チリンの鈴で思い出す
- カテゴリ:日記
- 2014/01/18 19:54:27
チリンのすず
やなせ・たかし
フレーベル館
「アンパンマン」の作者、やなせ・たかし氏による絵本。
同氏の「わたしが正義について語るなら」(ポプラ新書)の中で、本書の事が語られて(ほぼネタバレだが)いたので、気になり、実際に読んでみたくなった。
主人公は子羊のチリン。
母親と平和に暮らしていたが、ある夜、牧場が狼のウォーに襲われ、チリン以外は全員、死んでしまう。
生き残ったチリンは、ウォーの下に行き、こんな事を言い始めた。
「僕もあなたのような強い狼になりたい。僕をあなたの弟子にして下さい。」
羊が狼になれるわけはないが、チリンには狙いがあった。
「ウォーより強くなって、母親の仇を討つ」
という狙いが・・・。
子供向けの絵本ではあるが、単純な勧善懲悪モノではない。
「悪人(狼)」であっても、暖かい心もあるし、「正義」と「悪」が逆転する事もある。
単純に分ける事などできない、といった内容。
子供向けとは思えない程、重いテーマを扱っている。
初期のウルトラシリーズで、時々、ビックリする程、重いテーマを扱っていた、という事を思い出させる。
作り手側は「今は分からなくてもいいから、こういう問題がある、という事を見せておきたい」という想いから、そのようなエピソードを作ったらしい。
本書も同じような想いから作られたのだろう。
奥付を見ると、初版が1978年に出版され、25刷を重ねている。
作者の想いが伝わったかは、この事実だけで明確だろう。
ところで、考えすぎかもしれないが、本書のストーリーの構成で気が付いた事が一つ。
本書の冒頭
「チリンの鈴で思い出す。
やさしいまつげを
微笑を
チリンの鈴で思い出す。
この世の寂しさ また悲しみ」
とある。
(これだけでも、その内容に「本当に子供向け!?」と思ってしまった。)
最後まで読むと、ラストに出てくる「鈴の音」が、この冒頭の「チリンの鈴」と繋がっている事に気が付く。
おそらく本書はラストシーンから始まる物語なのだろう。
最後まで読むと、「供養のための鈴の音」とも
とれますね。
供養のために鈴を鳴らすと、あれこれ思い出されるものですね。
この絵本の事は知りませんでしたが、
親が仏教徒で私は子供の頃に仏教説話の絵本を読んで育ちました^^;;
善悪・生死・・・理解には程遠かったと思いますが、感じ取ることは出来たように思います。
人間にとって大事な問題を、指し示しておくというのは、
教育効果が高そうですね。
欧米のカトリック国が、幼少の頃から聖書を教えるのも、
そういう狙いがあるのかも・・。