別府鉄輪温泉・湯治日記 その2
- カテゴリ:レジャー/旅行
- 2014/02/21 00:33:07
関東や東北では自炊宿と言いますが、
別府では貸間旅館と言うみたいです。
そして別府の中でも特にここ、
鉄輪温泉は貸間旅館が多いところです。
鉄輪温泉の何がいいかと言えば、
それは街中から湧き上がるもうもうとした蒸気。
湯気という生易しいものではありません。
なぜなら、鉄輪温泉の温度は、ほぼ100℃。
高熱の源泉なのです。
しかも、それが街の至る所から、
湧いている言うより噴き出しています。
つまり、鉄輪温泉は、
街全体が巨大な蒸気機関の真上に乗っかっているような状態で、
ホテルや旅館は必ずといって良いほど、
熱湯と蒸気を利用するためにタンクとパイプで構成された装置、
通称「地獄」を持っています。
そして、この「地獄」が、
装置のいたる所に白・緑・黄土色した湯の花をこびり付かせながら、
盛大に蒸気を吹き上げているのです。
そのような装置が街の至る所にあるのですから、
街全体が一つのスチーム工場を形成しているように見えても
不思議ではないでしょう。
そして、どこの貸間旅館にも小さな「地獄」があり、
蒸気を利用した「地獄蒸し」の調理場があります。
つまり、温泉の蒸気を利用したスチーム料理ですね。
笊の中に材料を入れて、
「地獄蒸し」の蓋を開け、
その中に紐で吊すようにして笊を降ろし、蓋をします。
そうすると、
白菜や小松菜などでは2~3分、
サツマイモなどは20~30分程度で蒸し上がってしまうわけです。
研いだお米もお釜に入れて、
この地獄蒸しの中にいれておくと、
2合でだいたい40分程度で炊きあがります。
つまり、あらゆる蒸かしもの料理ができるわけです。
東北の自炊湯治場も何度となく利用している安寿ですが、
東北の場合、一番の難点は
宿が山奥の一軒家というところにあるため、
麓まで小まめに買い出しができません。
宿で湯治客向けの売店を開いているところもありますが、
買える食材がどうしても限られてしまうため、
宿泊する日数分の食材を買い込んでから
宿に入ることになります。
その点、鉄輪温泉は、
それ自体が一つの街ですから、
大きなスーパーマーケットもありますし、
街中には湯治客向けの商品を揃えた八百屋や魚屋もあります。
別府の海から山に向かって3キロ程度のところですから、海の幸も豊富です。
温泉街の真ん中には、
地獄蒸し料理が体験できる施設もあるので、
そこに行ってメニューを見れば、
どういう食材が地獄蒸し料理に向いているのかもわかります。
というわけで、
毎日、スーパーや近所のお店に買い出しに出かけ、
食材を眺めながら、
「さて、今日は何を蒸かして食べてやろう?」
と考える楽しみがあります。
初日は街を散歩して、
どこにどんなお店や施設があるか確認して、
買い出しを済ませて、おしまい。
そして、まずは買ってきた小ぶりのサツマイモを笊に入れ、
地獄蒸しの中に降ろして、
その後、そのまま宿の内湯に入りに行きます。
お風呂から上がった時には、
サツマイモが蒸し上がっている算段です。
ここの旅館は男女別の内湯と混浴の内湯が一つ。
どちらも小さいのですが、
混浴の湯はどっしりとした木造で、
湯船を見下ろすように不動明王が祀ってあります。
混浴には穴蔵のような所で横になる蒸し湯もあります。
混浴に誰も入っていなかったので、
早速、入ってみることに。
この旅館は、
お風呂に誰か入っている時は、
扉がしまっており、
お風呂に誰も入っていない時は、
扉をあけておくルールになっているようなので、
私が入って扉を閉めてしまえば、
他の人は気をつかって誰も入ってきません。
ここの湯船は、
お湯の注ぎ口に石が置いてあって、
石の置き方を変えることで、
湯船に流れ込むお湯の量を調整できます。
ですから、お湯の流れ込む量を少くして、
ぬるいお湯のまま、長い時間、
どべ~ と寛ぐことにしました。
ちょっと塩分の味がする塩化物泉という泉質です。
飲泉すると胃腸病によいという効能書き。
小一時間、ぬるい湯に漂った後、
お風呂から上がって、スウェットを着て、
部屋に戻る途中、
地獄蒸しの中に入れておいたサツマイモを回収して…。
う、う、うまい!
