禁断の力
- カテゴリ:日記
- 2014/04/19 12:39:02
ペット・セマタリー
スティーヴン・キング
深町眞理子 訳
文春文庫
「怖い」というより「哀しい」話。
愛する息子が交通事故で、死んでしまった。
その死を受け入れられない、受け入れたくないために「ある力」に手を出してしまう。
ペット霊園のそのまた奥、近づく者さえいない深い深い森の中の「ある力」に。
それが「呪われた力」だと知りながら・・・。
しかも、何度も同じ過ちを繰り返す、という点が愚かしくもあり、哀しくもある。
「呪われた力」は、決して完全な形では、家族を返さない。
愚鈍になったというレベルから、中身は完全に別の(そして邪悪な)「何か」に入れ替わってしまったというレベルまで。
(決して完全ではないが)良い結果が出る可能性があるからこそだろうか、「呪われた力」には中毒性がある。
「前の奴は失敗したかもしれないが、自分は、うまくやれるさ。」と。
ただ、実際は「リスク」を過小に、「リターン」を過大に評価しているだけ。
そして、この「呪われた力」には、伝染性も。
「あの人の悲しむ姿を見たくない」
「あの人は悲しみに耐えられないのではないか」
という思いから、知る者は、知らない者に「呪われた力」の事を伝えてしまう。
が、それこそ「呪われた力」の狙い。
大きな「悲しみ」を抱えた者を自分の所に呼び寄せ、その「悲しみ」を糧とする。
そして、一度、「力」を利用すると、いずれ再び利用しなくてはいられなくなる。
得てして新たな「犠牲者」を連れて・・・。
ただ、この「呪われた力」そのものは、本書のメインではなく、「死」(裏返せば、「生」もしくは「愛」)がテーマ。
文庫本で上下巻に分かれていて、上巻では飼い猫のチャーチにまつわる奇怪な話(それが下巻の前フリになる)があるものの、概ね主人公の幸せな様子が描かれる。
特に上巻の最後の方の仲睦まじい父と子の様子の描写が印象的。
そして「悲劇」は下巻の冒頭に起きる。
・・・というか、下巻は、いきなり「悲劇」が起きた後から始まる。
主人公が半ば自動で動きながら、息子の葬儀の準備をしつつ、「悲劇」の瞬間を思い出していく、という形式。
その記憶の中では、ラスト、間一髪で息子を救うが、現実に戻った時、息子はいない。
所謂「死亡フラグ」を使った展開。
それに加えて、妻の養父との不仲による修羅場の話も交えて、主人公の喪失感が浮き彫りになる。
さらに上下巻の分かれ目もうまく利用しているのでは、と思った。。
(単行本の時は、どうなっていたか知らないので、単に偶然かもしれない。
が、キングならやりそうなので。)
ただ、子供の描写が生き生きとしている分、同じくらいの年頃の子供がいる人には、読むのがツライかもしれない。
救いの無いラストなので、ご注意を。
スティーヴン・キング版と言う感じかしら~?
今度、読んでみます~。