月桂樹
- カテゴリ:小説/詩
- 2013/08/13 01:34:02
「さぁ、こっちへいらっしゃい」
月桂樹が声をかけました
揚羽蝶はほっとため息をつくと
枝の奥に羽を休めました
空はますます暗くなり
雷鳴が響きわたっています
瞬間
雨が強く降り始めました
助かりました
ありがとう
月桂樹さんはとても大きな体で
雨も風も防いでくれますね
困った時は
いつでもどうぞ
聞いてもいいですか
あなたは何時からここにいるのですか
ええ昔から・・・ここにいます
そう言うと少し悲しげな顔になりました
わたしは
ずっと待っているのです
わたしをここに植えたこの家の持ち主と
その家族の人たちを
いつもわたしの周りで遊んでいた
お話もしていた
笑い声が絶えなかった
それはそれは楽しい日々でした
やがて彼はお爺さんとなり
彼の子供さんは結婚してまたお父さんになった
そして仕事の都合で
全員外国に引っ越してしまった
毎年一回は会いに来る約束をしたけど
もう二年も帰ってこない・・・
「また来てもいいですか」
蝶は雨上がりの街へと去って行った
次の日、蝶が舞っていた
何頭も何頭も
蜜を持たない月桂樹の周りを
楽しそうに舞っていた
笑い声が聞こえる
月桂樹と蝶の笑い声が
舞っている白や黄色い蝶が
舞っている黒揚羽に揚羽蝶が
寂しくなんか無いでしょう
独りぼっちじゃ無いでしょう
ここは都会のはずれ
とあるお家の大きなお庭での小さな出来事
ここの蝶はにわか雨なんて
平気なんですって
守ってくれるお友達がいるからね
大きな大きな月桂樹さんがいるからね
昨日、庭の月桂樹の周りを揚羽蝶が
飛んでいました
そのあとすぐに夕立がピンポイントで!
あの蝶はどうしているのかな?って思いました
大きな木って何か頼りがいがあります
見ていると安心感が不思議と生まれます
(雷は落ちるかもね?)
厳しさと優しさの調和
無言だからそう見えるのでしょうか
植物と会話が出来たらいいな
色んなことを教えてくれそう!
なんて・・・
哀しい時も寂しい時も、みんなが支え、そして助けてくれます。
時を越え、すべてのしがらみがなくなったとき、
待ち人さんも逢いに来てくれるでしょう。
ううん、もう逢えていますね^^