うら飯屋 出現!(後編)
- カテゴリ:日記
- 2013/08/28 22:28:05
「怖い思いをさせて、すまなかったのぅ」
「い、いえ。 こわいのは、今のところ ご飯だけですから」
「かまど炊きなんじゃが…」
「え! こ、このご飯、かまど炊きなんですか! 今どき かまど炊きだなんて、貴重ですね!」
「そうかのぅ? 昔は、普通だったんじゃが」
「どうりで、何か違うと思ったんですよ! 一粒一粒が立っているって感じ? ちょっぴり、つやもありますし!
よくかんで食べれば…。 で、でも、やっぱり こわい…」
「いつもは、小僧が炊いてくれておったんじゃが」
「え? このお店、小僧さんもいるんですか?」
「そうじゃよ。 よく働いてくれる、小僧でのぅ」
「え? も、もしかして、その小僧さんって、”それは、こんな顔かい?” って言って振り向くと、のっぺらぼう
だったりするんですかね?」
「い、いや。 のっぺらぼうではなく、ちゃんと目鼻がある子どもじゃが」
「それじゃ、一つ目小僧とか?」
「おまえさんと同じ、目が二つの普通の顔をした子どもじゃよ!」
「そうなんですか? それなら、会ってみたい気もしますね」
「それが、人前に出るのは苦手な小僧でのぅ」
「人見知りなんですね」
「それにのぅ、今は休んでおるのじゃ」
「え! 夏バテですか?」
「そうではなく、夏休みなのじゃ。 いわゆる、バケーションというやつじゃのぅ」
「え! バケーションだなんて、シャレた言い方しますね! おばけだけに、化け(バケ)ーション?」
「実は、ある老舗(しにせ)旅館から頼まれてのぅ。 お盆の間は、そこへ手伝いに行っておるのじゃ」
「旅館は、この時期忙しいんですか? おばけの手も借りたいほど?」
「そうなのじゃ、去年も手伝いに行っておったが、とても評判が良くてのぅ」
「それで、何の手伝いをするんです? そこでも、炊事ですか?」
「そこでは、炊事ではなく、もっと簡単なことじゃ。 ちょっとしたイベントの手伝いなんじゃよ」
「ちょっとしたイベントって? スイカ割りじゃないし…、盆踊り? あ!わかった! きもだめしだ! 暗い
お墓の陰から、バァーー! って、するやつ!」
「そ、そんな、怖いことするわけないじゃろう!」
「え? おばけでも、怖いんですか?」
「そりゃそうじゃろう! 暗い墓地で、人間を驚かそうと思って隠れておったら、いきなり本物のおばけが
ヴバァーー!って、顔出したら、怖いじゃろ? 心臓止まりそうになるじゃろ?」
「そ、そりゃ、本物のおばけが出たら怖いですけど!」 (って、目の前のおばけも、本物ですけど?^^;)
「そうじゃろう? だから、外ではなく 室内で楽しく過ごすのじゃ!」
「え? それがお手伝いなのですか?」
「そうじゃよ。 室内で、飛んだり跳ねたり、走ったり… 」
「運動会ですか?」
「そんなに規模は大きくないのじゃ。 お客さんが泊まっている部屋のとなりの部屋で、遊ぶのじゃ」
「えっ! ま、まさか!」
「そうじゃよ、そのまさかじゃ!」
「ざ、座敷わらし! こ、ここの小僧さんって、座敷わらしなんですか!」
「実はそうなのじゃ! 本人は気付いておらんがのぅ」
「すごいです! 座敷わらしといったら、その姿を見たり、となりの部屋で遊んでいる音を聞いただけで
幸運が訪れるって、聞きますけど!」
「そ、そうなのかい?」
「はい。 座敷わらしの姿を見たミュージシャンがメジャーデビューしたり、相撲取りが優勝したり!」
「そ、そんなに縁起がいいのなら、わしも 一目見てみたいものじゃがのぅ」
「あ、あの? 普段から見ていましたよね?」
「そ、そういえば、そうだったのぅ!」
「ですから、このお店も繁盛するってことですよ! どうします? 話題が話題を呼んで、マスコミが取材に
来ちゃったら! そして、さらに話題になって、押すな押すなの長蛇の列!」
「それは困るのぅ。 わしはあまり騒がれるのは好きではないし、行列ができるほどの繁盛も望んでおらん
のじゃ。 一日数人のお客さんが、怖がってくれればそれでよいのじゃよ」
「違う こわさ ですけどねぇ」
「そして、定年まで働いたら、のんびりとした老後を迎えられれば、それでよいのじゃ」
「(え? もうすでに、老後のような? い、いや、老後も過ぎちゃっているような!)」
「老後は、のんびりと縁側でお茶でもすすってのぅ。 ひぐらしの声でも聞きながら、うとうとしておったら、
いつの間にか、ぽっくりと成仏しておる…。 そんな、最期が夢なのじゃ!」
「あ、うちのジーヤも、最期はそんな感じで、ぽっくり逝きたいって よく言ってます!」
「そうじゃろう、そうじゃろうとも。 おぉ、そうじゃ。 おまえさんに、その昔、この広場であったことを話して
おかねばならんのぅ」
「え? な、何があったんです?」
「昔むかし、と言っても、それほど昔ではないがのぅ。 ある夏のことじゃ。その年も、今年のような暑い夏
でのぅ。 それでも、夕方になれば多少は涼しくてのぅ。 じいさんと孫が祭りに出かけたのじゃ。 夜店が
たくさん並んでおってのぅ。 そして、ちょうどこの店の前じゃ。 ほら、あそこにお面屋があるじゃろう?
