ドラマ【相棒12】
- カテゴリ:テレビ
- 2013/10/24 22:22:06
【感想】今回は実にシンプルなストーリーで、一応犯人はわかっていない体裁を取っていましたが、ほぼ倒叙形式でしたね。ここで肥後以外の人物が犯人だったら面白かったのですが……でも、これはこれで面白かったです。こんなストレートで非日常的な業界の話を書く人はきっとあの話を書いた人だろうと思ってたら、やはりそうでした。金井寛、前シリーズから相棒の脚本を書くようになった、新参の脚本家さんですね。スパコンと棋士の戦いを描いた「棋風」というエピソードと言えば、覚えている方も多いと思います。もう1つ、同窓会の会場となった料亭に爆弾が仕掛けられたという話から始まる「同窓会」も彼の手によるものですね。古くから相棒に携わる脚本家さんたちが、目の肥えた視聴者を意識してか、複雑怪奇なストーリーを書くことが多い中、珍しい業界を舞台にストレートな謎で勝負する金井氏の脚本はい新風を吹き込む異色の作品という感じがします。次回は古株の櫻井氏の脚本なので、今のところいいシリーズ構成だと思いますね。さて今回のストーリーですが…私はバリバリの文系なので、数学はカイト君と同じでまったく理解が及ばない世界です。リーマン予想というのは何か聞いたことがあるような気がしないでもないのですが、リーマンショックと間違えてるかもしれないしw ちなみに肥後が解いたとされるファーガスの定理は実在しないようですね。日頃接することのない世界を垣間見たという意味では、結構面白いストーリーでした。ただ、肥後があっさり落ちてしまったのはちょっと不満かなぁ。"a drink"というダイイングメッセージの謎を右京が解いただけで、罪を認めてしまったのはどうかなと思います。例えば、過去の同級生が、大倉が肥後のことを"a drink"と呼んでいたという証言などがなければ、裁判で有罪になるかどうかは怪しいですね。ただ、数学に生きる肥後だからこそ、数学的な暗号を解いた右京に感服したということなのかもしれません。あと心理的なことですが、大倉は肥後を尊敬しつつも終生のライバルだと思っていて、肥後がリーマン予想のみならず、素数の謎まで解いたことを誇りに感じていました。それは肥後の名前で世間に公表すると言っていたことからも窺えます。もしここで自分の名前で公表するなどと言っていたら、ライバルではなくただ妬んでいただけで、ダイイングメッセージを残した気持ちもわかるのですが、ライバルとして尊敬していたのなら、殴られたことで肥後の痛切な思いを理解し、ダイイングメッセージを残したりはしないと思うんですよね。この事件の動機は私利私欲や怨恨ではなく、素数の謎の解を公表するか否か、つまり数学の進歩を優先するか、それとも社会の秩序を優先するかという、次元がまったく違うものだったわけですからね。肥後・大倉の間の複雑な感情や関係をもっと描けていたら、もっと納得のいく作品になったかもしれません。ミスリードを誘うため、ファーガスの定理という架空のものを持ち出し時間を潰したことで、そのへんがあやふやになってしまったのでしょうかねぇ。細かいことなのですが、2人のキャラがしっかり描けていなかったせいで、この話がちょっと味気ないものになってしまったような気がします。