◆ 海に宿る月 9
- カテゴリ:自作小説
- 2013/07/18 22:09:25
http://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=1016286&aid=51152127 からの続きにゃ
◇◇◇◇◇◇
慌てて、しかし音を立てないようにそっと玄関を開けて海を覗く。けれどそこには何もない。
ただ、雨上がりの湿った空気の中に波が漂うだけ。
遠い沖に目をやるが、雲に隠れた月のせいで、海と空の境もわからない。
が、佐和子はその暗い沖に、再びそれを見た。
ぼんやりと光る影はゆらゆらと漂いながら波間に現れたり隠れたりしながら動いている。その度にまた、ちゃぽん、ちゃぽんと響いてくる。
聞こえるわけがない。本来ならそんな遠くの波間の音なんて。けれど確かに、その塊の動くに合わせて、ちゃぽんちゃぽんと繰り返す。
しばらく同じ場所で潜ったり現れたりを繰り返していたそれは、そのうち海面を滑るようにひとつの方向を目指し進み始めた。
「あっちは……」
いつも少年と会っていた海水浴場の方角。
急な胸騒ぎに、迷っている暇は無かった。
サンダルでパジャマのまま、外灯も月灯りも無い寂しい夜道を自転車のライトひとつに身を任せて走り出した。
昼間なら十分とかからない道のりが、暗いせいで時間がかかる。緩いカーブの先が見えない不安。だけど……行かなきゃ、急がなきゃ……佐和子の急く心のままに、車輪が回る。
沖に見えたあの影は確かにあの方向に流れて行った。
佐和子の特等席。いつも夏が来ればそこで日中を過ごし、海を眺め続けた場所。この夏にはあの少年との出会いもあった。
ぽつ、ぽつ、と柔らかい雨がじんわりとパジャマの肩を濡らす。雨に交じって、ふうわりと硬く青い蜜柑が香る。
緩やかなカーブの向こう。ここを曲がればあの海が見える。八年前、自分が生きて無事助け出された場所。
ヨシ婆にあの時の話を聞けば、仰向けに穏やかな顔色で寝息を立てていたという。潮の流れに逆らって、どうやってあの場所まで辿り着いたのか、不思議な事もあるもんだと囁く大人も居た。けれどヨシ婆は
「きっと海の神さんが、佐和ちゃんがあんまりこんまいけん、不憫に思うて助けてくれたんよ」
と締めくくった。
あの時のヨシ婆の話を思い出しながら走る。最後のカーブを曲がる直前で、自転車を漕ぐ足が止まった。
ちゃぽん
確かに、聞こえる。海に落ちる雨の音ではない。
耳を澄ませる。船が揺れて波を立てる音でもない。
軽やかに水を切る音が、次は重たそうに何かを引きずる、ずるり、ずるりという音に変わった。
ゆっくりと何かが海から這い上がってくる気配に鼓動が駆け足を始める。体中の血液がふつふつと沸きあがっているようで、頭の芯まで熱くなる。
見たい。このカーブの向こうを。
しかし。そこにあるのは、自分が期待している何かでは無いかもしれない。
「そうよ、もしかしたらただの酔っ払いが海に落ちただけかもしれないじゃない」
そう考えて、ハッと我に帰った。
「だったらグズグズしてる場合じゃないじゃない! 助けなきゃ!」
山肌にしがみつきながら、恐る恐るに顔を出した。
暗い海。
けれど夜道を走ったおかげで、暗さに目が慣れている。テトラポットの上に動く何かが、ぼんやりと見えた。
「やっぱり誰か海に……」
助けないと、そう思って飛び出そうとした時だった。
はっきりと目に映った。
しがみついていた山肌に、体が張り付いてしまって動けない。先ほどまで興奮で震えていた体が、ぴたりと止まり、まるで自分がその風景の一部になって山に吸い込まれてしまったような感覚だ。
テトラポットの上をそれは重く這うように動いている。
