煙の向こうに
- カテゴリ:小説/詩
- 2014/04/18 07:49:09
いつものカフェに座れば
あなたが入ってきて
私の向かいにわって
笑顔で注文をする
今日はあなたと会った記念日
そんなことは覚えていないだろう
何くれとない会話
そうして時間は流れて行く
いとしかったあなた
いつもいてくれることが
なによりうれしかった
記念日なんて覚えてくれなくても
タバコを吸うあなたの
白い煙の向こうには
ちょっぴりかすんだあなたの笑顔
そんなことさえ忘れない
今は誰もいない向かいの席
あなたが来るようで
いつも座って待っている
小さなタバコの箱を置いて
いつの間にか
別れていった二人
私の心はこんなに
あなたを求めているのに
小さな風が
緑の葉を揺らす
青々としたその色が
今は辛すぎる
タバコに火をつけて
煙の向こうに
あなたを探す
もういないのに
思い出が強すぎて
はかない心が強すぎて
記念日が重すぎて
一人の時間が重すぎて
もう涙はたくさん流した
絞り出すように流した
忘れられないあなた
ゆらゆらする煙の向こうにはいない
席を立とう
タバコも捨てよう
でも今はまだ
思い出に浸っていたい
はやく タウンに帰ってきてね。