緑の想いと視線
- カテゴリ:自作小説
- 2014/12/17 20:03:55
黄色い天使と赤い人間。
第五章 緑の思いと視線
*ウィト*
これは僕と奏先輩にしかわからないことなのではないだろうか。
先生がタツキ先輩に大好きだよって伝えられなかったと話したとき、アキラ先輩が先生のことをまるで敵を見る目で見つめていた。
きっと、喋っていた先生も見つめていた先輩もお互いが気づいていないこと。
先生もアキラ先輩もたつき先輩のことが好きなのだ。
先生は夜に先輩を迎えに天界に行ってくると言った。
僕たちは先生に無茶を言って連れて行ってもらうことにした。
それから、先輩は月に4回という決まったペースで天使の仕事を行い続けた。
それに比例するかのように僕たちもたつき先輩を迎えに何度も天界に訪れた。
そんな日々が始まってから10ヶ月が経とうとしていたときのことだった。
ある日、先輩が急に先生以外のメンバーはもう天界に来てはいけないといった。
よっぽどの理由があってのことなのだろう。
でなければ先輩は来てはいけないなどと言ったりしないと思ったからだった。
僕たちが天界に行くのをやめてから1ヶ月。
吹く風が体をキンキンに冷やす季節になった。
タツキ先輩が体調を崩して熱を出した。
体調が悪かろうと天使の仕事はしなくてはいけないらしくてタツキ先輩はフラフラの状態で仕事着に着替えていた。
「先輩、ダメです!
動いたら体調が悪くなる一方です!」
奏先輩が珍しく声を荒らげた。
「もともと、この世にはない命なんだもん・・・
どうなったって神様の勝手だよ・・・」
力なく先輩は微笑んだ。
どうして僕たちがこんなに必死に先輩を引き止めているか。
理由は先生が仕事のため先輩についていられないからだった。
「とにかくこの部屋からは一歩も出しません!
無論、おれたちも出るつもりはないので寂しくはないですよ」
そういって笑う奏先輩は実に怖かった。
この部屋は特殊な造りになっていて、外側から鍵をかけても内側から鍵をかけてもどっちにしろ鍵がないと開かない仕組みになっている。
飛んだサービスだ。
まぁ、食料も十分だし、トイレもあるし、生活には困らないだろう。
って、なんで僕はここで暮らす設定で進めているんだろうか。
とにかく!
鍵は奏先輩が隠してくれたし、あとは先輩が落ち着いてくれたr・・・・って
「先輩!?」
僕の目の前で先輩の体は崩れ落ちた。
すぐさま先輩を抱き上げる。
顔は真っ青で手は冷え切っていた。
まるで死体のように。
ようやく落ち着いた僕は先輩をベッドにそっと寝かせた。
先輩はいつもと違って何日も何日も帰ってこなかった。
1週間が経った頃、アキラ先輩が立ち上がった。
「俺、行ってくる。
タツキっく、寂しがり屋だからきっと今頃、一人ぼっちで泣いてる。」
何も考えていないかのような表情をしていた。
「タツキ先輩にあれほどダメだと言われていたのにアキラは馬鹿なんですか」
奏先輩の声もろくに聞かずにアキラ先輩は部屋を出て天界に通じる部屋に向かって歩いていった。
二人きりで部屋に取り残されたぼくらの小さな嗚咽が重なり合った。
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今回はいつもより短いです!
次回でラストになるかと思います!
もう、ひとり書きながらニヨニヨしちゃってます、
ここまで読んでいただきありがとうございました!
今回は、あんまりその人の心情とかって書かれてないのな
今日あった情景を描いてるみたいな書き方だなー、って個人的に思ったw
次回でラストかー…うん、ファイト!