季節の移ろい
- カテゴリ:小説/詩
- 2014/09/24 09:51:13
昼下がりのカフェで
道行く人を眺めて
そよ吹く風が
本のページをはらはらとめくる
読むことも忘れて
部屋に忘れられた本
あなたの香りがする
それはもう消えたけれど
私には分かる
抱き会ったあの日のままに
並木の葉はまだ
散る季節は来ないけれど
もうすぐ来るだろう
人の足をカサカサならす時が
そうして私の心さえも
あと少しあなたに抱かれたかった
寒い季節にさよならするまで
そんなことすら夢になって行った
まだ思い出になるには早すぎて
手にはぬくもりが宿っている
人にはうやまられていた二人を
引き裂いたのは眩しい太陽
目を伏せている間に
あなたが見えなくなっていた
あなたもきっとそうだったのだろう
側にいて欲しかった
笑顔を交わし合いたかった
右手の薬指にはあなたがくれた指輪が光る
捨てきれない自分が今でも
あなたを呼んでいるのか
ガラス越しにあなたと手を触れ合っても
何も伝わって来ないのに
ガラスの向こうに去っていくあなたを
見送るしかなかった
ガラスが行く手を阻んで
たとえもう一度あなたに会っても
あんなときめきはもう
帰ってこないかもしれない
こんな短い時間でも二人が
別れていた事がきっと邪魔をするだろう
見るでもない時間を見て
時は過ぎることを思い知って
その中に隠れていたものを見つけて
私は一つ進んだのだろうか
進まなくてもよかったのに
季節が深まって行ったら
あなたのことも忘れるのだろうか
その残り香も横顔も
風に流されていくのだろうか
今はまだ分からないけれど
踏みしめられた木の葉が
粉々に崩れるように
私の愛も崩れていくのだろう
そして形を失った時に
本も捨てられるのかもしれない