焼き芋ではないので、
ホクホクと言うより、しっとりした仕上がりですが、
甘くて美味しいです。
湯上がりに蒸かし芋、
ホッと一息のいい感じです。
さて、夕食の準備まで少し時間があるので、
これから6日間の態勢を整えましょう。
とはいえ、何のことはない。
万年床を設えて、
コンセントにスピーカー付きウォークマンやパソコンを繋ぎ、
卓の上にお茶・コーヒーセットや本を並べる程度。
次に米を研いで、水に浸しておきましょう。
部屋の中に食器棚があり、
そこに二人用の食器や鍋が用意してあるので、
(私の部屋は6畳に押し入れや棚がある部屋なので、
きっと二人用の部屋なのでしょう)
米を炊く鍋を探してみると…
あ… お釜…
電気釜ではありません、正真正銘のお釜です。
おそらく5合炊きの大きさで、
なるほど、この大きさだとすっぽり地獄蒸しの中に入ります。
ふーん、これでお米を炊くんだ。
30分ほど水を吸わせて、
いざ、お釜をもって地獄蒸しへ。
備え付けの使い込んだミトンを使って、
地獄蒸しの蓋をあけ、
笊や網に紐がついた道具の上にお釜を乗せて、
紐を持ち上げて、地獄蒸しの中に降ろしていきます。
こうして地獄蒸しの中に降ろさないと、
底から蒸気が噴き出しているので火傷してしまうのです。
地獄蒸しの案内板には、
米は30分から1時間程度の蒸し時間と書いてますから、
約50分、待つことにします。
その間に大根とワカメのみそ汁を、
こちらは炊事場のガス台で作り、
そしてメインの地獄蒸し料理の下拵え。
…と言っても、
笊に、もやし、シメジ、小松菜を敷き、
その上に、豚バラ肉を広げて載せただけ。
たれはポン酢と薬味のネギ、
そして大分名産のかぼすを買ったので、
それを絞って食べることにします。
(この季節は黄色いかぼすが出回るらしく、
緑色のかぼすより酸味がキツくなくて、美味しいです)。
お米が炊きあがった頃を見計らって、
お釜を取りに行き、
代わりに豚肉の蒸し料理を、
笊ごと地獄蒸しに降ろして、5分ほど蒸します。
蒸している間にお釜を部屋に運んで御飯を食べてみれば、
おおお~、しっかり炊けてる。
5分経ったので、
下にあてがうお皿をもって、
笊を引き上げに行きます。
おおお~、蒸し上がっている。
ちょっと蒸しすぎて、
もやしが縮んでしまいましたが、許す!
(もやしのシャキシャキ感を残すなら、
2分ぐらいがベストなんでしょう)
蒸す前は結構な量の食材だったので、
食べきれるのか心配だったのですが、
蒸してしまえば、葉物野菜は半分ぐらいの嵩になってしまうので、
ちょうどいい感じ。
いただきます~。
ううう~、小松菜がおいしい。
お湯で茹でてないから、素材の味が生きてます。 ☆\(ーーメ) グルメ番組か!
豚肉も、脂や旨味がお湯に溶け出さず、
しっかり残っている感じがします。
あっ、と言う間にごちそうさま。
食器類を流しで洗って、
玄米茶を飲んだら、
今日は朝早く家を出たせいか、もう眠くなってきました。
というわけで、まだ9時ですが、寝てしまうことにします。
おやすみなさい。
続く。
桜と温泉もいいですね。
鉄輪温泉は緩い傾斜が続く町なので、
雪もまた、いいかもしれない。
行ってみて下さい、別府の鉄輪温泉。
今回のように貸間旅館でのんびり逗留すると、
お財布にもやさしい旅行ができます。
街中に漂う湯気と霞と桜吹雪・・「地獄」で極楽でした^^v
行ってみたくなっちゃいますね
続きが楽しみです^^