Nicotto Town



大好きな家族へ【オリジナル】

あるところに名前のない少年が住んでいました。
少年の両親は自営業を営んでいましたが、時代の移り変わりによって儲けがありませんでした。
父親は酒に溺れ母親は少年をおいて家を出ました。
少年はあるとき床に落ちていた一輪の花に触れました。
それを知った父親はその日、自ら命を断ちました。
孤独になった少年は隣町にある神社に引き取られました。

この少年は後に紫姫という名を新たな家族にもらいました。


*紫姫*

気分が悪い。
何かが上がってくるような感覚。
すぐに近くのゴミ箱にこみ上げてきた何かを吐き出す。
「けほっ・・・・か・・・っ」
真っ赤な真っ赤な花がゴミ箱の中には落ちていた。
「は・・・な・・・・・?」
兄貴は用事で紫音は学校で琥珀さんは街に出ていて家にいない平日の昼間のことだった。

一通り家のことが終わると小さい頃からせわになっている病院に向かった。
「あー・・・・紫姫。
 これはな、花吐き病っていう奇病だ

 正確には【嘔吐中枢花被性疾患】と言ってな、

 原因は人によって違うんだが、それをわかってもらえると治ると言われておる。」
頭の中が真っ白になった。
初めて聞く名前の病気。

「これって伝染ったりとか・・・・・」
「お前の吐いた花に触りさえしなければ感染はしないはずだ。」
隠し通せば誰も触らなくて済む・・・・。
「このこと、兄貴と紫音には秘密にしてもらっていいですか?」
先生は優しいからわかった、とだけ言った。

花吐き病・・・・・。
俺と同じ症状を持った人を昔1度だけ見たことがあった。
その人は俺が5歳の時まで親だった人だった。
俺と同じように花を吐き、最後は自ら命を絶った。
父さんが花を吐いて・・・・・俺はどうしたんだっけ・・・・・?
たしか、花に触って・・・・・。

”花に触って?”

俺はそれで感染したのか・・・・。
だけど、なんで今更・・・・?

まぁ、いっか。
とりあえず、仕事終わらせないと。


*紫月*

家に帰ると誰もいなかった。
紫音は学校で琥珀は街に用事で出ているのだが、紫姫は・・・・?
「紫姫ー?」
家中の部屋を見て回る。
最後に来たのは紫姫の部屋。
襖を開けてすぐのところにゴミ箱があったらしいが、気づかずに蹴ってしまいゴミ箱からゴミが飛び出した。
ゴミ箱の中にあったゴミはただ一つで真っ赤な花だった。

「なんだこれ。」
拾おうと手を伸ばす。
「触るな。」
背後から紫姫の声がした。
けれどその声はいつもの数倍怖かった。
「それには
 触るな・・・。」
紫姫が俺の目の前に落ちている真っ赤な花を拾って袋の中に詰め込んだ。
「俺の部屋にある花には触んな。」

紫姫はそれだけ言うと俺を部屋から追い出して麩を閉めた。
「何か、隠してるのか・・・・?」

その日から紫姫はあまり部屋から出てこなくなった。
飯の時や掃除などが終わるとすぐに部屋に戻る。
琥珀も紫音も不思議そうに紫姫の後ろ姿を見ていた。

「なぁ、紫姫。
 体調、悪いなら病院行けよ?」
中からはもう行った。
ただ、その一言だけが返ってきた。
「で、どうだったんだ?」
俺が聞き返す。
「なんともなか・・・・うぇ・・・・・・」

何かを吐き出す嫌な音が聞こえた。
襖を開けようとする手をとめて、「あぁそうか・・・、じゃあ、お大事に・・・」とだけ言って俺は行きつけの病院へ向った。

病院で先生をしつこく問いただすと先生はため息をつきながら答えてくれた。
紫姫は花吐き病という奇病であること。
吐いた花に触れなければ感染しないこと。
原因を見つけずに放っておくと死に至ること。
ちなみに紫姫が吐いた花はサルビアという真っ赤な花だったらしい。

花言葉はたしか・・・・・・家族愛。

紫姫はもしかすると・・・・。

家に帰るなりなんなり俺は紫姫の部屋に飛び込んだ。
「紫姫、お前もしかしてあのことで悩んでたりするのか?」
紫姫はびっくりした様子で俺を見上げた。
「兄貴・・・・後ろ・・・・・紫音・・・・・・」
不安げな瞳でこちらを見つめる二人を抱きしめてから話し始める。

「別に隠してたわけじゃないんだが、紫姫は本当は嫩の人間じゃないんだ。
 紫姫はもともと八雲って苗字があったんだ。
 まぁ、いろいろってうちに来たんだけどな。」
わざと明るく笑ってみせる。
「でもしづにい、しいにいと僕らの名前ってとてもにてますよ?」
はてなまーくだらけの紫音が俺に聞いた。
「紫姫って名前は俺が付けた。
 で、紫音、お前の名前は紫姫が付けたんだ。」
あぁー・・・っと紫音が納得するのを見てから俺は話を続ける。

「不安になるのはよくわかる。
 だけど、俺は紫音だけが大事だなんて思っちゃいない。
 紫姫だって紫音だって燐だって、俺の大事な大事な家族だ。
 大好きな大好きな家族だ。」
そう言ってふたりの頭を抱きしめる。
「兄貴・・・・・俺、俺・・・・・・」
紫姫の言葉を遮るように俺は言葉を続けた。
「俺たちは血が繋がってるわけじゃないさ。
 だけど、俺たちは血のつながったそこら辺の家族より立派な家族だ。」

*紫姫*

最近・・・といっても花吐き病を発症してからなんだけど、思い通りに体が動かなくなる時がある。
老化とかではないんだけど、ほかの誰かが俺の中に居る気がする。
気のせいなのだろうか。

誰かが俺に語りかけてくる。

「はじめまして、久しぶりだね。
 八雲燐。」



END・・・・?

続くかもしれないけど続かないかもしれない。うん。

じゃあ、ここでこのお話に出てくるキャラの紹介をさせていただきます。

嫩 紫月(ふたば しづき)

23歳
嫩神社12代当主
嫩家の長男。
両親の死後、紫姫と紫音の兄兼親になる。
普段は能天気な自由人。
だが、誰よりも優しく家族思い。

嫩 紫姫(ふたば しき)

16歳
嫩家次男
正確には嫩家の養子。
五歳の頃に唯一の家族であった父親を亡くした。
その後隣町で神社の神主をしていた遠い親戚の嫩家に引き取られる。
「紫姫」という名前はその時に紫月に付けてもらった名前。
本当の苗字は八雲(やぐも)で名前はなかった。
嫩家では家事全般を担当している。

嫩 紫音(ふたば しおん)

12歳
嫩家三男
紫音が生まれた直後に両親が亡くなったため、顔は知らない。
二人の兄と違って礼儀正しくマイペース。
昔の話は聞いたことがなかった。
「紫音」という名前は紫姫が付けた。

棗 琥珀(なつめ こはく)

24歳
嫩家居候
紫姫と一緒でまともな立ち位置。
優しく温かい人物。
紫姫と紫音を幼い頃から知っている。

初期設定レベルです。
時代は明治初期頃を想像してください

#日記広場:自作小説

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2015/01/14 21:04
…え、終わりなん?ww
まじか!w

てか、よく病の名前とか花を吐くとか思いつくよな…
流石すぎる…
何か、綺麗で俺は好きだなぁ、こういうのw



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