Nicotto Town


すずき はなこ


黙祷。

3年前のある寒い夜のこと、
車中泊をしておられるご夫婦が、
思わぬことから、事故を起こされた。

めったに車内では炭火を使う方ではなかったのだが、
寒さに耐えかねて、
湯たんぽを作ろうとされたのか、
やかん1杯のお湯を沸かすために、
起きた事故であった。

翌朝、ご夫婦の起床がいつもより遅いので、
気にはしていたのだが、
蒸気で車内が曇って見え辛かったのと、
なにせ、仲のいいご夫婦の寝所を覗くのも、
気後れしたからだ。

しかし、いよいよ嫌な予感がしたので、
走って行って、車のドアを叩いた。
手が動いたような気がしたが、
熱気がこもって、中はほとんど見えなかった。
おかしいと思った瞬間、
車のリアを開けたのだが・・・。

一酸化炭素中毒だった。
うつぶせになって倒れている奥さんのほうを、
起こしたが、うっ血して腫れ上がった顔が、生気を失っていた。
口から吐しゃ物と入れ歯が、どろどろと出てきた。
奥さんは、ダメだと思った。
次に、ご主人を引きずり出そうとしたが、
うちの専務と同じくらいの大男で、
わたしがどうあがいても、
動かせるものではなかった。

他の男を大声で呼んだが、
恐がって誰も近づこうとしなかった。
なんとか、頭を車外に向けなおして、
軌道を確保して心臓マッサージをした。
とにかく、自発呼吸までは戻したかった。
みぞおちを、強く圧迫したとき、
大きな、あくびを一つしてくれたので、
「助かる!」と確信した。

心臓マッサージをしている間、
となりに奥さんの変わり果てた姿があった。
わたしは、自分の手がマッサージに取られて、
口から汚物を吐く奥さんを、どうしてあげることもできなかった。

奥さんの死亡推定時刻は12時くらいであったので、
もうどうしようもなかったのだが、
ご主人は、それから2年近く生きた。
生きてはいたが、脳酸素不足で植物状態から戻らなかった。

一度、お見舞いに行った。
昏々と眠り続けるご主人の手に、
釣竿を握らせて、
「お~い、もうそろそろ陸に上がろうかぁ、大漁やでえ」と怒鳴った。
それまで意識も戻らなかったご主人が、
大きな声で「はあ~い!」と言った。

釣りの好きな人だった。
意識不明の夢の中で、
奥さんが亡くなったことも知らず、
ずーーーーーっと竿を垂れていたのだ。

昨日の日記で紹介したオンナの幽霊は、
このときの奥さんだという人たちがいる。
それを証拠に、
ご主人が亡くなった後は、
いっさい見られなくなった。

ご冥福を祈ります。

アバター
2013/09/30 23:29
ご冥福をお祈りします
お二人で一緒に過ごせていると信じます・・・
アバター
2013/09/30 12:51
ご冥福お祈り申し上げます。

最近、悲しくなる話が多いですね^^;
とっても考えさせられます。

はなさんは人の死を見てきてるから
霊的なものが見えるのかもしれませんね。

幽霊を面白がるのはよくないと感じました。
これから気をつけます。
アバター
2013/09/29 15:15
ご夫婦ご一緒に、旅立っていかれました。
寂しくなりました。
週に3日は、うちに泊まっておられましたから。
アバター
2013/09/29 14:51
奥さんは旦那さんのことを見守っていたんですね。
本当に仲のよいご夫婦ですね。
アバター
2013/09/29 14:23
それが、奥さんだったかどうかは、わたしには分からないんですけどね。
専務は、断言していますね。

わたしたちには、証明できない世界だから・・・。
やっぱり、ほんとうはどうかわかんない。
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2013/09/29 11:07
はなこさんの行動に、奥さんが感謝していたのですね・・・

安らかにお眠りくださることを祈っています
アバター
2013/09/29 09:36
悲しい話です。。

ご冥福を祈ります。



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