レティーシア、吼える
- カテゴリ:自作小説
- 2014/08/03 10:47:41
われの名はレティーシア・アヴァロニア。女帝である。と、大声で言ってやりたいが今は女剣士レティとしてブルラ国の革命軍アジトにいる。
この国では搾取が起きている。民を労働力として働かせ、本来支払うべき対価を与えず、ピンハネしている。
資本家の下の下だ。
それではいずれ滅びる。
鬼となっては鬼に喰われるは道理。
鬼の名前はブルラ国王、サルマ。
サルマ・ブルラを倒す事。
民の指導者はエッセンハイム・オルキス。今も演説を行っているが・・・こやつも資本家だ。自らの勝利と他人の勝利の重なるところを探せる人間。
われはこのエッセンハイムに女剣士として雇われている。
アヴァロニアの女帝であるわれがだ。
革命はまもなく行われる。
作戦の規模、本当の支援者を考慮に入れても・・・この作戦は失敗する。
そこでわれの出番だ。
王国警備隊を他国からの戦争へ連れて行ってやればよい。そう、われはただ大軍を集め、配置させてやればいいだけ。
動く必要は無い。
兵力の分散だ。くくく。
これで本来、失敗する作戦も功をなすというものだ。
フェンリル、サルマ・ブルラを喰らい、われはこの国の盟主と和睦を結ぶとしよう。エッセンハイムは信頼できる男だ。
そう、われはこの国をそのまま飲み込むほど巨大な狼、黒き狼、フェンリルに話しかける。
滅ぼそうと思えばいつでもできる。
誰もわれの魔力にすら気づいていない。
すでにわれの手のうちにあるという事さえ気づいていない。
われ魔女にあらず。
われ魔法使いにあらず。
われ魔力の根源なり。
われ魔王にして女帝なり。
そしてサリエル。死の天使だけが・・・われの魔力をマナ(愛する力)に変換してくれる。
ありがとう、愛しています。
ごめんなさい。許してください。
不思議な四つの言葉がわれにマナという新しい力を与えてくれる。
「おい、レティ。聞いているのか?」
と、エッセンハイムは言ってくる。
「すまん。聞いてなかった・・・何だ?何か用か?」
「革命はいよいよ明日。明日にする事にした」
「そうか。いい知らせでもあったか?」
「いい知らせどころの話ではないよ!あのアヴァロニアの女帝様が、大軍を配置してくれるという親書が今日届いたんだ。これほど心強い事はない。これで兵力を分散できる。国王を倒せる!」
「ああ、倒そう。じわじわと本当の恐怖を味わわせて・・・」
「そういえばレティは国王に恨みがあるんだったな。あまり私情にかられるなよ。大局を見失って欲しくないんだ」
「エッセンハイム。大丈夫だ。大局は見ている・・・明日の戦いで一番危険なのは国王側近の魔法戦士部隊・・・そうだろ?」
「そう、あいつらは強敵だ。魔法に対する防御は君に教えてもらった通り、全員分用意したよ。相手は氷の魔法使い。この地域を支配していた氷の魔王。氷狼フェンリルの魔力を使役してくる。上級者には氷を狼に変化させて攻撃をしてくる魔法使いもいるみたいだ」
「エッセンハイム。明日はその上級者のみとの戦いだ。氷の狼にまたがり、氷の自在に変化する武器を持った兵士たちとの戦いが、一番激戦となる」
「そうなのか・・・。市民たちでは勝てないのか。」
「エッセンハイム・・・何も心配はいらない。魔法戦士がどれだけ集まろうとわれ一人にも勝てない。その側近たちはわれが一人で片付ける」
「レティ。君はたしかに強い。側近の数は軽く500はいるんだぞ。いくら君でも」
「エッセンハイム・・・われはただの剣士ではない。まだお前にも見せていないが、われもまた氷の魔法を使う者だ。そのわれが・・・言っている。数は問題じゃない。お前は明日、魔法の強い、弱いは何かという事を知るだろう」
「そうか。君も魔法戦士だったのか・・・それでもまだ理解できないし、君一人に任せる事はできないよ」
「・・・エッセンハイム。われは明日、おそらくそなたからも誰からも怖れられる。畏怖される。必ず。ゆえに戦いが終わればわれは去る」
「レティ。覚悟だけはよくわかったよ。魔法戦士の戦いでは君に先陣を頼むから。それでいいね」
「それで十分だ、エッセンハイム」
舞台は整った。あとは明日を待つのみ。
われを騙し、われの権力と地位を手に入れようとした罪、今こそつぐなわせる。
その死を持って。