満員電車
- カテゴリ:小説/詩
- 2013/12/19 09:01:52
今日は冷たい雨
傘を持つ手がかじかんで行く
満員電車に
傘をたたんで乗る
雨粒が流れる窓の外
人ごみに倒されないように
しっかり足をつけて立っている
香水の香りがする
そう言えばあの人は
満員電車の中の
香水の香りが苦手だった
息がつまるって言っていた
今頃あなたも
満員電車の中で
会社に向かう
人ごみに押されながら
香水の香りがするかしら
今も息をとめているかしら
私はつけないの
あなたが嫌いだったから
それぞれの満員電車は
駅に止まりながら
目的地に運んでいく
もう線路が違う私たち
心に雨粒が落ちる
もう別れて随分経つのに
まだあなたを窓の外に追いかけて
外を見つめる
会社について
傘をロッカーにしまう
あなたが買ってくれた傘
これだけがあなたのぬくもり