「お父ちゃん、がんばってや」
- カテゴリ:仕事
- 2014/03/22 09:55:00
洋子さんが、まだ、曲がりなりにも一度目の結婚で幸せだったころ、
大阪の西成警察から、電話が入りました。
思い当たる節がない、旦那と旦那側の実家は、
何事かと、びっくりしましたが・・・。
洋子さんのお父さんと思われる人が、
変死体で見つかったので、
身元確認に来て欲しいとのことでした。
洋子さんが、お父さんと生き別れたのは、子供の頃、
今頃、死体を見ても分かるはずがないと、
誰もが思って、洋子さんを止めました。
しかし、洋子さんは、行ったのです。
「わたししか、見届ける人がおらんのやて。
分かれへんやろうけど、行ってくるわ。」
冬の寒い日のことでした。
洋子さんのお父さんは、あいりん地区の2畳一間のアパートで、
小さなコタツを抱えるように、亡くなっておられました。
コタツの中の肉は腐乱し、
上半身は、寒さの中で凍っていたのだそうです。
うつぶせで亡くなられたので、
顔は、とてものことに、判別不能だったそうです。
宿のおかみさんと思しき人が、洋子さんに話しかけてきました。
「あんた、娘さんやろ、あんたやろ。」
洋子さんは、驚きました。
「ピンクの万年筆、見いひんかったか(見なかったか)、
あの人なあ、いつも、わしには娘がおるって言うてはった。
いつか、娘に会うたらなあ、このピンクの万年筆、やるんやって言うてはった。
ピンクの万年筆、見いひんかったか。
あんたのやで。」
洋子さんは、家に帰ってきたとき、
そのことを話してくれました。
手には、古い安物の万年筆が一本、
たしかに、軸がピンク色でした。
旦那側の親族は冷たく、
「気持ち悪い、そんなものは捨ててしまえ」と笑っていました。
でも、わたしは、知っているのです。
洋子さんは、町で、ホームレスや空き缶拾いをしている人を見かけると、
小さな声で、
「お父ちゃん、がんばってや」と、その後ろ姿にささやいているのです。
「うちなあ、あれから、そこいら中に、
お父ちゃん、見つけられるようになってん。」
洋子さんは、そう言って笑いました。
だから、やっぱり、わたしにとって、
洋子さんは、大事にしたい人の一人なのです。
でも、お家賃、払ってね~、
しつこいけどー。
当時、その万年筆を見たとき、
「高1コース」とかの学習雑誌を年間契約したときにもらえる品だったように思います。
お父さんにすれば、なにかで手に入れたその万年筆を、
娘に贈る貴重品に違いなかったのでしょう。
いつか、万年筆を渡せる日がくると、信じておられたのかもしれません。
もしそれを持ってから悪い事が起こったらお寺にでも
持って行きますが、そうじゃないなら持ってます。
娘さんたちは、今の時代の流れに翻弄されてしまいました。
ドレッド・ヘアや、まつ毛エクステ、カラコンを変えては、
現実からどんどん遠ざかった世界へ行ってしまいました。
長女は、未婚で外国人とも子供を産みました。
言葉も通じない南アメリカの人です。
密入国でないことを祈るばかりです。
洋子さんの境遇、ひどいですね。
娘さんたちは高校に行かなかったのですか?
すいませんが、また洋子さんの境遇を話してください。
こんなことはいけないんでしょうが、いかに今の自分が幸せな境遇にいるのかと
いうことを噛みしめることができます。
また、そんな人生の人もいるのだ。自分は幸せだなと親への感謝の気持ちを
再燃させ、未来への自分の原動力にすることができます。
洋子さんは、もっともっと幸せになれたはずなんです。
わたしも、同じ気持ちです。
洋子さんの娘たちが、どの子も高校を卒業できなかったのが、残念です。
洋子さんが、一番行きたかったでしょうに、
娘たちは、遊ぶことを優先してしまったのです。
その娘たちも、みんな、今、ベイビーを抱えていますから・・・
親になって、これから学ぶのかもしれません。
(あくまで希望的観測ですが・・・)
あたりまえのことって感じて、生きてきました。
あたりまえのことを、あたりまえにするのって、
一番難しいとおもいます。
わたしも、娘にそんな切ない思いをさせないように、
がんばっていきたいです。
お父ちゃん、ほんまに、頑張ってや!と、言いたかったです。
だから、問題の多い部分も、洋子さんの一部分なので、
あとは、何とか、洋子さんがそこんところを、乗り越えてくれれば…と、願うのです。
でもね、学ぶ機会がなかったんだものねー、
難しいわ。
洋子さんは、家事とお金の管理の仕方が、
まるっきりわからないようなんです。
そこんとこがねー、
クリアできればねー、
天性のきらめきがある人だと思うのです。
誰かを恨むことをしないって、想像つかないほどのひろい心の持ち主なんでしょうね。
で、あればこそ、こんないい娘をもったお父さん、ちゃんと生きてほしかった。
切ないです。
縫製工場に住み込みで働くしか、生きる道がなかったのです。
だから、高等学校を出ていないというのは、
タダならぬコンプレックスを、生じさせるものなのです。
洋子さんにとって、勉強できた人っていうのは、
恐ろしい存在なのです。
高校へ行けることが、
親がいることが、
どれほど、人生にとって有利なものか、
お察し頂けたと思います。
チャンスは、活かさなくっちゃあねえ~♪
ますます洋子さんを応援したくなりました!