全身を覆う茶色く細いたくさんの毛が、一本一本自ら意識を持っているように、ぴっぴっと伸び縮みしながら水滴を払っている。最後にぶるぶると大きく震えて、完全に水気を切ってしまうと、暗い空を仰ぐように大きく伸びあがり全身を膨らませた。
まるで深呼吸をしているかのように、膨らんだ後はしぼんでゆく。
ゆっくりと、下の方から形が作られてゆく。
周辺の触手が巻きつくように作られていく形は、まず、細い棒のような物が二本。形造られる端から茶色い体は冷たく透き通る白へと色も変える。
それが足だと解る頃には、すっかり人の形を成し始めていた。
もう、無数の触手は見る影も無い。
降っていた雨が止み、雲に隠れていた月が、『さぁ見てごらん』と言わんばかりに顔を覗かせる。
降り注がれる軟らかな灯りの中、照らされたその後ろ姿を見て佐和子は心臓を凍りつかせた。
「まさか……」
唇が震えたはずみで、カラリ……張りついていた山肌が佐和子の動揺する心に反応して、一欠けらの小石をアスファルトに転がした。
その音に、月灯りの中で浮かぶように背中を向けていた人影が、ゆっくりと振り返る。
目と目が合った。そんな気がした。けれど佐和子はまるで悪い事をしている子供のように、目を逸らして慌てて自転車に飛び乗った。
来た時より若干明るくなった道を飛ぶように走った。
「あれは……」
汗がどっと噴き出す。
「あぁ……あれは……」
テトラポットの上で、彼は佐和子の消えた方角をしばらく眺めていたが、視線を足元に落として項垂れ呟いた。
「見られたかな」
できあがったばかりの色素の薄い髪に残れされた滴が華奢な肩に落ちて、弾けるように散って消えた。
◇◆◇ 続くんだにゃ ◇◆◇
これは・・・・・どうなっちゃうんだろ!?
読んでくださってありがとー(´▽`)
もうちょっとですーもうちょっと…(^_^;)
一枚一枚手書きのセル画に決まっておるのです!
まさか実写とか言っちゃいけませんよ(・∀・)
特撮で行くか、CG合成で行くのか。どっちにしても予算がかかりそう~
なので、現地の素人少年少女オーデションでつくる予算しかないから、
今回のは映画化見送りだぁ~♪
勉強は夜勤の時に暇暇見てやってるから大丈夫なの~多分ww
家で勉強なんて暑くてできないっ…><
長い話に付き合ってくれて、こちらこそありがとう^^
勉強もしないといけない時期なのに・・・・
余計なお題をふってしまい申し訳ありません<(_ _)>
正体がわかった、佐和ちゃん・・・さて、どう考え・どう動く・・・
ごめんねと言いながらも、先が読みたい・・・私です・・・(^_^;)
夏休み入ったら図書館に行かねば(´▽`)
今度こそ今度こそおやすみなさーいww
もし気が向いたら、図書館ででも捜してみて~~^^
んでは、おやすみなさーーい^^
ごめんなさいごめんなさい~
終わりの回は、タイトルに『終わるんだにゃ』って入れるね(;―;)
まだあと何回かかかりそうです~
うーん、伊集院静氏の本って実は読んだことない…><
では、ゆっくりとおやすみなさーい(´▽`)
完結編かと思って、じーーーーっと待ってたのに・・・(;_:)
ちょみさん、いい文書くよね。
海月(漢字表記は水母だったかも)を題材にした小説では、
伊集院静のものがあるよね。
向こうはかなしいラストで終わるけど、ちょみさんのはどうなるんだろう・・・。
それにしても、あとをひく場面で ◇◆◇ 続くんだにゃ ◇◆◇ って。
しくしく。 しくしく。 飛んできたのに・・・。
んでも明日(明後日じゃないよね?)の楽しみにして、そろそろ寝るね~^^
おやすみぃ~~^^
パンツ洗わなきゃ…( ノ゚Д゚)オロオロ