雛人形
- カテゴリ:小説/詩
- 2014/02/21 12:46:30
小さなお雛様を飾った
桃の小枝に小さな菱餅
桃の節句にはまだ早いけど
早春を運んでくるお雛様
この雛人形は
あなたが買ってくれた
「かわいいね」と言いながら
白酒の代わりにワインで乾杯
小箱から取り出した時
思い出がよみがえる
デパートの店先で
あなたが選んだ雛人形
ぼんぼりの代わりに
キャンドルを灯して
部屋を少し暗くして
漂うのはあなたの頬笑み
行ってしまった恋
なぜ引き止めなかったんだろう
勇気がなかった
小さな小さな私の心には
3月3日を過ぎても
人形をしまいたくない
あなたが箱に入るようで
思い出にも蓋をするようで
桃の小さな花が
やがて花をつけるだろう
暗かったこの部屋にも
春の訪れが漂うだろう
もう少し待って
あなたを忘れることを
刻み込まれたこの想いを
小箱にしまうまで