりませぬ。
後先考えず、祭りを楽しめぬ様な童では先が思いやられまする。




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