Nicotto Town



共感できず・・・

世界を変える日に
 ジェイン・ロジャーズ
  ハヤカワ文庫


バイオテロにより、妊娠すると赤ん坊と一緒に母体も死に至らしめる病気(MDS(母体死亡症候群))が世界中に蔓延した未来。
子供が生まれなくなってしまったため、このままではいずれ人類は絶滅してしまう。


主人公の少女、ジェシー「世界を変えたい」と思い、一時期、学生運動に加わるものの、様々な事件により活動から距離を置く。


そんな中、ジェシーの父親が勤める研究所がMDSのワクチンを開発するが、それは、大きな代償を伴うものだった。
それを知ったジェシーは・・・。


原題を直訳すると「ジェシー・ラム(主人公)の遺言」
このタイトルから想像できるかもしれないが、物語の冒頭は、ほぼラスト間近のシーンから始まる。
(当然、最初は、そういう展開とは分からないようになっているが・・・)


こういう流れの話は、キライではない。
が、主人公や、その周囲の登場人物に共感できなかった


MDSのワクチンは、赤ん坊の方には効果があるが、母体には効果が及ばない。
つまり健康な赤ん坊を生まれさせるためには、母親を犠牲にしなければならない。


作品中でも、当然、これが長期的な解決策ではない、としている。
が、それでも「いいニュース」として、ジェシーの父親に語らせているのが理解できなかった。


「呪われた方法」の間違いでは?
せめて「いい方法ではないのは分かりきっている。が、このままでは人類が滅亡するから、四の五の言っている場合ではない」とでも、苦悩してくれれば、まだしも・・・。


結局、ジェシーは、自ら「犠牲」となる事に志願する。
ただ、その決断に至る過程が、自分には理解しにくかった。


ジェシー自身も、周囲からの圧力を受けた上での決意ではない、と言っているし、「犠牲」を募る制度にも、第三者が周囲からの圧力が無い事を慎重に見極める、という事になっている。


が、それで本当に「周囲からの圧力がない」と言えるだろうか?


「世界を救うには、この方法しかない!」
「それができるのは、あなただけだ!」
「世界を救う"救世主"募集!」

とか美化して、さんざん宣伝すれば、それが「圧力」になるのでは?という気がする。
もっと進んで、小さい頃から、「犠牲」になる事は、「素晴らしい事」だと刷り込んでおけば、疑問さえ感じないのでは?と思った。


さらに、共感できないポイントとして、ジェシーが「犠牲」となる決断をするあたりと、「犠牲」となる事を知ったジェシーの父親の態度がある。


ジェシーが「犠牲」となる事で、両親や親しい人たちが、どれだけ苦しむかを考えた様子は、あまりない。
自分は、それで満足かもしれないが・・・。


それ以上に、憤りさえ覚えたのが、ジェシーの父親の態度。
「犠牲」が必要な方法を「いいニュース」と言いながら、自分の娘が、その「犠牲」になる事を知った途端、やめさせようとする。
・・・「身勝手」としか言いようがない。


ただ、この父親の態度は、「集○的自○権」の話でも、そのまま当てはまりそう、と思った。




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