Nicotto Town



「北風物語」

冬の街を北風が走り回っていました。

「どうして誰もいないの?

 折角街まで遊びに来たのに

 誰か、僕と遊んでよ~」


北風の吹く寒い街。

木々は葉を落とし、人の姿もなく、北風の声に応えるものは誰もいませんでした。


「みんな僕の事が嫌いなのかな・・・」

葉を落とした街路樹の枝に腰掛け、北風はつぶやきます。

すると、木の根元の方から声が聞こえてきました。

「そんな事無いんだけどね」

「でも、わたし達は動けないのよ」

「ここから出してくれたら、一緒に遊んであげても良いわ」


北風が見下ろすと、そこには、枯れ葉をいっぱいに詰めた大きなゴミ袋が、ぽつん、と置かれていました。

声は、枯れ葉達のものでした。


「お安い御用さ。それっ」

北風がゴミ袋を吹き飛ばすと、中から枯れ葉達が飛び出します。

「ふう。やっと自由になったわ」

「ありがとう、北風さん。何をして遊ぼうか」

「鬼ごっこが良いわ、久しぶりに街を走りたいもの」


北風と枯れ葉は、鬼ごっこをはじめました。

北風がオニになり、枯れ葉達を追いかけます。

枯れ葉達は風の中、街中を走り回ります。


「捕まるものですか。こっちこっち~」

「待て~」

「ここまでこれるものなら来てみなさい。あはは~」

「待て~。あはははは」


公園や道路、家の庭や側溝の中まで、街のあらゆるところで追いかけっこ続ける北風と枯れ葉達。

遊び疲れて一休みする事にしました。


「僕はこの樹にもたれて一眠りするよ」

「わたしはここのお庭にするわ」

「わたしはこの公園が気に入っちゃった」

「わたしは、北風さんの隣の樹ね」


思い思いの陽だまりで、お昼寝をはじめました。


どのくらい眠っていたのでしょう。

北風が目を覚ますと、何だか街の様子が変わっていました。


「あれ?ヘンだぞ。街の色が違う。何だか暖かいし・・・。ねえ、枯れ葉さん」

北風があたりを見ましても、枯れ葉の姿はどこにもありませんでした。

「枯れ葉さん、どこに行ったの。ねえ、またいっょに遊ぼうよ~」


すると、土の中から声がしました。

「ごめんね、北風さん」

「わたし達はもうそこでは遊べないの」

「でも、わたし達の子供がそこにいるから」

「一緒に遊んであげてね」


見ると、家の庭には、小さな草が芽を出していました。

街路樹の枝には、生まれたばかりの葉っぱが、お日様を透かして光っていました。

公園の空き地では、土筆たちが顔を出しています。


「あなたが北風さんね」

「お母さんから聞いたわ、あなたの事」

「ねえ、わたし達と一緒に遊びましょう」


街のあちこちから、北風に語りかけました。


「いいとも。さあ、何をして遊ぼうか」


生まれたばかりの木の葉をゆらし

小さな草の芽をゆらし

つくしんぼうもゆらして

街を風が吹き抜けます。


その日、街には春一番が吹きました。



おしまい







 


#日記広場:30代以上

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2014/12/03 13:39
今日は~♪

うふふふ…北風さんの可愛いお話~♪
思わず、PC前で、笑みがこぼれました~(●^^●)
(家族が、傍にいなくて良かったwww)

寒くて辛い北風さんも~こう考えると~可愛くなってしまう~♪
まさしく~『~ゆちゃまマジック』ですね^^
今~「ほっ」として心が、とても温かくなりました。ありがとうございます~♪

私も寒さに弱いので(喘息とかあるしw)
冬が始まったばかりですが~w 早く春が、来てほしいです^^
~ゆちゃまの暖かいブログや庭の花を観ながら~春を待ちたいと思います~^^
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2014/12/03 11:29
ちょっと季節が違うかもですが

寒い日なので、こんなお話も良いでしょ?

(#^.^#)



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