Nicotto Town



『線路は続くよ』

♯1 『桜の夢』

ゴトゴトと揺れる心地よい振動に眠ってしまったようだ。
目が覚めると、汽車は草原を走っていた。
窓を開けると、草の香りとともに、一枚の花びらが舞い込んできた。

「桜?」
どこから来たのだろう?
「次の駅から風に運ばれてきたみたいですね」
通りかかった車内販売の女性が言う。
「次の駅には桜が咲いてるの?」
「はい。『桜の丘』、永遠に桜が散り続けるところ。お花見の名所なんですよ」

車内販売で買ったお酒を飲みながら窓の外を眺める。
流れゆく景色の中に舞う桜の花が増えてゆき、やがて汽車は駅に着いた。

駅と行っても、ぽつんとベンチがひとつあるだけ。
ベンチの脇にある大きな木には、満開の小さな薄桃色の花。
その花たちは、次々にひらひらと舞い落ちてゆく。
不思議なことに、どんなに花びらが散っても、満開の木は変わらない。
地面に落ちたはずの花びらは、積もることもなく、どこかへ消えていく。
次々に咲いては、散り続ける花びらたち・・・。

「『桜は散るからこそ美しい』か・・・」
でも・・・

「ねえ、あなたもそう思う?」
声に振り返ると、桜色の服を着た少女が立っていた。
「花びらたちは、散ってしまったらもう終わりなの。咲いていられるのはほんの一瞬だけ。人が、その姿が好きだから」
必死な顔で訴える少女。
わたしは・・・

「思わないよ。舞い散る桜は綺麗だけど、桜の美しさは、もっと違うところにあると思うよ」
「・・・」
「散らない桜は、散る桜よりステキだと思う」
窓の外、永遠に散り続ける桜に目を移して言う。

「ありがとう。あなたがそう言ってくれたから、わたしは探し続けることが出来る」
嬉しそうな声。
振り返ると、少女の姿はなく、桜の花びらが一枚、床に残されていた。

指で拾い上げると、再び車内販売の女性が通りかかる。
「どうしました?」
「今ここに・・・」
手のひらの花びらを見つめながら、聞こうか迷う。
あれは、お酒に酔って見た幻だったのかもしれない。

「もしかして、桜色の女の子のことですか?あの子なら、前の車両に行きましたよ。座席がそちらだったみたいですね」
(幻ではなったんだ)
そのことが妙に嬉しかった。

「あの子、どこに行くのかしら」
「切符は『桜の夢』になってましたよ」

やがて、汽車が動き出す。
桜の少女はどんな『夢』を見つけるだろう。
汽車はトンネルへと入って行く。
この先には、どんな景色が広がっているのか。

汽車は走り続ける。


アバター
2014/03/14 21:23
ステキね・・・(‾◡◝ )
アバター
2014/03/14 15:22
今日は~♪

~ゆちゃまの物語は、いつもステキ~♪ 

ローカル列車が、ゆっくりゆっくり…ガタンコトンと揺れながら走る様と…
春の緑と爽やかな風と薄桃色の桜が、今目の前に広がって~心がほっこり~しました^^

桜の駅の一駅前から…花びらが、入ってくるのも…情緒があるし…^^
花びらが、お酒に落ちたら~桜酒ですねっ^^

そしてその花びらが…○○さんですね^^(後の方の為に…伏字にします<えっ?バレバレ?w>)
と思わしといて…最後にどんでん返し(?)ですね^^
だんだん…高度になってきて、ひねってきましたね~w

今年こそは、絶対~「花見」へ行きたいと思いました^^

アバター
2014/03/14 11:25
♯1とか書いていますが
次のお話は何にも考えてません(笑

一話で打ち切りになったりして・・・

(#^.^#)



月別アーカイブ

2025

2024

2023

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011


Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.