Nicotto Town



チリンの鈴で思い出す

チリンのすず
 やなせ・たかし
  フレーベル館



「アンパンマン」の作者、やなせ・たかし氏による絵本。

同氏の「わたしが正義について語るなら」(ポプラ新書)の中で、本書の事が語られて(ほぼネタバレだが)いたので、気になり、実際に読んでみたくなった。


主人公は子羊のチリン
母親と平和に暮らしていたが、ある夜、牧場が狼のウォーに襲われ、チリン以外は全員、死んでしまう。

生き残ったチリンは、ウォーの下に行き、こんな事を言い始めた。
「僕もあなたのような強い狼になりたい。僕をあなたの弟子にして下さい。」


羊が狼になれるわけはないが、チリンには狙いがあった。
「ウォーより強くなって、母親の仇を討つ」
という狙いが・・・。


子供向けの絵本ではあるが、単純な勧善懲悪モノではない。

「悪人(狼)」であっても、暖かい心もあるし、「正義」と「悪」が逆転する事もある。
単純に分ける事などできない、といった内容。


子供向けとは思えない程、重いテーマを扱っている。


初期のウルトラシリーズで、時々、ビックリする程、重いテーマを扱っていた、という事を思い出させる。
作り手側は「今は分からなくてもいいから、こういう問題がある、という事を見せておきたい」という想いから、そのようなエピソードを作ったらしい。


本書も同じような想いから作られたのだろう。


奥付を見ると、初版が1978年に出版され、25刷を重ねている。
作者の想いが伝わったかは、この事実だけで明確だろう。


ところで、考えすぎかもしれないが、本書のストーリーの構成で気が付いた事が一つ。


本書の冒頭
「チリンの鈴で思い出す。
 やさしいまつげを
 微笑を


 チリンの鈴で思い出す。
 この世の寂しさ また悲しみ」

とある。
(これだけでも、その内容に「本当に子供向け!?」と思ってしまった。)


最後まで読むと、ラストに出てくる「鈴の音」が、この冒頭の「チリンの鈴」と繋がっている事に気が付く。
おそらく本書はラストシーンから始まる物語なのだろう。

アバター
2014/01/20 22:22
元々はチリンが首につけている鈴の音ですが、
最後まで読むと、「供養のための鈴の音」とも
とれますね。
アバター
2014/01/20 11:44
「鈴の音」は、仏壇の前にある、鈴のことでしょうか。

供養のために鈴を鳴らすと、あれこれ思い出されるものですね。

この絵本の事は知りませんでしたが、

親が仏教徒で私は子供の頃に仏教説話の絵本を読んで育ちました^^;;

善悪・生死・・・理解には程遠かったと思いますが、感じ取ることは出来たように思います。
アバター
2014/01/19 12:26
日本だと、子供向けの番組で、そういう事をやる、という「伝統」がありそうですね。
アバター
2014/01/18 22:56
幼少の時に、わからなくても良いから
人間にとって大事な問題を、指し示しておくというのは、
教育効果が高そうですね。

欧米のカトリック国が、幼少の頃から聖書を教えるのも、
そういう狙いがあるのかも・・。



月別アーカイブ

2025

2024

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011


Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.