ドラマ【すべてがFになる】
- カテゴリ:テレビ
- 2014/10/29 14:31:56
【感想】うむ。やっぱりあまり科学とか関係ないトリックでしたね。思うに、これは森氏のみならず新本格派全体で言えることですが、心理描写が甘いのです。推理小説の登場人物は記号のようなものなので、名前すらつけるのが面倒…という作家さんもいるようで、まずトリックありきで、それから動機などの背景を考えたりすることが多く、下手に人情を絡ませると陳腐以下になってしまうこともあります。それはまぁ仕方ないですね。人情溢れる作品を読みたければ、ミステリーを選ばなければよいだけであって。しかし、いくらミステリーでも、心理描写が甘いにとどまらず、不自然になってしまった場合、読んでいて腑に落ちない感じがしますよね。今回もそうでした。木熊教授と助教の里佳は、生き別れになった父子で、市ノ瀬と半年前に行方不明になった増田とつきあっていた。しかし里佳はゼミの大学院生・丹羽に乱暴され、それを丹羽とつきあっている珠子が増田にリークしたため、増田はショックを受け丹羽に切りつけた直後に失踪した。その後、丹羽と里佳は婚約したと、木熊と里佳に報告に来た。うん、不自然ですよねw ここで一番のキーパーソンは珠子なのです。まず、丹羽が里佳に乱暴した時、珠子は丹羽とつきあっていたのかどうかが気になりました。交際中の男性が別の女性を無理やり犯そうとしたことを知ったら、普通女は激怒するものですよね。それがきっかけで別れるくらいのインパクトはあります。よしんばこの時点ではまだ珠子は丹羽とつきあっていなかったとしても、珠子が増田にしゃべったということは、知っていたということ。女性に乱暴するような男性と交際しようという気持ちがまったくわからないです。なので、この話が成立するには、まず丹羽がどんな人物であろうと構わないくらい、珠子の方が丹羽にベタボレしている必要があります。つまり彼女は、丹羽が乱暴したという事実を、里佳が丹羽を誘惑したというように、歪んで受け取ってしまったのではないでしょうか。それなら交際中の増田に告げ口するのもわからないでもありません。そして、その後これみよがしに、丹羽と婚約したことを里佳に報告することもありえるでしょう。もちろん彼らは木熊が里佳の父親だなんてまったく知らなかったのでしょうね。これだけ補ってやっと、この事件の背景に納得がいきます。なのでやはり、心理描写が足らないと言わざるを得ないでしょう。ちなみにこのドラマ、原作ファンからの評判はよくないようですね。私はそれほど抵抗がないのは、原作は読んでいるものの、ファンというほどではないからでしょうかw