飛梅
- カテゴリ:小説/詩
- 2014/03/06 03:23:01
春の兆しが訪れる頃
あなたのことを思い出す
二人並んで歩いた
梅の咲く河原端
梅の木が飛んで行くなんて
「ロマンがあるね」と
あなたと笑っていた
あのころが懐かしい
家家の庭先の
梅の花が咲いている
赤い梅白い梅
流れるようなしだれ梅
かぐわしい香りはないけれど
かすかに香るその香りに
私の心がうつる
ほんのりとしとやかに
あなたの胸に飛び込んで行けたら
こんな1日はなかった
勇気がなかった私
あなたは待っていたのに
素直になればよかった
自分の心に
意地を張ってはにかんで
別れが来たあの日
あの日はバラが咲いていた
その香りの中を
あなたは去って行った
背中をじっと見つめていた
悲しみは深く
思い出は近く
涙は頬を伝い
唇は黙ったまま
梅の木よ飛んで行け
私の心を乗せて
素直になるには遅すぎたけど
今やっと分かる
梅の木よ飛んで行け
私の想いを乗せて
もしもまだあなたが
一人でいるとしたならば