Nicotto Town


COME HOME


「時間」

「花織と過ごす時間が、七分の二十二時間だったらいいのに」

三年前の冬だったかな。
輝弥は、少し拗ねた顔をして謎の言葉を呟いた。ま、今ではこの意味が分かるけど。
輝弥は高校二年の時から付き合い始めたいわゆるあたしの彼氏で、その日は付き合って二周年という記念すべき日だったから、二人は久しぶりの再会を果たした。

大学進学の際、あたしは上京し輝弥はそのまま自分の故郷に残った。
これはまあ輝弥の学力からすればこれは予想通りで、離れ離れになるのは仕方ないな、とあたしは割り切った。

そして、二人の愛は永久不滅だと信じ切っていたあたしと輝弥は、遠距離恋愛を始めた。

声を聴きたければ電話。
文字を見たければ手紙。
すぐに伝えたいことがあったならメール。
そんな風に、あたしと輝弥は何らかの手段で自分の近況を報告しあっていた。
一年に一度はクリスマスを兼ねたあの若さの至りのくだらない記念日に、顔を合わせてもいた。

だけど、そんなものが長く続くわけ無く。

会えないのを距離の所為にして。
関心が無くなったのを時間の所為にした。

そうして、電車に乗った雪の日に思った結末が二人に訪れた。

別れてから一年。
輝弥からの手紙は全部捨て、メアドは消去し、プレゼントされたお揃いのものだけを押し入れに閉じ込めた。
そうして、「輝弥」という存在から完全に吹っ切れた。つもりだった。
だけど。

輝弥の好きなコーヒーの香りがするたびに。
輝弥専用だった着メロが街に流れるたびに。
輝弥がファンだった作家の本を見かけるたびに。
あのセリフを思い出す。

「花織と過ごす時間が、七分の二十二時間だったらいいのに」

七分の二十二。
意味するのは無限に続く円周率。

アバター
2009/08/12 19:55
みかのさん>

私も最初、他の小説で見たときはそう読んでました。
日本語(漢字)って難しい!
アバター
2009/08/12 19:54
最初、「ななふんのにじゅうにじかん」と読んでしまい、
あれえ?とおもいながら最後に ああそうか!と理解しました←

何かが こころに残ります。じわ~・・・・(何。



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