その夏は、たこ焼き屋の屋台が出ておってのぅ。 そこで、じいさんが たこ焼きを買っている間に…」
「え! そ、その間に何があったんです? も、もしかして、お孫さんが行方不明! か、神隠しにあったん
ですかね? みんなで探して、見つかったときには悲惨な…」
「こ、これこれ! 怖い妄想をするのは、やめておくれ」
「あれ? 違うんですか?」
「違うのじゃ。 じいさんがたこ焼きを買っている間に、孫はとなりの金魚すくいの屋台で、金魚を3匹も
すくってのぅ。 普段は1匹もすくえんから、二人して喜んだものじゃよ」
「あれ? ただの思い出話でしたか?」
「タダとはなんじゃ、タダとは! お金をもらいたいくらいじゃよ!」
「ごめんなさい。 でも、おじいさんにも幸せな時代があったんですねぇ」
「そうじゃよ、あの頃が一番幸せだったのかもしれん…。 そんなことを、おまえさんと話しておったら、
ふと思い出したのじゃ」
「そうなんですか? なんだかよくわかりませんけど、お役に立てて嬉しいです」
「おぉ、大変じゃ! こんな時間になってしもうた」
「え? あ、本当だ! もう真っ暗ですね」
「引き止めてしまって、すまなかったのぅ」
「いえいえ、なんとなく楽しいひとときでした。 うら飯屋さんで言うセリフじゃないかもしれませんけど」
「ほっほっほ、よいよい。 多少は、怖がってくれたからのぅ」
「はい、多少は」
「では、気をつけて帰るのじゃよ。 こんな夜更けは、おばけが出るかもしれんからのぅ」
「はい。出会わぬよう、気をつけて帰ります。 って、もう 出会っちゃってますけど?」
お化けさんたち、見えないところで苦労しているかもしれませんね
あまり怖すぎると、除霊されてしまうかもしれないしw
>うら飯屋、今年も繁盛しそう 「あまり繁盛しては困るんだがのぅ」w
実は、この うら飯屋、お正月にも登場します ^^
「スカイボーヤと 新春の家」(2014.01.01)
http://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=610852&aid=53999375
怖がらそうと雰囲気作ったり出るタイミング計ったりしてるところ浮かべたら、可愛い気がする
うら飯屋、今年も繁盛しそうw
数日後行ってみたらお店自体がなくなってて、
近所の人に「ここにお店がありませんでしたか?」と聞くと
そうかねぇ
元々この場所にあったのは「お墓じゃよ・・・」だったりして~きゃぁああああ
怖~い((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル、化けーション面白かったですぅ座布団( ^ω^)_凵 どうぞ♪
楽しく読ませて頂きましたぁ有り難う御座いました○┓ペコリ
ちょっと背筋が寒くなりましたぁ^^;
(o´∀`o)ニコッ
祟るものもいれば、幸せを運んでくるものもいるんですね~^^
どちらも怖がらずにきちんとお話をすれば
それなりに仲良くなれるのかもしれませんね^^
それにしても
じーや、ぽくっと逝っちゃやだ~~w
でも、怖くないお化けはいい悪さをしないいいオバケがっていいますよね^^(ホント?)
こちらにも座敷わらしがいる、という大変繁盛している鍋ものやさんがあります。
私も一度でいいから座敷わらしにお目にかかってみたいものですw
いえ・・お目にかかれずともよいので、ご利益の良い事だけいただきたいものです♫
わたしってゲンキンーーー(・・。)ゞ
化けーション・・・うまいこと言いますね^^
怖いような怖くないような笑えちゃう、ゆる~~~~いお化けですね(*≧m≦*)ププッ
うら飯屋の繁盛を願って・・・・は、ダメなんですね(;^_^A アセアセ・・・