マグカップ
- カテゴリ:小説/詩
- 2013/11/28 08:11:32
マグカップにコーヒーが二つ
一つは黄色
一つは水色
湯気を断つ茶色のお湯
熱いコーヒーを
そっと口に運ぶ
カップまで熱くなって
心の中まで熱くなる
ふとあなたのことを考えてみる
あなたの部屋の鍵をもらって
よく待っていたものだった
バイト先のファストフード店からのあなた
水色のマグカップの
コーヒーが冷めていく
飲む人のいないコーヒーが
さみしそうに冷めていく
街路の銀杏が
葉を落とす時
ポケットに手を入れて
歩いたものだった
私の右手があなたの
左のポケットに収まる
毛糸の帽子をかぶって
笑顔で話していた二人
もうすぐ冬が来る
右手は手袋の中
つなぐ手ももういない
木枯らしが冷たい
黄色のマグカップの
コーヒーも冷めていく
二人分のコーヒーは
思い出と共に冷めていく