まいっちんぐな習字の先生
- カテゴリ:30代以上
- 2014/01/19 16:34:50
オレは左利き、右手で書く字が超下手くそだったので、小学校に上がるとすぐ、習字
を習わされた。遥か昔の事なので、時効ということで語ってしまうが、オレに習字を教えて
下さったM先生は、相当変わった人だった。
まず、教え方が変わっている、その日の課題をクリアすれば、レッスン終了。お茶とお菓
子タイムとなる。逆に、クリアできないと、30分は残される。誰だってお菓子タイムの方が
いいに決まっているから、頑張る。こんな方式。
先生の境遇も、数奇だった。推測50代(当時)。80を過ぎたお母さんと2人暮らし。
「あたしね、橋の下なのよ」
「????」
「母に、拾われたの。だから一生結婚しないの。母と暮らすの」
「えええええっ」
さすがに小1にも、その辺の事情は読み取れた。
しかし、M先生はムチャクチャ明るかった。習字の時間より、オレたちと会話している時
間の方が長かった。オレはこの緩いシステムが大好きで、小4の終わりまで通った。
小学4年の秋だったか?ある日、生徒がオレひとりの時、M先生が、まいっちんぐな事を
言った。
「ねえ、Aちゃん(オレのこと)、野球拳しよう」
「ええええええっ?」
オレはM先生のことを甘く見ていた。どうせ本気じゃないさ。受けてしまった。
ところが、じゃんけんに連戦連敗するオレに、一切のお情けはなかった。
完敗www
「はい、恥ずかしがってないで、気を付けっ!」
いやはや。オレはとても恥ずかしい経験をしてしまった。
先生は妙に真面目な顔つきで、本棚から一冊の岩波文庫本を取り出し、オレにくれた。
『魔の山』 トーマス・マン作。
これが、『ヴェニスに死す』なら、その時のM先生の心情を推し量りやすいのだが。
家に帰って、オレは姉に、聞いてみた。さすがに野球拳で負けたことは言えない。
「ねえ、M先生ってさあ、変な人だよね」
「そんなことないよ。立派な先生よ」
6歳上の姉は、幼稚園年長から小5までM先生に華道を習い、みごと師範の看板を得て
いた。M先生は華道指南が本来で、茶道と書道も看板を持っているというスーパーマルチ
なお方だったのだ。
「私が、どうしても師範を取りたいって言ったら、一生懸命指導してくれたわ。厳しくて、よく
泣いたけど。先生のおかげで、目標を達成できた。一度決めたら、絶対に止めない、意志
のひとなのよ、M先生は」
『うーん。確かに、一度決めたことは、やり通す人だなあ』
オレは、恥ずかしさと敬愛の念の混ざった感情を抱きつつ、『魔の山』のページをパラパ
ラとめくった。 了
*華道用語は調べて書いていないので不正確かもしれません*
ラツィオさん、その先生に気に入られていたのでは?
子供時代は美少年?^^
習字、私も習っていました。
おかげて硬筆大会はいつも入賞していました^^
今だったら、セクハラで訴えられますねw
野球拳をやるって分っているときには、絶対着物を着て行きます。
小物や紐が多いので、絶対負けませんw
男性陣のブーイングが凄いです^^;
習うときは両方とも習う方が多いようですが・・・
書道、習いましたけど、真面目にやってたつもりでしたけど、、、
(^。^;)アハハハ
たしかに面白い先生って、記憶に残りますよね~
それにしても、野球拳ってwww
や、野球拳!?えええ…せ、先生…
昔は個性豊かな先生が多かった気がします。
少年時代のラツィオくんにとっては過激すぎましたね…